詩集
華
水と愛【詩】
あなたはわたしの救いです。どれだけわたし悲しみに打ちひしがれていたとしても、その穏やかな光でわたしを照らしてくれる太陽のような存在です。あなたは、明日を生きる意味をくれました。あなたの喜びが、わたしの喜びです。あなたの幸せが、わたしの幸せです。今日もあなたに恋をします。
あなたとの、キスもハグの触れ合いは、ふたりがいなければ、なし得ないことだと分かっているのに!それでもなお、ふたりの間を隔てる肉体が恨めしい!次第に曖昧になっていく自他の境界を、心地好いと感じるのは、きっとわたし達が、恋の魔法に掛かってしまったから。
美しいに違いない。わたしの瞳に映るあなたの姿を、わたし自身が見れないのは些か悔やまれる。けれど同時に、あなたの瞳に映るわたしの姿を、あなたは見ることが出来ない。嬉しそうに笑うわたしと、あなたの美しい瞳が綯い交ぜる。やがてふたりの面輪が近づけば、程なくして輪郭が溶け合った。
毛布の中に包まりたくなるほどの寒さ。成すべきことを全て終えたあとに、毛布に包まると隣にいてくれるあなたの温かさに心は溶かされる。握られた手、絡まる脚、少しの動揺と期待と熱に脅かされた瞳が揺れ動く。わたしはこんなにも、あなたが好きだって気づく瞬間。
降り積もる雪が織り成すホワイトアウトは何処か恋に似ている。ホワイトアウトに包まれて盲目で過ごせば、恋。掻き分けて眼前に広がる世界を見渡せば、愛。──ホワイトアウトは何処か恋に似ている。自分のことよりもあなたが笑う顔が一番だと心から思えるわたしはきっと、愛。
千変万化の海へと興味本位に足を踏み入れて、五臓六腑に染み入るような深海の中、獲物を誘い込む光を放つあなたにふらふらと誘われてやってきた。海底洞窟に引きずり込まれる覚悟で、毒杯すらも仰ぐ確固たる覚悟で、真実の愛を捕まえに来た。そう、あなたを!
追いかければ逃げ、手を引けば寄ってくる。いたずらな天使に、煌めく星々の瓶詰めを贈ろう。いずれ朽ちゆく運命だとしても。あなたを泣かせる未来だとしても。それでも心から出逢えて良かったと思えるような日々にしよう。ほら、涙を拭いて前を向いてごらん。世界はこんなにも美しいのだから!
わたしが時無しに想うのはいつもあなたのこと。あなたの存在がわたしを彩る。まるでビスクドール。わたしなしで生きられないように魔法を掛けていたつもりなのに、いつのまにかあなたがいないと生きていけない身体になってしまった。甘酸っぱい密にひっそりと忍ばせた毒が、わたしを狂わせる。
出会いは、憤怒のような日差しに、蝉の声が脳味噌を揺さぶるような暑い暑い夏のこと。誰もが草臥れるような炎天下に、涼やかな潮風がわたしの頬を撫でたのをよく覚えている!しなやかな身体が踊り狂うさまはまるで波浪のように軽やかで、絶え間ない喜怒哀楽の移り変わりはまるで塩が満ち干きを繰り返すかのように忙しない。背後で見え隠れする獰猛さは、美しいほどに恐ろしく、恐ろしいほどに美しい海そのものだと畏敬の念すら覚えるほどの力強さ!わたしは忽ち恋の弓矢に射抜かれ、愛の僕へと陥るのも禁じ得なかった。ああ、あなたと茹だるような夏を、世界が揺らぐような秋を、寒さに震えるような冬を分かち合うことができるだなんて!そして春泥を踏み抜くまで、あともう少し。
なんてことだろう!真っ暗な海の底の魔女に唆されて、二度と海に戻れない代わりに、失われることもない二本の足。対価はわたしの為に何もかもを捨ててしまったこと、あなたの瞳に揺らぎはない。ここで生きていくと覚悟を決めたんだね。そんなお姫様を助くこと、それがわたしの喜びだよ 。
朝焼けが恋しくなったのは。いつもの夕焼けが待ち遠しくなったのは。しりたい探究心はどうしても止められそうもないけれど、てこずる感情の行き場に不思議と心地好さを感じた。いつも愛しいあなたのくちびるから呼ぶ声がいつも私の心を擽ってくれる。
あなたに出会ってから、色褪せていた世界が息を吹き返した。まるで地上で何度も弾ける雨粒のようだ!わたしを見つめる瞳の奥底の、あなたも知らないあなた自身を知りたいと思うのは罪深いことだろうか?わたしはそうは思わない!だってあなたの瞳はこんなにも輝いているのだから!
煌びやかなシャンデリアが照らす紳士淑女の社交場。わたしとワルツを踊ろう。踊るための足がないのなら支えてあげよう。踊り方を知らないのなら教えてあげよう。さあお手をどうぞ人魚姫。わたしに身を委ねて。午前0時の鐘が姿を覆い隠す前に。微かな温もりを見失う前に。
羽根の如く軽やかな尾鰭は、いわば自由の象徴。大海原の何処へだって泳いで、気泡が夜空の星のように煌めく。海面を眺めると思い出すのはいつもあなたのこと。見惚れるほどに美しい。綻んだ笑顔を浮かべるあなたに、わたしは何度でも恋をするよ。
青い絨毯の上を泳いで、澄んだ潮風を身に浴びた。危険が漂う海底を強かに生き延びた尾鰭、なんて美しいのだろう!わたしでは想像し得ないことを、あなたは沢山経験してきたんだね。凪いだ海面を揺るがすように、わたしの心をさらってしまった。その頬にキスを落とす。人魚姫に幸あらんことを。
ああ!私の人魚姫!その自由奔放で煌びやかな尾鰭でどこへ行くんだい?
私はしがない小魚。あなたが泳いで零れたあぶくを掻き分け追いかけることも許されない。せめて魔女に声を対価に唆されることなく、海の中で囚われていてと願うばかり。
詩集 華 @laviyua
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