鳥じゃない


 中学生の山野、松本、田村は部活が終わり家に帰っている途中だった。

 

 すると三人の上を鳥の大群が飛んでいった。


 「何あれカラス?」


 「すげぇ多いなー」

 

 その二人の会話を聞いた山野は怯えた顔をしていた。


 「お前らにはあれが鳥に見えるのか。どう見たってあれは鳥じゃないだろ」


 「じゃあ何に見えるんだよ」


 「どう見たってあれは、、、」


 ドンッ


 喋ろうとした山野にトラックが突っ込んできた。

 

 山野は死んだ。

 

 次の日。


 山野が死んで部活のやる気が起きず、二人は部活に行かず帰ることにした。

 

 歩きながら田村が口を開く。


 「なぁ…俺も、見えないんだ」


 「ん?どうした」


 すると田村は暗い表情で空の鳥に視線を向ける。


 「鳥に見えないんだよ」


 「お前も何を馬鹿なことを言ってんだよ。それに鳥に見えないなら何に見えるんだよ」


 松本は少し苛立ったように言い返す。

 

 「言うわけがないだろ!山野もそれを言おうとして死んだんだぞ!」


 田村はそう言うと走って帰ってしまった。


 「ちょっ」


 松本は追いかけようとしたが田村は足が速く、もう見えなくなっていた。

 

 次の日

 

 松本が学校に行くと田村の姿がなかった。


 「いつも俺より先に来てるのにどうしたんだ」

 

 チャイムが鳴っても田村は来なかった。

 

 教室の扉が開き、そちらを見ると入ってきたのは先生だった。 


 すると先生が泣きそうな顔でこう告げた。


 「昨日の夜、田村君が自宅の二階から飛び降りて意識不明の重体だそうです。田村君のことで何か知ってる人は、今から配る紙に書いてください」

 

 松本は担任の言葉を信じたくはなかった。

 

 学校が終わったあと松本は田村が入院していると聞いた病院に向かった。

 

 するとあの時と同じように鳥の大群が松本の上を飛んでいった。

 

 それを見た松本はこう言った。


 「鳥じゃない…」


 END

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