第45話 僕の父は



「貴様!私を愚弄するつもりか!よくもその様な戯言を!」



帝釈天の怒りは、雷として現れ、

バチバチと身体中に雷を纏っている。



——さすがに、まずい



神の怒りに触れるなど、

本来なら、人としてありえない




——やっちゃった




勢いで、いいたい放題言ったので

怒らせて当然だよな。




——怒らせてから気付くとか、遅いよね




僕は、自分に呆れながらどうやって、

事を収めようかと、考えていたら



急に目の前に、

阿修羅のムキムキな背中が現れた。




「阿修羅?!」




阿修羅は、何も言わずに

帝釈天の雷から僕守っている




「阿修羅、貴様…?まさか!」




帝釈天が、阿修羅に声をかけた瞬間に

阿修羅は前へ、グッと踏み込むと




バキッ!




力一杯、帝釈天を殴った。





——えー、いきなり殴った!





これ、帝釈天と関係修復の難易度

めちゃくちゃ上がっちゃったよ





「悠、下がれ!」





阿修羅に怒鳴られた時、後ろから現れた手に捕まれ、どこかに引き摺り込まれた





「?!」





長なんだか分からず、驚き声すら出ず

ジタバタしながら掴んだ奴を確認した。




「うわぁ!黒月⁉︎」




視界に黒月が現れ、思わず叫んだ。

驚きと安心感が同時に湧き上がった。




——助けに来てくれたんだ




ようやく理解して、阿修羅に目をやったけど

丁度ゲートが閉じてしまった。


僕は、幻世に帰って来れた。





「黒月、ありがとう。ただいま」


黒月にお礼を伝えたら、黒月は頷き




「おかえり、頑張ったな」


と言って頭をポンと撫でてくれた。

すると、勢いよく迅が抱きついてきた


次に清美と、おくどさんも張り付き、

キヨシは風呂場から、こちらを見ている


秋葉は、囲炉裏のヘリに座り手を振り




ルンバは……いつも通り掃除中だ




「心配かけてごめん」




皆に心配かけていた事を改めて実感して、

帰らないと言った事を少し反省した。




「ほっほっほ、悠、気にするでない、皆、悠が大事だから心配したんじゃよ」


縁と豊も、こくこく頷いている。




僕は、もう一度皆の顔を1人ずつ見て、




「心配してくれてありがとう。ただいま」




と、笑顔で答えた。







「黒月」



僕は、黒月の名前を呼んだだけだ。


なのに、黒月は、




「こっちで話そう」




そう言って、庭に出た。

僕の考えは、全てお見通しなのかも知れない







「僕の父親は、阿修羅だよね?」







僕は、なんの前置きもせず、

いきなり核心を突いて黒月に尋ねた。




黒月は、一旦目を閉じ、

再び開けると、僕の目を見ながら






「そうだ」






と、短く肯定した。





——やっぱりそうか





僕は、何とも言い表せない

複雑な気持ちになった




「本来は、隠さなければならない事だが、悠は継承者。いずれ知る事にはなっただろう」



早かれ遅かれ、神社を継ぐ時には

自分が神の子だと、知る事になったのか…




「よりによって、阿修羅か…」




阿修羅との出会いは最悪だった。


正直、未だに、苦手意識がある。



僕が、あからさまに嫌な顔をしていたので、

黒月は、悲しそうな顔をして





「悠、許せ。奴は、人ではなく神なんだ」





と言って来た。


その言い方に違和感を感じて



「黒月、別に阿修羅が嫌いな訳では無いよ。苦手なんだ。苦手な相手が父ちゃんとか…」



ちょっと困るよね?



「それに、初めから言ってくれたら、良かったじゃ無いか…」




と言っては見たけど、

黒月がさっき『許せ』と言った意味を



その時、なんとなく理解した



もしかして阿修羅は「父」とは、

名乗りたくても名乗れなかった?





「黒月、もしかして、秘密なの?」




僕が尋ねると、黒月は頷いた。




——神との誓約が関係するのかな




「人と神が交るなど、本来ならあり得ない。一定の条件が重なった場合のみだ」



女の神力が異常に強く、神を受け入れる器として存在する場合のみ…だっけ?



僕は、黒月に向かって、条件を知っていると

分かる様に頷いて見せた。



器の僕を産んだなら、

母ちゃんが当主でも良かった筈だよな?




––––何でなんだろう?




「本来なら、器の作り方は、知られてはならない。人間は認識を誤って、生贄を差し出しかねないからな」




——あぁ、それはやりそうだ




口伝で伝わると、どこかで歪んで、

過ちが起こり兼ねない




「悠は、神代の人間の器の継承者で、次期当主だから、帝釈天も知らせたのだろう」



神から直接だもん、間違いは無いよな

普通なら、こんな荒唐無稽な話、




——誰も信じる筈はない




人の命に関わりかねない事だ。

絶対に言えないよな




「阿修羅は、何で母ちゃんを選んだの?」



長い年月過ごしていたんじゃないのかな

他には、誰も居なかったのだろうか?



まさか、母ちゃんに一目惚れなんて事…




——あるわけ無いな




「まずは昔話からだな、阿修羅は元は神族だった、だがあの性格、色々やらかして、神から半神へ落とされた」




——うわ、阿修羅ならやりそうだ




僕は、さっき帝釈天を迷わず殴った

阿修羅を思い出していた。



僕に対しての、意地悪さもだ。

阿修羅は、神の癖に結構性格が悪い



——優しい時もあるか?




僕は、阿修羅が術を教えてくれた時

頭を撫でてくれた事を思い出す




「堕ちた神が、もう一度神に戻る為の条件は『己の器を作る事』だったんだ」




黒月の言葉を聞き、阿修羅を思い出していた

思考から離れ、意識を話に戻した。



何で、そんな事が条件なんだろう。

器には、まだ別の意味があるのだろうか?




——また、疑問が増えたや




「阿修羅は善子と出会い、彼女のおかげで、半神から神に戻ったんだよ。その事を知る者は少ないがな」




僕も阿修羅は半神だと聞いた。


阿修羅は、今はちゃんと神様なんだ…



——神に戻る為に母ちゃんを使ったのか?




「じゃあ、阿修羅は、条件が合っていたから母ちゃんを選んだの?」




——だとしたらムカつくんだけど…




僕は、阿修羅の存在が気に入らない癖に

条件だけだと思うと、無性に腹が立つ。




——理不尽な気持ちだな




「違う!」




黒月が、僕の発言をキッパリと否定した。

僕は、黒月の勢いに驚き顔を見つめた。




——何でそんなに必死なんだ?




「あの2人は、かつて…立場を超えて愛し合っていたんだ」




黒月は、真剣な顔だ。

分かってやれと、目が言ってる。




「え?!」




僕は、母ちゃんに

愛し合っていた相手がいた事に、まず驚き、



全く想像が付かなくて、困惑し




そして…ちょっとだけ嬉しく感じた。


 



「黒月…何があったか教えてよ」





僕は、黒月に

母ちゃんと阿修羅の過去の話を尋ねた








掟があるから、阿修羅は言えません。

神の領域の話なので、悠は本人なのと器だから明かされました。爺ちゃんも知りません。



次回は、黒月が阿修羅と母の過去を話します




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