5話 『貴方の旅路に幸あらんことを。』
※今回も、陽斗目線です。 最後は、創造神目線です。
俺が、泣き止み落ち着くと、とうが今の状況を話してくれた。
俺が、泣いている間に先生や俺たちの両親にとうが話しておいてくれていたらしく、大人たちも今動き出しているとのこと。
学校では、全クラス自習になったんだとか。
それはさておき、ふうかがこの世界に居なくなってしまった今、どうするべきなのか。
ふうかは、長生きを希望しているみたいだったけれど…
「これから、どうする?」
「……自殺をしよう」
「は?」
突然、何を言い出すんだ。
とうって、物事を冷静に考えるタイプの人間だったと思うんだけど。
こんな突拍子もないこと言う人だったっけ?
「理由を聞いても良いか? ……まさか、ふうかが死んだから、この世界にいても意味がない! とか言うふざけた理由じゃないよな?」
「その気持ちがないわけではないが」
「マジかよ」
いや、ほんとどうしたんだ此奴。
頭でも打ったのか。
そういうことにしないと、いつもの『とう』って感じがしない。
そもそも、人が――それも幼馴染みが、高校生という若さで死んだというなら平常心でいることの方が難しいのか。
「陽は、俺がそれだけしか考えないで、変なことを言っているとでも思ってるのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
「確かにさっき言われたことを思ったわけでもないが、理由は他にある」
とうが、言った言葉に心の片隅で少し安堵した自分がいた。
良かった。
なにも、考え無しってわけではないみたいで。
「理由は、風花の両親の事故と酷似している、という点だ」
「ふうかの両親。そういえば、俺その事故の内容知らないな」
「だと思ったよ」
とうは、丁寧にふうかの両親について話してくれた。
話を要約すると、ふうかの両親が横断歩道を渡ろうとしたところ、幼児がボールを拾いに行ったところトラックが来ており、そこをふうかのお母さんが飛び出して助けたとのこと。
そして、そのままふうかのお母さんは、トラックに轢かれ死亡、だったらしい。
その後、轢いたトラックはすぐに止まり、ふうかのお父さんは、消息を絶った。
ふうかのお父さんの死因は、自殺なのか他殺なのか、はたまた霊的なものにやられたのかは分からないらしい。
ただ一つだけ分かることは、外傷が一つも無かったということだけらしい。
「そうか。でも、なんでそんなこと知ってるんだよ」
「俺の父さんが、警察に聞いたらしい。で、父さんと母さんがその話をしているときに、聞いてしまって……それで知ってる。この話を俺が知っていることは、父さんたちは、多分、知らないだろうけど」
「……。てい言うか、それと俺たちが自殺するっていう事に話の繋がりが見えないんだけど」
「それも、そうだな」
少し、間を開けるようにして話すとう。
きっと、俺でも分かるように噛み砕いて話そうとしているのだろう。
「俺が思うに、これは誰かの意志で起こされているのだと思ってる」
「誰かの意志って、そんなことが本当にできるのか?」
「これは憶測でしかないから分からないがな。その何者かは、人かもしれないし、存在するか怪しい者――神とか、その辺りかもしれない」
憶測で話すって、いつものとうらしくないな。
それに、神って俺たち三人の中で一番信じてなさそうなのに、そのとうから『神』の存在がいるかもしれないと言っているのと同じような事を聞くとは、人生、何が起こるか分からないんだな。
とうが、いつもと違い、根拠のないことを言い出しているため、かえって俺は冷静になれた。
「とうって意外とふうかに影響されてるよな」
「まぁな」
少し、声が嬉しそうだった。
「褒めてないからな!」
俺がすかさずツッコむと咳ばらいをされて誤魔化された。
「まぁ、取り敢えず今日は普通に過ごそう。学校で死ぬのは流石に、学校の名誉にかかわるから駄目だとして……どこが良いかな」
悩むとうの声を聴きながら、俺もどこかいい場所がないか思い出す。
そういえば、昨日たまたま見たドラマの内容で、山で遺体が見つかって、そこから探偵と警察が推理するような物語だったっけ。
「なぁ、とうの家から徒歩で三十分ぐらいのところに森ってなかったか?」
「あ〜、あるな。確かにそこだったらいい場所かもしれないな。じゃあ、今日の夜決行ってことで」
「おう」
話がまとまると、俺は電話を切り、学校へと向かった。
学校に向かって早々、先生に捕まり、警察の人にその時の状況を話すことになった。
学校はというと、休校になり、とうは先に家へと帰っていた。
俺も、事情聴取が終わると家へと帰った。
九時辺りから事情聴取が始まったというのに、終わったのは夕方の六時辺りだった。
だから、家へと帰ってからというと、とうとナイフを二本持っていき例の森へと向かった。
その後のことはご想像の通り、その森の中深い場所で二人で永遠の眠りについた。
◆ ◆ ◆
目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。
辺りを見渡しても、一面真っ白で隣にとうが横たわっていた。
俺たちは、ナイフで刺しあったはずなのに傷の一つすらついていなかった。
何がどうなってるんだ?
「とう、とうってば起きろ」
俺は、横たわっているとうの体を揺さぶって起こす。
すると、とうは起き上がり目をこする。
「あれ、陽、何で生きてるんだ? というか、ここは何処だ」
「俺も分からない。今起きたばっかりだからな……。普通に考えるなら、死後の世界とかその辺りだと思うけど」
「ある意味それは正解ですね。」
突然、知らない人の声が聞こえた。
忠誠的なその声のする方を向くと、そこには金髪青目の知らない人が立っていた。
容姿は、美少年とも美少女とも見て取れる。
「え、えっと、あなたはどなたですか? それと、ここはどこなんですか?」
「人々からは神と称されています。とはいえ、私たちの正式名称はないんですがね。そういえば、風花さんには私が創造神ということを伝えていましたね。それとこの場所は――」
「ふうかのことを知っているのか!?」
「陽! 失礼だぞ!」
「大丈夫ですよ。それに、ため口でも全然良いですから。」
俺が、神様の話を遮ってしかもため口で話したため、とうが俺のことを制した。
でも、風花のことを知っているってことは、きっと今の風花の状況も知っているはずだし。
「もちろん、知っていますよ。陽斗さん」
「!? なんで、俺の名前を知っているんだ?」
「それは、神ですから。」
ふふふ〜、と神様に答えにならない答えを出され、笑ってごまかされたため、二人して少し引いてしまった。
「それでですね、風花さんは、自分の命も顧みずに行動したので、転生をされました。」
「だとしたら、どうして、俺たちはここに来れたんですか?」
「確かに、それもそうだな」
とうが言葉の意味を理解し瞬時に質問をする。
さすが、テスト一位なだけあるな。
「それはですね――
私(わたくし)が転生の準備をしていた時のことですね。
突然、風花さんが声を掛けられまして、
『あ、あともう一つお願いがあって……』
『? それはどういったものですか?』
『えっと、ですね、お願いというのは……、私の幼馴染の『帯刀 陽斗』と『伏見 藤間』の二人がもし自殺とか、何でもいいんですが死んでしまったら、この場に呼んで欲しいのと、私と同じように選択肢をあげて欲しいんです』
『なるほど。ですがそれだと、1つ目の選択や2つ目の選択を選ばれる可能性もあると思うんですが』
『それは、個人の意見を聞かないといけないと思いますし、それに私が縛っていい話ではないと思うんですよね』
『……分かりました。その時が来たらそう致しますね。』
といったような経緯でこのような状況になっておりますね。」
「風花がそんなことを……。それで、その選択肢というのは?」
「『1つ目が記憶を消して地球で生まれ変わること。』、『2つ目が天国へと行き、そこで暮らすこと』『3つ目が記憶を持って異世界に転生すること』というものです。風花さんは、3つ目を選びましたが、お二人は他のものを選んでもらっても構いません。あれでしたら、お二人で相談して決めてもらっても良いですよ。時間はたくさんありますから。」
「分かりました。どうする? 陽。俺は、もう決めたけど」
「そうだなぁ~」
急に決めろ、と言われても、全然分からない。
まず1つ目はないとして、2つ目も天国へ行ったところで何にもならないからないな。
そうなると、やっぱり3つ目か。
ただ、ラノベとかアニメみたいに、そう上手く話が進むとも思えないし。
でも、風花がいるんだったら3つ目が一番いい気がする。
「俺も決まった。なんとなくだけど、とうと一緒な気がする」
「分かった」
「どうやら決まったようですね、ではあなた方の答えを教えてください」
「「俺は、異世界へ行きたいです!!」」
「分かりました。では――
『貴方の旅路に幸あらんことを。』」
その後は、神様の言葉に反応したかのように、俺達の足元に魔法陣が顕現して、俺たちの体が、徐々に光り出し少しずつ、体が薄くなっていった。
意識が遠のいていくのを感じながら、俺は風花が生きているということの嬉しさと、早く会いたいという高揚感で、胸がいっぱいになっていた。
◇ ◇ ◇
「本当に、風花さんの言う通りになりましたね」
私は、風花さんが転生する直前の話を思い出していた。
実はあれには、陽斗さんと藤間さんに伝えていない部分がある。
『それは、個人の意見を聞かないといけないと思いますし、それに私が縛っていい話ではないと思うんですよね。……それに、彼らのことなので、きっと私を追って、異世界――ルーティニアに来ると思うんですよね。なんせ、二人とも心配性ですし、私のこととなると冷静さに欠けるところがありますしね。
っあ! もし、状況の理由を説明することがあったら今のところは言わないで置いてください! さすがに、恥ずかしいので……』
『! ふふっ、そういうことにしておきますね。』
『今、心の中読みましたか?』
『どうでしょうね〜 。まぁ、とりあえずは、分かりました。その時が来たらそう致しますね。』
これも風花さんの意向ではあったけれど、もう少しで、口が滑りそうだったから少し危なかったですね。
もし言ってしまっていたら、きっと怒られるでしょうね。
風花さん、安心してください。
あなたの望み通りあなたと幼馴染になれるよう、手配しておきましたので。
魔法も剣も私に叶う者など無し!! 〜無能な私のオタクな日常〜 那雲 零 @39082natir
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