三人だけの同窓会 ―29年目の再会―

たちばな ほのか

第1話 決断の朝-投函-

2024年1月

大阪


いつか。

時間がすべてを静かに、永遠に封じてくれる。

そう思っていた。


けれど。


29年かけて沈めたはずの記憶は、

たった一通の恩師からのメールで、

思いがけないほど、

鮮やかに息を吹き返した。

***


1995年7月12日

旭川


コトン……

郵便受けから響く乾いた小さな音が、

静けさを縫った。


下には夜露に濡れた小さな踏み石。


白んだ空気。

朝モヤにかすむ住宅街の路地。

新聞配達のバイクの音さえ、まだ遠い。


人の気配もない。

夏なのに、どこか凍ったような朝。

吐く息がうっすらと白んだ気がした。

 

――由香。


ありがとう。

君がいてくれたから、

ここまで来れた気がする。


これで、ピリオドだ。


さようなら。


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