空を超えた親友へ

@ichiri3168

第1話恨み

ババン、ババン、バン

「ナイスショット!」

日本前線射撃部隊訓練所。

今日も俺はダチの端濃 差座音(はじこい さざね)と訓練場にいる。

「やっぱ、お前はすげーな」

「10発中の8発きめてんじゃん!お前がいれば日本の未来は明るいな!」

こいつはまじですげーよ。俺から見ても尊敬だし実力もトップクラスなんだよ

「大げさだよ、俺はなにがなんでも沖縄を取り戻して柚子(ゆず)を助けたいんだよ」

「そうな!俺もお前のためならなんでもするぜ、よし撃ち込みじゃい」

 




時は西暦2500年。

世界は3度目となる世界大戦を開いた。

日本はもちろん戦争に参加しないと言い切った。世界はそれを承諾したものの戦場を

モンゴル大平原、ドイツのドルトムント、そして沖縄の3箇所だと発表した。

日本は猛抗議を試みるも通らず、逃げ遅れた沖縄の住民たちはアメリカの奴隷となった。

怒りをつのらせた日本政府は沖縄奪還を目指し戦力部隊を作り上げた。

戦力部隊は4つの部隊から構成され射撃部隊、空撃部隊、毒撃部隊、秘密精鋭特殊部隊に分けられた。


「差座音さん、九州に避難しましょう。ここを離れるのは嫌だけど差座音さんと一緒ならどこへでも行きます。」

「おれも早く柚子を安全な場所に移動させたい。今日中に支度をしてこの家を出ようか」

「はい!急いで支度しちゃいますね」

急いで支度を始めた柚子を見ながら俺も準備に取り掛かった。

ある程度の服を詰め終わり、あとは何を持っていこうか考えると棚の上においてある

写真が目に入った。

それはまだ出会って間もない頃、海岸で撮った写真だった。柚子の笑顔は鈴のように

可愛らしくカメラを見つめている。

キラキラした海と、雲一つない青空だった。あの空もう一度みたいな。

「ねぇー差座音さんこれなに?」柚子が持っていたのは茶色い封筒だった。

「なんだろう、それ」表には

          端濃 差座音様  日本政府より

と書かれていた。

中を開けてみると黄色い紙が入っており、真ん中に大きく文字が書いてあるだけだった。

         おめでとうございまず

   あなたは秘密精鋭特殊部隊への入隊が決まりました

「差座音さん、これって?」柚子はもうすでに涙の粒が零れそうだった。

「大丈夫だよ」俺は笑ってみせた。

「それに秘密精鋭特殊部隊は一番位が高い部隊なんだよ。それなりにお金もらえるからそしたらまたたくさんいろんなとこ行こーな」

「はい」柚子はこぼした涙を拭うと笑顔を取り戻した。

「それじゃあ、行きましょうか!」

「うん」

たくさんの思い出が詰まった家をこの日俺と柚子は出ていった。




港についた。

3時間後に出港する船にまだ人はおらず船の中はガラガラだった。

「よし、このへんに荷物おこうか」

端っこの席に荷物をおいて座席に座った。

「なんだか、お引越しみたいだね」と笑う柚子を見ると俺も頬が自然と緩んだ。

「外の景色見に行こうか」

「はい、そうですね」

僕らは海を見ながら沖縄での思い出を語り尽くした。3時間もあっという間で

中はだいぶ人が多くなっていた。

俺は海を見つめる柚子の横顔をカシャッとスマホで撮った。

「そろそろ、中入ろっか」

「ねぇ今撮ったでしょ!」

俺は笑いながら撮ってないよと言いながら中に入った。


船の中に入るなり俺はすぐに異変に気づいた。

柚子もその異変に気づいたらしく俺は柚子の肩に手を回して自分の方に寄せた。

「差座音さん、なんで男の人しか乗ってないの?」

俺も理解が追いつかなかった。

すると男がちらっとこちらを見て柚子の方を見ながらこう叫んだ。

「女がいるぞぉー船からおろせー!」

その瞬間に後ろから首を絞められ柚子を離してしまった。

柚子は大勢の人から髪を引っ張られ、蹴られ、引きずられながら船を降ろされた。

俺は頭が真っ白になった。

そいつの力が緩んだ隙に抜け出し全身全霊の力でそいつを殴った。

ボーーーーーーーーーーーン 出港のチャイムが鳴り響いた。

俺は急いで外に出ると下にはその場で倒れている柚子を発見した

「ゆずぅぅぅぅうううう!」

俺は咄嗟に船の柵をまたぎ海に飛び降り柚子のところに向かおうとしたところを

客室乗務員の人に抑えられた。

俺は鮮明に柚子の姿を覚えている。

細く白い腕が真っ青になり小さく可愛らしい顔がボコボコに腫れ上がり横たわる柚子を。









その日俺は強制的に柚子と別れることになった。

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