第20話 いたずらごころと急接近
天城と涼音の誕プレを買いに行く前日の土曜日。俺は涼音と一緒に出掛ける約束をしていた。
目的地はショッピングモールに併設されたアミューズメント施設で、ボウリングやバスケ、バドミントンやテニスなど様々なレジャーが楽しめる学生に人気の場所だ。
「お待たせ」
改札前で待っていると声をかけられた。顔を上げるとショートヘアの髪を後ろで結んだ彼女がいた。
「よし、行くか」
並んで歩き始める。楽しそうに会話をする彼女。白のTシャツにデニムのショートパンツというシンプルな装いがとても似合っていた。
ショッピングモールに着き、さっそくチケットを購入し、中に入る。まずはテニスでもしようとコートに行き、ラリーを始めた。
さすがテニス部だ。うまく定まらず、あっちこっちに飛んでいく俺が打ったボールを綺麗に正面に返してくる。
「さすがにうまいな」
「へへっ、そうだろー!」
ふんす、と胸を張り得意気な彼女。こうやって褒められると子供のように喜ぶとことか、ほんと可愛いんですよ、この子。
ある程度テニスをしたあと、バスケをしようということになった。バスケはどちらも未経験でルールを知っている程度だった。
はじめは適当にリングめがけてボールを投げていた。一喜一憂、表情豊かな涼音を見るのは飽きない。そのうち、1on1をしようということになった。攻め側と守り側、交互に入れ替えて行う。
「よしっ」
「あ、くっそー!」
先ほどのテニスとは異なり、身長差がある俺の方が有利に進んでいった。特にこちらが攻撃する際はそれが顕著だった。背中を使った体格差で、ボールをうまいこと隠す。
「こ、この!」
涼音は必死にボールを取ろうと、俺の背中に体をくっつけて精一杯、手を伸ばしている。手を伸ばす度、ちょっと声が出ちゃってるのも可愛い。
そんな様子を見ていると、つい意地悪したくなってしまった。あえて抜き去ってからシュートを打つのではなく、時間をかけてゴールに近づく。
「燎、絶対わざとやってんだろ!」
「なんのことだか」
「ざけんな、このやろー!」
涼音がより密着してくる。背中に広がる感触にふと冷静になる。あれ? これ色々とまずくない? ダメだ、一回意識したら余計に――
「もらったー!」
「まずっ……! って、やばっ……!」
「きゃっ……!」
集中を切らした俺の隙を突いた涼音だったが、その際、俺がボールを守ろうと焦って反転したことで、体重をかけていたものがなくなり倒れこんできた。彼女を抱きとめて、そのまま下敷きになる。
「あっぶねー……、大丈夫か?」
「サンキュー……、助かった……」
「いや、俺が悪い。さっきテニスやった時はいいようにやられたからさ、ちょっと意地張ってたら、つい、楽しくなっちまった。まあ、もうバスケはいいか。次は何を……涼音?」
「すぅー、はぁ~……」
俺が独りで猛省をしていたところ、涼音が胸に顔をうずめたまま動かないことに気がついた。こちらからは表情は見えないが、かすかな息遣いが聞こえる。どうかしたのだろうか? ひょっとして、どこか痛めて苦痛に耐えているのでは……!?
「涼音! 大丈夫か!?」
「すぅー……、はっ! だ、大丈夫だ! えっと……アイムファインだ!」
「なんで英語?」
がばっと顔を上げて、やけに焦った様子で話す彼女。とりあえず、怪我がなくてよかった。そう思い、安心していると、顔を真っ赤にした彼女が小声で何か言っている。
「(こ、この体勢、まずい! 早くどかないと! っていうか、これ、燎も涼音の匂いわかっちゃうよね……? やばい、やばい……! 汗臭いかも……!)」
「涼音? ごめん、ちょっと聞こえないかも」
「な、なんでもない! ちょっとトイレ!」
すごい勢いで立ち上がり、そのまま走っていく彼女のうしろ姿を呆然と眺める。とりあえず、ボール片付けるか。
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