あの日。 1

スマホが鳴る。


「緊急要請か、場所は…‥‥スクランブル交差点………。近いな、行くか」


一人の少年が走り出す。

5分も走れば、平和だった景色がスクランブル交差点側方面から走ってくるパニック状態の人間ばかりになる。

突発型ダンジョン。

突然発生し、1回の攻略で消滅する特殊なダンジョン。


基本的には1週間も放置すれば、ダンジョンからモンスターが溢れる"ダンジョンブレイク"が起きる。

だが、今回は違った。

発生と同時のブレイク。

1回の青信号で1000人もの人間が交差する場所で、何の予兆も規制も無しにモンスターが溢れだした。


既に近隣のダイバーには通知済み。

多くのダイバーが向かっているはずだ。


亜空間から刀を取り出す。

敵は2体。


突っ込んできた敵を流れるように袈裟に斬り飛ばす。

既に負傷者複数。

重傷者もいるが、応急処置をしている時間なんてない。


スクランブル交差点が見えてくる。

既に複数のダイバーが交戦を開始している。

だが………


「多勢に無勢だな」

「結も来てたんだ。状況は?」

「ん、露音か。ご覧の通り、他の奴らは」

「重傷者の止血だけしてる、私はそのまま突っ走ってきた」


ダイバーの一部が吹き飛ばされる。

いくらダンジョン産の装備があるとはいえ、あれじゃもう戦力にはなるまい。

納めていたもう1本の刀を抜く。


「露音、援護。切り込むわ」

「りょーかい!背中は任せて」


敵の群れに向かって走り出す。

モンスターの多くがE級相当。

だが、ちょこちょこD級相当のモンスターもいる。


E級は他のダイバーでもどうにかなる。

D級狙い撃ちだな。


「応援はまだなのかよ!」

「これ以上持たねえぞ!」


後ろから割り込み、オークの足を切り刻む。

トドメくらいは刺せるだろ。

次のモンスターのところに駆け出す。

ダンジョンのテレポーターからは、未だモンスターが複数出てきている。

ジリ貧だな。

そんなことを考えていれば、真後ろでモンスターの断末魔が聞こえる。


「なにぼーっとしてんの!」

「っ!悪い!助かった!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


救急車や消防車が救助活動に当たる。

警察は被災者から情報を聞き出し、要救助者の数の把握に務める。

自衛隊は出張ってきていない。

基本、ダンジョン系統の事案はすべて警察・消防の管轄。

よっぽどのこと、それこそ国家滅亡レベルならば出張ってくるだろうが、基本は出てこない。

ラッシュアワー・ダイバー不足による戦線の脆弱さ・ダイバーの実力不足。

すべてが合わさり、既に死者は1万。

行方不明者や重傷者の次第では、2万を超える可能性すらある。

黎明期以来の大災害だ。


「……‥悲惨だな。いや、ダンジョン黎明期に比べればまだマシか?」

「あの頃は………対抗できるような人たちが居なかったからね。おかげで……」

「やっと来た。露音、突入隊もう揃ってるよ。私達が最後」


周囲には、D級とE級のダイバー達が集まっている。

突発型ダンジョンの封鎖手段は、ダンジョンの攻略。

すなわちボスの討伐だ。

固定型と違いどんな状況でも戦えるよう、なるだけ優秀な人材を集め、大規模な部隊で突入するのが通例。


「ダイバー諸君!此度の招集に応じてくれて感謝する!これより、突発型ダンジョンの攻略を開始する!」


先頭の人間がダンジョンへ侵入する。

確か……D級のダイバーのはずだ。

それに続いて続々と侵入していく。

人数は、私らクロスゲートの"6人"含め概ね15。

まあ、私はしょっちゅうつるんでる準メンバーみたいなもんだが

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る