10年ぶりに現れた正ヒロインが強すぎて、10年来のダメ系幼馴染型ヒロインが敗北しそうな件について。
神崎あら
第1話 10年ぶりの再会
「いらっしゃいませー、お客様何名様……って、え?」
「ひ、久振り~!たいちゃんだよね」
10年ぶりの再会は唐突に訪れた。
まだ梅雨の雨が残る7月の初め、彼女は少し濡れながら俺の働くネカフェに来店した。
「琴葉なのか、いやマジで久しぶりじゃん」
「うん、小4以来だからちょうど10年?振りくらいだね」
「マジかー、もうそんな経つのかよ、てかよく俺だってわかったな」
「わかるよ、だってたいちゃん何も変わってないんだもん」
そう言って琴葉は少し濡れた髪を耳にかけ、少し恥ずかしそうにしながらニコッと笑った。
か、かわいい、つか琴葉ってこんなに美人だったか。
確かに小学生の頃から美人で有名だったけど、これはいくらなんでも育成うまくいきすぎだろ。
パッチリ二重に小さい顔、そして右眼の下に泣きぼくろとか最高に可愛い。
それに髪型は綺麗な茶髪のロングで、おそらくパーマあてて少しふわっとしている。
これぞまさに俺の理想とする美人像。
「よくここでバイトしてるってわかったな」
「え、ああ、この前来た時ぽい人いたから、もしかしてと思ってさ」
「そ、そうなんだ」
いやいや唐突すぎでしょ、10年前地方に引っ越したっきりで一度も連絡なかったのに再会が今とか。
俺がっつりバイト中だよ、せめて休憩時間まで待ってくれればカフェとか行けたのに……。
「今日何時までなの?」
「へ?」
「いやバイトだよ、せっかく会えたんだしこの後ご飯とか行こうよ」
「え、ああそうだよな俺も話したいことあるし、とりあえず今日は18時で終わりの予定」
「わかった、それじゃそれまで使わせて」
「お、おう」
マジかー!なんか知らんがこれはラッキーだぞ。
ようしそうと決まればこの後の仕事頑張ろ、やばいなバイトの後にご褒美があると思うと途端にやる気出るな。
俺は手早く入室処理を行い、琴葉にルームキーを渡した。
「じゃ、17時50分くらいに出るからその後は外で待ってるね」
「了解!俺も早めに上がれそうだったらそれくらいに合流するわ」
「うん」
そうして琴葉は鍵付き個室ルームのあるブースに消えていった。
よっしゃあ、今日は飲むぞ!飲んで飲んで飲みまくる……あ、そうだあいつに一応連絡しとくか。
今日は夕飯なしだって。
俺には現在同居人がいる。
大学は違うが両親が仲良く、付き合いも10年と長い、いわゆる幼馴染という奴だ。
一応あいつは女子だが、俺はあいつを女として見ていない、そう例えるならペットだと思っている。
『あ、もしもしアゲハ?俺だけど』
『泰平!どうしたの、今は仕事中じゃない?』
『いやちょっとな』
良かった平日の昼間だが出てくれた。
って、大学はどうしたんだ。
『ちょっとで電話してくるとかなにそれ?私忙しいんですけど……まぁ嬉しいけど』
『いやすまんな、え、嬉しい?』
『なな、なんでもない、早く要件を言え!』
俺がそう聞き返すとアゲハは少し怒りながらそう言った。
いやでも確かに今、嬉しいって言ったよな。
まぁいいか。
『今日帰り遅くなるから、夕飯勝手に食べてくれないか?』
『え、遅くなる?あー、なにバイト長引くとか?』
『いや違くて、バイト終わったら飯行くんだよ、友達と』
『……そうなんだわかった』
『わりぃな』
なんだ友達と飯に行くって言った途端にアゲハの声のトーンが低くなったような気がする。
『ねぇその友達って女?』
『おう!さっき10年ぶりに再会した幼馴染だ』
『そうなんだ、ねぇ泰平、私も行っていい?』
は?
いやいやなんでだよ。
『なんでだよ!お前が来る必要ないだろ』
『必要ない?そんなことないもん!とりあえず今日18時までだよね、その時間に私もそっち行くから』
『はぁ⁉︎おいアゲハ、アゲハ!』
あの野郎切りやがった。
つかやばいな琴葉に今、アゲハと一緒に住んでるのがバレたら色々と面倒な勘違いされそうな気がする。
こうなったら絶対早上がりしてアゲハが来る前に琴葉と一緒にここを出よう。
最悪、アゲハの事なんて後でどうとでもなるし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます