苺姫と呼ばれる魔女の日常
桜井真彩
第1話 不憫なうさぎ王子
「不憫な王子様」
「苺姫!!」
ぶんぶんと手を振りながら駆け寄って来る天使ちゃん。黙っていればかわいいのに色々残念である。
「天使ちゃん、待ってぇな」
情けない声で後を追いかけて来るのは吟遊詩人。色々、かわいそうで残念な人。
あれ…一人足りない。
「うさぎ王子は?」
「あっ…」
相変わらず不憫すぎる。
「天使の暴走」
詩人が王子を迎えに行って、先にあたしたちはお店に。
「どれもおいしそう」
ショーケースを見つめてよだれを垂らしている。
「天使ちゃん、よだれ」
「全部お願いします!!」
止める間もなく元気よく店員に注文をする。
「食べきれないから!」
「詩人たちいるから大丈夫」
違う、そうじゃない。
「通常運転」
「ぼく、今なんか悪寒が走ったんだけど」
ボソッとうさぎ王子が呟く。
「奇遇ですな、私もですわ」
「きっと苺姫がなんとかしてくれるよね?」
「王子、それができると思います?」
「…天使ちゃんだしね」
誰も天使の暴走は止められない。
「苺姫が薬持ってないかな」
うさぎ王子は遠い目をして呟く。
「三者三様のお茶会風景」
「あーん♪」
フォークに刺したケーキを吟遊詩人に差し出す天使ちゃん。
「勘弁して」
「あたしのケーキが食べれないの?」
キッと詩人を睨みつける。
「ううう…食べますよ、食べればいいんでしょ」
やれやれといった顔で二人を見るうさぎ王子とそんな様子を見つつ鞄から消化薬を取り出すあたし。
「底なしの胃袋」
いちゃつく天使と詩人を横目で見つつ、うさぎ王子とあたしはこっそりと消化薬を飲む。
「苺姫の作る薬はよく効くね」
うさぎ王子が関心している。
それにしても、天使ちゃんの底なしの胃袋とどれだけ食べても太らない体質は本当に羨ましい。
あの細い体のどこにあれだけのケーキが入るのか謎である。
「告白」
「ねぇ、いい加減覚悟決めて告白しないの?」
からかいがてら吟遊詩人にけしかける。
「できたら苦労してないですわ!鈍感で頑固で天邪鬼な苺姫に言われたくないですわ」
「んじゃ、天使ちゃんはあたしの嫁ね」
「天使ちゃんは俺の嫁だ!!」
「じゃあさっさと告白したら?」
不敵な笑みを浮かべた。
「限界しらずと限界寸前」
満足げな顔でうきうきとお店を後にする天使ちゃんに続いて消化薬で楽になったうさぎ王子と苺姫、そして青ざめた吟遊詩人が後に続く。
「また来ようね」
ご機嫌の天使ちゃんに何も言えずに曖昧に笑う三人。
「さ、次は買い物に行くぜよ」
そう言って顔色の悪い吟遊詩人の腕を掴んで歩きだす。
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