第十六話「迷いの年の差、でも——」

 ——あの子、どうしてこんなに気になるんだろう。


 北山さん。

 隣に越してきてから、毎日のように顔を合わせる。

 22歳。私より一回り以上年下。

 普段は「女子高生が一番!」なんて口にする、呆れるくらいの子。

 ……なのに。


 仕事帰りに廊下で会うと、必ず「お疲れさまです」って笑ってくれる。

 買い物袋を持っていると、自然に「持ちますよ」って手を伸ばしてくれる。

 元夫と鉢合わせてしまった夜も、真っ先に庇ってくれた。


 ——不思議。

 彼に優しくされるたび、心が少しずつ揺れる。


 でも、考えてしまう。

 私は38歳、バツイチ。

 彼から見たら、ただのおばさんだろうって。

 年齢も、過去も、すべてが足かせに思えて。



 そんな夜。

 玄関先で鍵を落としたとき、彼が拾って差し出してくれた。

「大丈夫ですか?」

「ええ……ありがとう」


 ただそれだけのことなのに、胸が熱くなる。

 優しい。

 きっと彼は、誰にでもそうなんだろう。

 でも、私には——特別に感じてしまう。


(……ダメね。こんなの、勘違いよ)


 そう自分に言い聞かせながらも。

 視線の先の彼が笑うと、どうしても心臓が早鐘を打つ。



 その夜、布団に横になって思った。

 ——もしも、この迷いを越えられたら。

 隣にいる彼は、私にとってどんな存在になるんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る