診断結果【ひかり】

猫月まお

普通とは

 僕は、普通じゃない。

そんな人間がどんな扱いを受けるのか、すべて見てきたと思う。

「ほら、早く乗って。遅れちゃうでしょ」

「……うん」

母さんから急かされる。眉間にシワをよせて、スマホを何度も見ていた。

僕はおとなしく後部座席に座る。

「はあぁぁ、ホントのろまなんだから。ちゃんとシートベルトも締めなさいよ」

「分かった」

大きくため息をつきながら、僕がシートベルトを締めたことを確認すると、母さんは車のエンジンをかけた。

やがて、ゆっくりと車は前進し、マンションから大通りに出る。窓の外では、雑多なビル群が流れては消えていった。

__最後になる、都会の景色を目に焼き付けておこうかな……

母さんに引っ越しの話を聞いてから、今日まで、あっという間だった。おもちゃも何一つない部屋から、必要な着替えだけを詰める簡単な作業。

もう、ここには帰ってこない。……あの学校にも、二度と戻ることはない。

軽く右目をこする。


__カツッ


義眼が空っぽのプラスチックの音を立てた。血は出ていないのに、ズキズキと鈍い痛みが走る。

……少し疲れたな。小さなリュックサックを腕に抱えて、

僕__影渡智里かげと ちさとは、静かに目を閉じた。

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