第4話 本当の笑顔にしたいのに
「本当の笑顔にしたいのに」
「疲れたから帰るね、荷物ありがと」
みんな揃ってるからお茶に行こうって誘ったら、苺姫は荷物を受け取ると小さく笑って帰っていった。
「苺姫ってどこか影があるよね」
うさぎ王子が少し寂しげな眼で言うと吟遊詩人も静かに頷いた。心に大きな闇を抱えてる苺姫を心から笑顔にしたいのに難しいな。
「本当の笑顔がみたいの」
ふわふわで穏やかなのにどこか寂し気で。本人はうまく隠してるつもりなのに隠しきれてない大きな闇。
あたしのわがままにも嫌な顔一つせず、にこにこ付き合ってくれる大好きな苺姫。
「大好き!」
いうたびに少しだけ痛そうで辛そうな顔をする。
本当の笑顔が見たいと願っているけど、彼女の闇は深い。
「苺姫の独白」
楽しければ楽しいほど胸の中に冷たい風が吹き込んでくる。この幸せで楽しい時間もいつか突然に終わってしまう。人間の気持ちなんて秒で変わってしまうから。
この大切で愛しい時間がいつまでも続いてほしいと願う反面、終わってしまうことがとても恐ろしい。
いつまでも過去が追いかけてて来る。
「天使と吟遊詩人の密談」
「苺姫、もっと頼ってくれたらいいのに」
溜息をつきながらお茶を飲む。
「あの人後ろ向きだし、天邪鬼だし、頑固だし?」
大鎌をちらつかせて黙らせる。
「こちらが気を使ったら余計気をつかうでしょ、あの人」
「そうなんだけどぉ」
ケーキにフォークを突き刺す。なんとか元気づけてあげたいのに。
「道連れ」
「天使ちゃん、やほー」
珍しく街を一人でぶらぶらしてる天使ちゃんを見かけて声をかける。
「苺姫!!」
「一人なんて珍しいね。買い物?」
「お散歩」
「じゃあ家でお茶してく?」
「行くっ!!」
あたしの腕を掴むと元気よく駆け出す。
転ぶよって言う前に、あたしを道連れにずっこけた。
「同性でも惚れる可愛さ」
「走ったら転ぶって言う前に走るんだもん」
あたしは立ち上がって服を叩きながら天使ちゃんに言う。
「だって嬉しかったんだもん」
ウルウルした目で見上げてくる、ずるい。怒れないじゃん。
「怪我はない?大丈夫?」
「うん。苺姫ごめんねぇ」
危なっかしくてこんなにかわいい子、惚れてまうやろ。
「吟遊詩人の○○でnight!」
「暑い、とにかく暑い!」
流れ出す詩人の声。
「ちょ、苺姫!ストップ!!」
「ぷぷぷっ」
「詩人、最後まで聞かせろ」
慌てて止めようとする吟遊詩人を天使ちゃんが止めて最後まで再生される。顔を真っ赤にする吟遊詩人を見て笑う。
「苺姫、覚えてろ!」
「ん?忘れた」
そう言ってニヤリと笑う。
「天使ちゃんは聞き逃さない」
「ところで吟遊詩人、苺姫の悪口言ってたよね?」
どこからともなく大鎌を出してちらつかせる。一体こんなでっかいものどこに隠してるの?
「言ってたっけかなぁ」
冷や汗をかきながらしらばっくれてみるものの、天使ちゃんに詰め寄られてるのが面白いのでお茶を啜りながら高みの見物を決め込む。
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