第十二話「アパート全員集合!? マヨと芋と女神様」

 夕方。

「北山さん、よかったら一緒に帰りましょうか」

 植村さんと並んで、アパートの廊下を歩いていた。

 ほんの少し照れくさい。

 だが、次の瞬間——。


「我が勇気はこの町田にあり!」

「フッ……異世界の影はまだ消えぬぞ!」


 廊下の向こうから、勇者まさととレオニスが颯爽と登場。

 剣とローブで完全に異世界仕様。ここアパートだぞ!?


(……いや、何でだよ!?)


 驚いていると、横の非常口からひょこっと顔を出す人物が。

 日向めぐるだった。

「わ、やっぱり同じアパートだったんですね〜。なんか不思議な縁ですね♪」


(……まさかの、全員ここ住んでんのかよ!?)



 気まずい空気の中、植村さんが笑顔で口を開く。

「そうだ、さっきお芋をたくさんいただいたんです。よかったら、召し上がりますか?」


 その言葉に勇者とレオニスが同時に反応。

「芋……だと?」

「我らの世界では貴重なる糧……しかし調理法が……」


 植村さん、にこやかに。

「簡単ですよ? レンジで温めて、マヨネーズをかけると美味しいんです」


 その瞬間。

「な、なんだとおおおおお!!」

「レンチン……マヨ……それが“真の調理法”……!」


 勇者とレオニス、膝をつき合掌。

「女神様……!」

「この現世に舞い降りた慈愛の女神よ……!」


 さらにめぐるが両手を合わせて。

「分かります! わたしもそうやって食べてます! 本当に美味しいんですよね〜!」


 三人がそろって植村さんを崇め奉る。



 俺?

 ……ただの背景。

 さっきまで「一緒に帰ろう」なんて甘い雰囲気だったはずなのに。

 気づけば廊下の真ん中で、推しメンバー全員が植村さんを“女神”扱いして土下座している光景。


「……いや、何やってんのアンタらぁぁぁぁっ!!!」

 俺は全力でツッコんだ。


 でも、その横で笑う植村さんが、やけに眩しかった。

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