第47話─祝勝


『ビーーーーーーーッッ』



「ハァ……ハァ……。」



「勝った……のか……?」



「もう……限…界……。」



ブザーの音が試合の終了を告げ、疲弊しきっていた僕達『黄陣営』の大半はその場に倒れ込む。



僕と狐塚さんが敵のエースである京極ナツメに見つかり、追いかけ回されるというハプニングはあったけども、狐塚さんが機転を利かせて上手く切り抜けるどころか京極ナツメを撃破することができた。



敵のリーダーを倒して優位に立てた僕達だけど、そこからの『赤陣営』の抵抗は激しかった。



夏海メグを筆頭とした学園のエリート達が次第に土煙に順応し始め、その上終盤にはこちらの土魔法使いの魔力が切れてしまったことで泥沼の戦いと化した。



それまでに大分僕が敵を間引いたから戦力差はあったとはいえ、僕達のチームは戦闘が得意なメンバーが少ない構成になっていたから後半に追いつかれ始めてしまった。



こちらも必死の反撃を加えたりしたが、果たして結果は……





『───タイムアップ。『赤陣営』15点…『黄陣営』18点…という結果になりました。よって『バウンディ』第二回戦の勝者は『黄陣営』となります。』



あっ危な………!



僕は持ち点が3点以上あったから僕がやられていたら逆転だったのか……!



だが…紙一重の勝利とは言っても、勝ちは勝ち。



僕達は『赤陣営』にギリギリ勝つことができたのだ。



そして……僕達がこの試合で勝利したということは……!



「シドさん!」



狐塚さんが息を切らしながらこちらに走ってくる。



彼女は途中で脱落してしまったけど、咄嗟の判断によって京極ナツメを撃破したり僕のアシストをしてくれたりと、この試合への貢献度は非常に大きい。



そんな彼女が呼吸を整えながら僕に話しかけてきた。



「私達……勝ったんですよね……!」



「うん。間違いなく勝ったよ。」



僕はすぐさま狐塚さんの言ったことを肯定する。



「じゃあ…じゃあ………!私達……!」



「うん──」



興奮を隠しきれない様子の狐塚さん。気分が高まっているのが耳や尻尾の様子から簡単に見て取れる。



フリフリ……ピコピコピコ……



無意識にそれを目で追ってしまう。



はっ…いけない……!話を戻さなくては……。



狐塚さんがとても喜んでいるようだが、何故狐塚さんがそうなっているのか僕には痛いほどその気持ちが分かる。



「──僕達『黄陣営』の優勝だ。」



そう…僕達は優勝した。



本日『陰陽大祭』の四日目に僕達『黄陣営』が勝ち点2点を得たことによって、現在のポイント状況はこのようになっている。



『赤陣営』──3点


『青陣営』──2点


『黄陣営』──6点



そして残された競技は『ゾーン・コントロル』ただ一つであり、得られるポイントは最大でも2点。



つまり……最終日である明日の競技結果を待たずして僕達『黄陣営』の優勝が確定したのだ。



「ねぇシドさん……これ夢じゃないですよね?」



涙を目の端に浮かべそう尋ねてくる狐塚さん。



「夢じゃないよ。紛れもなく僕達の力で勝ち取った優勝だ。」



僕はその涙を優しく指で拭い狐塚さんにそう答える。



後で振り返ればカッコつけたことしちゃったなと思うけれど、その時は何故かこうしなければいけないとそう思った。



「ありがとうございます…。」



「いいよ…仲間だろ。」



少し照れくさいけれど狐塚さんが大切な仲間なのは間違いがない。



「さぁいこう……皆が待ってる。」



僕は無性に皆と早く会いたいと思った。





────────

───


ガーーーッ



ゲートが開き僕達は建物から外に出る。



するとそこには『黄陣営』の皆が僕達を待ち構えていた。



僕は突然のサプライズのような歓迎にびっくりして固まっていると、『黄陣営』の集団の中から北条くんが前に出てきた。



「せーーのっ」




「「「優勝おめでとーー!」」」



タイミングを合わせて僕達の勝利と『黄陣営』の優勝を祝ってくれた。



これには僕もグッときて思わず涙が溢れ出してしまう。



「ありがとう…!それに皆も優勝おめでとう!」




僕はそう返し、皆のもとへ合流した。



「ナイスゲーム!」



「大活躍だったな!シド!」



「先輩のおかげです!」



口々に僕を褒めてくれる皆。



皆が僕を見て僕を称えてくれる。



今まで生きてきてこんな経験したことがなかった僕はこんなに幸せでいいんだろうかと少し不安に思ってしまう。



すると一人の女子生徒─蜘蛛宮チエ─が僕に近づいてきた。



「ナイス法霊崎くん。カッコよかった。」



「そっちこそ……大活躍だったじゃないか。」



蜘蛛宮が僕のことを褒めるが蜘蛛宮も今年の『陰陽大祭』で活躍していた。



オカルト研究部なんて寂れた部活動に所属して幽霊部員をしていた少し前までは考えられないことだ。



「私達がこうなるなんて……予想できた?」



「無理だよ。一月前の僕に言ったら嘘だと言われるに決まってる」



そして……これは小耳に挟んだことだが、蜘蛛宮も僕もいろいろな所からお声がかかっているらしい。



これで卒業した後の進路についても悩まなくて良くなった。



それもこれも全部アラタ先生のおかげだ。



アラタ先生がオカルト研究部の顧問になってから全てが動き始めた。



北条くんや金剛さん…それに西園寺さんのような優秀な生徒が入部してきて部室が賑やかになって……



メキメキ力をつけていく皆にすごいなーと思っていたら今度は僕達が『陰陽大祭』の主役になっていた。



そして気づけば……優勝。



今考えてもトントン拍子でことが上手く進みすぎて信じられない。



「学園…辞めなくてよかったね。」



「うん……。」



「皆を……アラタ先生を信じてよかったね。」



「うん……!」



落ちこぼれた学園の生徒の末路は悲惨だ。



そりゃあ他の学校に比べたら進学や就職で有利にはなるだろうけど、事実とした僕と蜘蛛宮にはどこからも声がかかってなかった。



優秀な周りの生徒と自分を比べて落ち込み、皆が当たり前のようにできることをできなくて悔しくなる。



何度も学園を辞めようと思った。



でも…それでも……最後まで諦めなくて良かった。



この思い出は僕の原点となり、これから生きていく上での活力となるだろう。



「法霊崎先輩ーー!アラタ先生を胴上げしましょーー!」



遠くの方からそんな北条くんの声が聞こえる。



そちらに顔を向けると皆に囲まれてうろたえているアラタ先生がいた。



どうやらアラタ先生は胴上げが恥ずかしくて嫌みたいだが、僕達はアラタ先生に感謝の気持ちを伝えたくて仕方がない。



「胴上げか……いいね。」



「うん。是非ともしたい。」



そういって皆のもとへ歩き出す僕と蜘蛛宮。



いこう……皆のもとへ



誰かが欠けてても意味がない。



僕達は全員が集まって始めて『黄陣営』なのだから。



天気は快晴。気分も晴れやか。今日は人生最高の一日になりそうだ。





明日は虹がかかるらしい。






──────────────────────


なんかリア充の匂いがするなぁ…?


時間がなくて今回は短めです。


ポイントの調整をミスってぬるっと優勝しちゃいました。


最終競技は百万点!みたいな展開も考えましたがこれが一番自然かなぁと。



★と♡とフォローたくさん欲しいです。


ps.先日隣人が突撃してきまして小一時間ほど怒鳴られてきました。私が全面的に悪いので申し訳ないとは思うのですが、この年になってこんなに怒鳴り散らかされるとは思ってなかったので結構メンタルにきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る