第2話 運命の86

次の日、カナタと伊藤がいつもの通学路から反対側へ二人は舵を切って伊藤自動車に向かっていた。今日の天気は晴れ時々曇りだが、後方の山地の方から雲が差し掛かろうとしていた......。




伊藤「お前、あんなに車の事、機能拒絶してたな?どうしてだ?」

カナタ「......伊藤には特別に言うわ。」


伊藤が事情を聞く。それで伊藤がカナタに思いを寄せる。

伊藤「....そんなの早く言えよ!!おれだってママが....去年にいなくなったんだ。」


その時は怖かった。急激な病死だったからな。おれも嘘だと思っていたがきづいたころにはもう、、、。両親が海外で仕事に行ったと思ったらこれだ。




カナタ「、、、そうだったんだ、うちだけじゃなかったんだ。」


伊藤「お前だけじゃないよ。なにかあったら言ェ!うちがすぐに助けに行くからよ!」


そういいながら二人は伊藤のガレージについた。


伊藤「で、86どうするんだ?」


カナタ「もらうよ、おまえの86。でもさ、お前、、、そんなことしたら」

伊藤「お前にやるよ。お前のほうが似合ってる。」



伊藤は少し寂しげに笑いながら、キーを差し出した。そして、カナタはやさしく包むかのようにそのキーを握りしめた。

もう一度、走りたい。あのときのおじさんのように......。


ブロォォォン! ボクサーエンジンの音が鳴り響く。


かなり昔に少しだけハンドルを握ったことのあるカナタ。

その重さは記憶や空気よりも遥かにリアリティのこもったハンドルだった。真ん中に86と書いてある。


伊藤「ATだが、86にはパドルシフトがある?どうだ?走ってみるか?」

そう伊藤が言うと、すこし間を空けてカナタがこの車を受け入れる覚悟を身につけるかのように走り出した。


「行くよ。伊藤」


ーーブオォン...

胸の奥に封じ込めていたものが解き放たれたかのようにカナタの心が弾けだした。

「........もう一度、走りたい」


そして、カナタはその赤い86に火を入れてあげた。ノーマルエンジン、マフラー。ボディもバンパーも中古で傷だらけだ。

だがーーそれは紛れもなく自分の走りを取り戻す相棒で86伝説のはじまりでもあったーー。




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