-平穏を求めて- backstory 福編

カンタ

第1話 何故、力を求めるのか…

福は幼少の頃…いや、まともに歩くことが出来ない程の時期から祖父母や両親から復讐を果たす様に言われて育てられた。


「福…貴方は復讐を果たすのよ……曽祖父ひいおじいちゃんの敵を討つのよ…」


「あい!」


・・・


そして時は流れ4歳になると本格的に復讐を果たす為の修行が始まった。


「早く走れ!全力でな!」


父親の修行はとてもキツかった…というか拷問に近いものだった。


それも昭和の部活の方がまだマシなのでは…と思うほどのものだった…。


「ハァッ…ハァッ……」


福は息をきらしながら家の近くの道を全力で走り続け、意識を失うとやっと走る修行は終わった。


そして意識を取り戻すと今度は筋トレをさせられたこれもさっきと同様に意識を失うまでずっと…それを毎日4セット、それを5年間ほぼ毎日行った。


身体が動かない時はずっとイメージトレーニングをさせられた。

 

これも5年間、同様にずっと…。



9歳になると父が亡くなった。


普通の子供であれば泣きじゃくるところだろうが福は涙一粒どころか1ミリも悲しいとは思わなかった。


寧ろ地獄の様な修行から解放されて嬉しいと思った。


だが…父の修行はまだ甘い方だったことに後で気づく。


父が亡くなってから3週間が経過した頃、母から呼び出された。


「母さん、何?」

「福、あんたに見せたい物があるんだよ…」

「見せたい物…?」


福の母親はバッグの中からタブレットを取り出すとある人物を映し出した。


タブレットの画面に映し出されていたのは少し幼い空気感を感じさせる14~15歳くらいに見える少年だった。


「母さん、こいつは…?」

「この少年はわたしの義理の祖父。つまり、あんたの曽祖父ひいおじいちゃんを殺したヤツの孫よ」

「私やあんたのお父さん、そしてお爺ちゃんお婆ちゃんはコイツとその親族を潰してやっと復讐を果たせる…そう思っているし、悲願なの」

「じゃあ…、父さんが僕を鍛えていたのは…」

「勿論、復讐の為よ」

「復讐?」

「そう。」

「…じゃあ、僕は父さんと母さんの道具ってこと?」

「それは違うわ。私の使命であり、貴方の使命でもある。だから、それを果たすまで私達は自分の人生は歩めないの。」

「…嫌だ!そんなの!」


福は拒否した、その使命というのは両親・祖父母から押し付けられたもので福にとっては嫌なことでしかなかったからだ。


「文句言ってんじゃないわよ!」


バチィッ…


力強く右頬をビンタされた。


そしてその後、痣だらけに成程、顔面の形か変わる程に暴行を受けた。


そして福は決めた。


「(…僕はいつかこの糞女くそアマを完膚なきまでにボコボコにして尊厳を破壊した上で殺す…!!)」


と。


福はその覚悟よりも強い思いを隠しながら母からの訓練に身を投じていく…。


そしてそれは本編の主人公・火野ひのしょうに出会うより前に別のことでさらに重い強烈なものに変化する。


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