第14話─勝ったなガハハ
ワイワイ…ガヤガヤ…
「全員揃ったかー?なら出発するぞー。」
ブロロㇿ……
生徒と教員を乗せたバスが国総から出発した。
本日から始まる日本国立総合学園、林間学校は国総の第1学年次に毎年行われる恒例行事だ。
慣れ親しんだ学び舎を離れ、山間部に移り普段とは異なるスケジュールで教育が行われる。
普段が座学や魔法式の構築をメインとする授業ならば、林間学校では登山やフィールドワークなど身体能力を高める授業がメインとなる。
どっちかというと魔法師はその性質上、学者気質というかインドア派が多いので、国総の林間学校では魔法師候補生が陰となり武士候補生が陽の目を浴びるイベントとなる。
そして林間学校では通常のクラスの枠組みに囚われずグループが組まれるので武士系のヒロインと主人公が出会う重要なイベントでもあったりする。
まぁ…その分少し気の悪くなるイベントも用意されているが…
そんな希望と不安に満ちた林間学校に向かうバスの中で俺こと弥勒院アラタは、はしゃぐ生徒達とは対照に…
とても憂鬱な気分になっていた!!
はぁ…ついに始まっちまったよ林間学校…。このイベント…ちょっと重いんだよなぁ〜。これから先の展開を思うとどうも気分が弾まない。
まぁできるだけの対策はしてきたし、パーフェクトにイベントを終える自信もあるが、それでも失敗したらちと笑えないディスアドバンテージとなる。
はぁ~…ゲームみたいに時間スキップできねぇかな〜。できねぇよな〜。クソッタレ。
そんな風に現実逃避するアラタをお構い無しにバスは目的地に向けて走行していく。
刻一刻と原作イベント開始の時が迫っていたのであった。
──────────────────────
──────
プシュー。
ゾロゾロ…
「お前ら並べー。点呼とるぞー。確認が取れたらその後は各自の部屋に荷物を置いて合宿所の前に再集合。はい、行動開始ー。」
俺達を乗せたバスが林間学校の開催地である合宿所に到着した。俺はマニュアル通りに指示を出し、教員として最低限の働きをする。
さて…もう後戻りはできない。そろぼち行動を開始するか…。
─ここで、今回の林間学校について解説する。
この林間学校は2泊3日の日程からなるよくある行事の一つだ。1日目についてはヒロインとの出会いや、普段の授業とは違う環境に慣れない苦労などちょっとしたイベントもあるが、それに関しては主人公がどう行動するかは未知だしこっちは受け身で行動するしかない。
なのだから臨機応変に対応するとして…問題は二日目の夜に起こる襲撃イベントである。
そう、この合宿所は襲撃を受けるのである。
そもそもこの『マジキン』というゲームは戦闘ムービーやシステムにも力を入れたゲームタイトルであって、前半のよくある学園ものノベルゲームの雰囲気から一変して後半はゴリゴリの戦闘系RPGへと変貌する。
そのキッカケというか契機となり、主人公と本ゲームの敵である『退魔共闘戦線』との邂逅となるのがこの林間学校イベントなのである。
当然、国総の教員は魔法師や武士の資格を取得しているプロなのだが、そもそも襲撃を想定していないし警戒していない状態で襲撃を受ければ学生・教員共にガタガタとなる。
その結果多数の死傷者が出て、その中には主人公の知り合いや友達などがいて…というのが主人公が力を付け努力するための大まかなストーリーラインとなる。
俺はこの襲撃を無事に乗り切って死者が出ることを防ごうとしているわけだが…
当然、主人公が努力するための動機を奪ってもいいのかという疑問が生じる。
しかしなぁ…。前世・今世両方で教員をしていた俺からするとどうにも子供が、自分の監督する範囲内で死ぬというのはどうにも受け入れられない。
それに、主人公と短い期間ながらも触れ合ってみて、あいつはゲームのような強い動機がなくとも誰かのために努力できる強いやつだと信じている。だから原作通りのチャートは無しだ。
そのために色々と事前に対策したわけだが…
「アラター?点呼終わったか?ならば例の件で少し話があるから部屋に来い。」
「キョウカさん…。わかりました。終わり次第すぐに行きます。」
それがこの人、日本最強の魔法師鳳凰院キョウカさんを召喚するということである。
勝ったなガハハ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます