第13話「まさかの魔王の使い!? ハルさん、異世界トラブル続出中!」
王子とのおやつパーティーから数日。
村には再び、のんびりとした空気が流れていた。
「今日は干し野菜でも作ろうかな~。この季節は日差しがありがたいわよねぇ」
朝から干し台を並べてると、子どもたちがわいわいと手伝いに来てくれた。
「ハルさん、これ切るの? 斜め? 縦?」
「斜めにスライス、お願いね~」
そんなほのぼの空間に、突然――
「ドドン!」
という、謎の効果音みたいな音とともに、森の奥が一瞬光った。
「……いま、光ったよね?」
「うん。音も、なんか“ドドン”だったよね……?」
子どもたちがざわつき、私も思わず干し野菜を置いて立ち上がる。
「ちょっと、様子見てくるね。みんなは家の中で待ってて!」
もちろん一人で行くわけじゃない。
今回も、村の護衛隊の皆さんと一緒に、慎重に森の中へと足を踏み入れた。
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「ここが、光の出どころっぽいけど……」
森の中の開けた場所に、ぽつんと座っていたのは――
「……うう、頭が痛い。ここは、どこだ……?」
フードを被った、銀髪の青年。
その姿は、なんというか……ちょっと“厨二病”みたいな雰囲気。いや、失礼かしら。
「こんにちは~、大丈夫? ケガとかしてない?」
「……貴様、何者だ」
いきなり指を突きつけられた。
「貴様の背後に流れる力……まさか“聖母の加護”……いや、それ以上……!」
……なんか、すごい言われようしてる。
「えーと、私はハルさん。村の主婦……というか、なんか最近いろいろあって、ちょっとだけ“強い”かもしれない?」
そう答えると、青年はふらりと立ち上がって――
「やはり貴様が……異界の調停者か……!」
「ちょ、ちょっと待って!? なんか中二的な単語がすごいんだけど!」
そのとき、護衛隊の一人が耳打ちしてくる。
「ハルさん、この魔力……どうも普通じゃありません。しかも、服の紋章……魔王軍の直属部隊のものかと」
「魔王軍!? ちょ、なんでそんなのがここに!?」
慌てて周囲を見渡すと、青年が静かに口を開いた。
「私は魔王直属、“十三夜”の使い。……だが、安心しろ。貴様と戦いに来たわけではない」
「えっ、じゃあ……観光?」
「違う!」
ですよねー。
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話を聞くと、彼――名前は「リュカ」といって、魔王の命で「ある人物」を探しに来たらしい。
「だが、転移陣が暴走してこの地へ……。それに、ここは思ったよりも……穏やかだな」
リュカの目が、干し野菜を手伝ってる子どもたちを見て、わずかに和らいだ。
「お前、こういうの初めてでしょ?」
「……ああ。私は戦うためだけに育てられた。人の笑顔など、初めて見た」
「そっかぁ。でもね、笑顔ってね、うつるのよ」
そう言って、私はリュカににっこりしてみせる。
すると彼の顔が、ピクッと引きつった。
「……な、なんという眩しさ……これが“母性のオーラ”というやつか……!」
母性ってオーラだったの? 新発見だわ。
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その後、村長の計らいでリュカは一時的に“客人”として村に滞在することに。
まあ、護衛隊がしっかり見張ってるけどね!
「……おやつとは何だ。食事とは別に存在する“間の魔”か?」
「違うわよ! さ、これが“ホットケーキ”よ!」
私のふわふわパンケーキをひとくち食べたリュカは……
「――なにこれ、甘い。やばい。これ人間の仕業か?」
と、動揺してた。かわいいか。
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しかし、その夜――
リュカが一人で森へ抜け出した、という報告が。
「まずいわね……また転移しようとしてる?」
慌てて探しに出た私が見つけたのは、空を見上げて立ち尽くすリュカの姿だった。
「帰るの?」
「いや……行けない。転移陣が壊れていて……。だが、そもそも私は――」
言葉を止めたリュカの目が、どこか寂しげに揺れる。
「“人の気持ち”を知る必要があると言われたが、どうすればいいのか……わからない」
「それなら――ゆっくり、うちに寄っていかない?」
「……えっ」
「うち、ご飯あるし、お布団あるし。朝になったら一緒に干し野菜でもする?」
ぽかんと口を開けたリュカに、私は優しく手を差し出す。
「焦らなくていいの。まずは“おかわりください”が言えたら合格!」
「……おかわり……?」
その日から、魔王の使いリュカの「人間修行」が始まったのだった――。
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