第3話  龍神剣

龍誠と瞳を乗せたMT09がターンパイクの橋を渡ると前方に、先ほど追い越して行った真紅のドカッテイが停まっていた。

周囲に4台のドリ車が囲んでいる。どうやらドカッテイの姉さんが絡まれているらしい。

龍誠は、静かにドカッテイの横に、愛機MT09を停めてメットを脱いだ。

車のドライバー達は男8人、ドカッテイの姉さんを囲んで何やらもめているようだ。

龍誠は、瞳にMT09のトリプルスリーエンジンをかけたまま、危険と感じたら近くの警察に駆け込んで助けを呼ぶよう指示させた。

ドカッテイの姉さんがヘルメットを脱いだ。龍誠のまさかの元カノの小百合だった。

龍誠は、ヤバイ場面での再開に苦笑いしながら近づいていった。

リーダー格の男「お前な、俺の大事なシルビア蹴とばしただろう!」

峰不二子のようなスタイルの小百合は、8人の男達を目の前にして不敵な笑みを浮かべている。

龍誠は、8人の男たちが待ち受けている地獄図を想像して憐れむしかない。

小百合は、戦国時代から一子相伝で伝わる龍神剣の達人なのだ。

男たちは、完全になめきって油断していた。

そこに、龍誠が現れたので、気まずそうにしている。

龍誠が小百合に向かって指を下に向けたので、男たちの怒りが爆発したのだ。

リーダー格の男「お前も、こいつの仲間か?修理代金100万円で許したる!」

そういって、やめとけばいいのに小百合の肩に手を置いた瞬間である。

小百合が男の小手を決めて、鈍いボキッという音と共に向かいの二人に向けて叩きつけた。これで三人の男が気を失って倒れた。

驚いた残りの5人の男たちの一人が、小百合に向かって、左ジャブから右ストレートパンチを放った。小百合は、体さばきによって、このボクサー崩れの男の肘を決めて残りの4人に向けて投げ飛ばす。

龍誠の目測で時間にして、数十秒間の出来事である。

小百合「龍誠、ぼさっとしてないで、こいつらの息の根を止めろよ」

龍誠「おいおいおい、ここは、パレスチナじゃないんだから、平和ボケした日本だぞ、いい加減にしろよ」「おまえ、いまだにモサド(イスラエル諜報員)やってんのかよ」

小百合は、子猫のように龍誠にすり寄ってきた。

そこに、目を吊り上げて瞳が迫ってくる。

龍誠絶体絶命のピンチである。


つづく

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