第十二話「アパート全員集合!? マヨと芋と女神様」
夕方。
「北山さん、よかったら一緒に帰りましょうか」
植村さんと並んで、アパートの廊下を歩いていた。
ほんの少し照れくさい。
だが、次の瞬間——。
「我が勇気はこの町田にあり!」
「フッ……異世界の影はまだ消えぬぞ!」
廊下の向こうから、勇者まさととレオニスが颯爽と登場。
剣とローブで完全に異世界仕様。ここアパートだぞ!?
(……いや、何でだよ!?)
驚いていると、横の非常口からひょこっと顔を出す人物が。
日向めぐるだった。
「わ、やっぱり同じアパートだったんですね〜。なんか不思議な縁ですね♪」
(……まさかの、全員ここ住んでんのかよ!?)
*
気まずい空気の中、植村さんが笑顔で口を開く。
「そうだ、さっきお芋をたくさんいただいたんです。よかったら、召し上がりますか?」
その言葉に勇者とレオニスが同時に反応。
「芋……だと?」
「我らの世界では貴重なる糧……しかし調理法が……」
植村さん、にこやかに。
「簡単ですよ? レンジで温めて、マヨネーズをかけると美味しいんです」
その瞬間。
「な、なんだとおおおおお!!」
「レンチン……マヨ……それが“真の調理法”……!」
勇者とレオニス、膝をつき合掌。
「女神様……!」
「この現世に舞い降りた慈愛の女神よ……!」
さらにめぐるが両手を合わせて。
「分かります! わたしもそうやって食べてます! 本当に美味しいんですよね〜!」
三人がそろって植村さんを崇め奉る。
*
俺?
……ただの背景。
さっきまで「一緒に帰ろう」なんて甘い雰囲気だったはずなのに。
気づけば廊下の真ん中で、推しメンバー全員が植村さんを“女神”扱いして土下座している光景。
「……いや、何やってんのアンタらぁぁぁぁっ!!!」
俺は全力でツッコんだ。
でも、その横で笑う植村さんが、やけに眩しかった。
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