だから空を見あげる

東山未怜

第0話 序曲

 スコールのような拍手に包まれて、白と黒の鍵盤の前にすわった。

 指揮者とアイコンタクトを取り、私はピアノと対峙する。


 少しだけ震える手で、制服の下のペンダントに触れたあと。

 前奏を弾きはじめれば、会場に広がっていく、やわらかな音符たち。


 そして口ずさまれる歌声が、うす暗い空間を満たしていく。


 緊張とハイな気分でいっぱいの、このひとときが、私は好き。


 そう思うようになれたのは、あの人のおかげ。

 そんな彼を思って、私は今日もピアノを奏でる。


 あれは今から三年前、私が中学一年生のころのこと――。

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