運命的
キセキ
見た人全てが絶句してしまうほどの光景で、それを経験していなくても目を背けてしまうほどだ。
この日、ある少女が産声の息吹を上げた。
それだけでもタイミングがいいと思うが、さらにスゴいことにこの病院は市民体育館から近くてスグに避難所に向かうことになった。名前を決まらぬまま体育館で過ごすことになった。
その少女の名前は「実空」と名付けられた。
理由は木よりも高く、自分の人生を実りあるものにして空のようにキレイな心でいて欲しいと名付けられた。
出産と共にいち被災者となって不安の気持ちが大きい実空の母親。ミルクで泣くのではないだろうか。夜泣きで周りを不快な思いをさせてしまうのではないかと心配事が尽きない。
だが、それは
みんなが実空を見て、あやしてくれてこの街の希望になって欲しいと声をかけてくれたり、この子の為に栄養を付けて欲しいと自分の分であるはずの食事を分けてくれたりと言葉では表せないくらい嬉しい気持ちでいた。
自分も食べる物がなくて明日どうなるか分からないのにも関わらず手を差し伸べてくれる姿を見て自分の為以上にこの子を立派な大人に育て上げることが最大の恩返しとなる。そう考えていた。
日々、いつ余震が来るか分からない震えと東北の3月はまだまだ寒くて震えと両方の震えに備えなくてはならない。
物資の中に飲食の他に生活用品やインフラを整える為にとラジオや携帯会社の基地局の他にフリーワイファイを各地に設置された。これで少しは被災者も現状を知れることになる。そう思われた。
ラジオで流れてくる情報とスマホのニュース、今を知らせようと全国各地の人がSNSで投稿する情報と果たしてどれがホントの情報で、どれがフェイクニュースなのか誰も判断できない状態になっていた。
ラジオからでは早速義援金を募集します。アーティストやお笑い芸人さんが被災地訪問をすると流れて来た。気持ちが紛れるのは嬉しいと思いつつもSNSでは全く関係のない人が義援金を装った詐欺が多発してる。自分のいる避難所にいない人の名前が呟いていると嘆いている人がいた。
どうしてこんなことをするのだろうか?人を救うのは人であるのに対して人を傷つける、悲しませるのもまた人なんだと思うといたたまれない気持ちでいた。いつになったら前のような生活が送れるのだろうと避難所にいる全員が感じていた。
そして、いつものように情報収集の為にラジオを聞いていると耳を疑うような言葉が流れて来た。
それは原子力発電所がメルトダウンをして、放射能が漏れ出てバスなどで地元を離れて各地に避難をし始めているということ。
これを聞いていた体育館にいた全員が他人事とは思えず、スグに戻れるようになると考えていた。
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