3人の美少女に狙われてます~俺を取り合うな!いや、もっとやれ!?~

綿貫りりか

美少女3人と密着!波乱の始まり!?

俺の名前は宮野修也みやのしゅうや


特に目立つわけでもなく、地味すぎるわけでもない、どこにでもいる普通の高校1年生だ。

運動はそこそこ、勉強もそこそこ、特技といえば流されることくらい。

そんな俺が迎えた、高校の入学式――


「これから始まる高校生活、きっと平凡で穏やかなものになる……はずだよな?」


なんて、のんきに考えていたんだけど―― まさか初日から人生が大きく狂わされるなんて、この時の俺はまだ知らなかった。




春の爽やかな風が吹く朝。高校の校門前は、新入生でにぎわっていた。

期待と緊張が入り混じる中、俺はのんびりとした足取りで校門へと向かっていた。


「よし、無事に入学できたし、あとは普通に高校生活を送るだけだな」


そんなことを考えていたその時――


ドンッ!


突如、強い衝撃とともに女の子が俺の胸に飛び込んできた。


「うわっ!?」


慌てて支えようとするも、勢いに負けてそのまま――


ドサッ!!!


俺は 彼女の上に倒れ込んでしまった。


「……っ!? え?」


や、柔らかい……!!


ふんわりとした感触が全身に伝わる。修也の手が何かに触れた。そして、お互いの顔が 至近距離 に――!!


「きゃっ!」


目の前には黒髪ロングの美少女。清楚で品のある顔立ち。少し潤んだ瞳が、不安げにこちらを見上げている。


「っ……あの……」


彼女の大きな瞳が揺れ、修也を見上げている。


「え、えっと……」


慌てて手をつくが、また柔らかいものに触れてしまう。


「ひゃっ!」


彼女が小さく声を上げ、修也は慌てて手を引っ込める。


「ご、ごめん!大丈夫!?」


「……っ」


彼女の顔がみるみる赤くなっていく。

修也も、頭がぐるぐるしていた。


(やばい……!朝からこんなシチュエーション、心臓に悪い!)


「す、すみません!!」


慌てて体を起こそうとすると――


「……ちょっと待って」


「え?」


「動かないで。……今、すごく心臓がドキドキしてる」


彼女は俺の胸にそっと手を当て、じっと見つめてくる。ふわりと春の風が吹き、彼女の長い黒髪が俺の頬をかすめた。


(え、ちょ、近い……!!)


「……あなた、すごくあったかい」


その言葉は、不思議ととても優しくて、どこか切なげだった。


「え、ええっ!?」


彼女の大きな瞳が微かに揺れる。そして、一瞬だけ、唇がかすかに震えたように見えた。


(……え? なんでそんな顔するんだ?)


「……もう少し、このままでもいい?」


俺の心臓は爆発寸前だったが、彼女の表情を見ていると、不思議と動けなくなる。俺の胸に触れる彼女の指先が、かすかに震えていた。


だけど次の瞬間――


「ごめんなさい……冗談よ」


彼女はふっと微笑んで、すっと手を引いた。

それはまるで、何かを振り切るような動作だった。


「あなたのこと……忘れないわ」


そう言って、彼女は微笑んだ。その笑顔が、まるで春の日差しみたいに眩しくて、俺はまたドキッとする。


彼女と一緒に起き上がり、優しい微笑みのまま去って行く彼女を見送った。


(……なんか、すごい美少女と出会ってしまったんだけど!?)


俺の鼓動は、しばらく収まりそうになかった。




入学式前、教室へ向かう途中。


(さっきのこと、まだ心臓が落ち着かない……)


ぼんやりしながら歩いていたその時――


「きゃああっ!!」


突然、何かが勢いよく俺に激突した――と思った瞬間、小柄な女の子が俺の胸に飛び込んできた。


「うわっ!?」


そのままバランスを崩し、ズルズルと後ろに倒れ込む。


「……いたたた……」


目の前には、黒髪ツインテールの美少女。くりっとした大きな瞳が、まるで小動物のように俺を見上げている。


(近い、近すぎる! 鼻先が触れそうなほどの距離だ。)


「え、えっと……大丈夫?」


「わぁぁぁ!! ごめんなさいっ!!」


彼女は 慌てて起き上がろうとして、バランスを崩し――


「ひゃあっ!?」


またも、俺の上に覆い被さるように倒れ込む。


(ま、待て……! ふわふわした何かが俺の胸に当たってる!!)


「ひゃあぁぁ!? え、え、えぇぇ!? どどどどどうしようっ!!」


彼女は 耳まで真っ赤になりながら、パニック状態。


俺もそれどころじゃない。


だって、こんな至近距離で可愛い女の子に押し倒されるなんて、予想外すぎる。


「あ、あれ?なんか……」


彼女は俺の顔をまじまじと見つめる。


「ふふっ、すっごくドキドキする~♪ もしかして……これが運命の出会い?」


「い、いや、ただの事故だと思うけど……」


「やだぁ、そんな冷たいこと言わないでよぉ」


彼女は くりくりした瞳で俺を見つめ、ぷくっと頬を膨らませる。


(……可愛すぎる)


「ねぇねぇ、もうちょっとだけ、このままぎゅーってしよ? ふわふわで気持ちいいし~♪」


「よ、よくない!!」


俺の胸にすり寄りながら、彼女は楽しそうにくすくす笑う。


「……ふぅん、君って、いい匂いするんだね♪」


「なっ……!!?」


完全にペースを握られてる……!!


「ふふっ、またねっ♪」


彼女は 名残惜しそうに俺から離れると、くるっと回って手を振って去っていった。


(え、なにこれ!? あんな可愛すぎる子!?)


入学早々、いったい何なんだ?!




気を取り直して、ようやく教室に入ろうとした、その時だった。


「……っ!?」


ちょうど入口から出てこようとした誰かと、俺は思いきり鉢合わせになった。


「きゃっ!」


「うわっ!!」


バランスを崩し、俺はそのまま後ろに倒れ込む――


ドサッ!!


(またかよ!?)


とっさに目を開けると、俺の上に跨るような形で、ふわりとした栗色のセミロングの髪の美少女が座り込んでいた。


(……え、ちょ、待って。体勢やばくね?)


スカートの裾がふわりと広がり、太ももが俺の腰を挟む形になっている。ほんのり甘い匂いが鼻をくすぐり、心臓がバクバクと音を立てる。


「……あれ?」


彼女はぽやっとした表情で俺をじっと見つめた。驚いた様子もなく、なんならちょっと楽しそうに首をかしげている。


「……ねぇ、君、このクラス?」


「そ、そうだけど……」


「ふぅん……そっか」


彼女は のんびりした様子で俺の顔をじっと見つめたまま、ぴくりとも動かない。


「……あの、どいてもらえますか?」


「……どうしよっかな」


「ど、どうしよっかな、じゃないって!!」


「んー……でも、君、あったかいね」


「なっ……!?」


(やばい、ドキドキが止まらない……!!)


彼女は 俺の上に跨がったまま、また首をかしげた。


「……これ、変な体勢?」


「変な体勢だよ!!!」


俺が顔を真っ赤にして叫ぶと、彼女は「ふふっ」と小さく笑った。


「ごめんね、ぶつかっちゃったのは、私がよそ見してたから……」


全然悪びれる様子もなく、のんびりと微笑む。


(やばい、こっちの心臓がもたねぇ……!!)


「でもね……」


「……?」


「なんだか、ドキドキしちゃった」


「えっ……」


彼女の太ももがまだ俺の腰を挟んだまま。至近距離すぎて、視線を逸らすこともできない。


「……ねぇ、君」


「な、なんだよ……」


「私、君のこと、もっと知りたくなっちゃった」


(は、破壊力ヤバすぎる!!)


にっこりと微笑む彼女に、俺の理性が音を立てて崩れそうになる。


「……じゃあ、またね」


彼女はのんびりと俺の上から降りると、スカートの裾を軽く払って立ち上がる。


そして、くるっと踵を返し、去っていった。


(な、なんなんだよあの子……!?)


俺は床に倒れたまま、しばらく動けなかった。




入学初日で3人の美少女に翻弄されてしまった。


しかも、立て続けに体が密着するというラッキー……じゃなくて、ハプニングに見舞われるなんて。こんな偶然、本当にあるのか!?


しかし、俺はまだ知らなかった。

この3人が、とんでもなく俺の高校生活をかき乱す存在になることを――

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