第二十五話「影はもう隣まで来ている」
夜のスーパー三和。
仕事帰りの俺は、植村さんと一緒に買い物をしていた。
献立を考える彼女の横顔は、落ち着いていて、それでいてどこか幸せそうで。
(……ずっと、こうして隣を歩けたら……)
そんなことを思った矢先。
ふと背筋が冷たくなる。
精肉コーナーの鏡越しに——視線。
人混みの向こう、スーツ姿の男がこちらを見ていた。
煙草を持つ指。笑っていない目。
元旦那。
「……っ!」
一瞬で血の気が引いた。
だが、気づいたときにはもういなかった。
「北山さん? 大丈夫ですか?」
「……あ、いえ。なんでも」
ごまかしながら笑う俺。
けれど心臓はずっと早鐘を打っていた。
*
その夜。
アパートの廊下で、猫丸が缶ビール片手に待っていた。
「兄ちゃん、もう影はドアの前まで来てるぞ」
「……わかってます」
「じゃあ、逃げるか? それとも立つか?」
べすが低く唸る。
俺は答えなかった。
でも、心の奥ではもう決まっていた。
——次、来たら俺は逃げない。
*
その頃、アパートの外れの街灯の下で。
元旦那が煙草を踏み消し、低く呟いた。
「……やっぱり隣に入り込んでやがるな。潰すしかねぇか」
闇が濃くなっていく。
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