第12話 訪問者は突然に

 月城君は深い藍色のセリオンを着けており、三日月型の装飾が施されていた。


 1限目が始まるまでにある程度案内を済ませておこうと言う訳で、月城君は少し早足で進んでいく。



「っ!くれは先輩!!」



 すぐ後ろからトイさんが物凄い勢いで駆け寄って来て、深呼吸しながら呼吸を整え始める。



「え?えっと、君は……。」



 月城君は突然に現れたトイさんに困惑の表情を隠せずにいた。呼吸が整ったトイさんは顔を上げて、明るい笑顔で自己紹介する。



「月城先輩初めましてっ!1年3組で、くれは先輩の後輩の桜羽トイと言います!私も是非同行させてください。」



「あぁ!そういうことね。もちろん、一緒においで。」



 そういう訳で、トイさんを交えた3人で学校内を回ることとなった。月城君は、音楽室や理科室などをこの学校ならではのミニ雑学も合わせて紹介してくれた。


「ここは職員室。この部屋にだけ、アイスが売ってある自販機が置いてあるなんて噂があったり……。」


「そして、ここは理科室。よく角夢(かどゆめ)先生が実験をしてるんだけど、高頻度で爆発が発生してるから、入る時は気を付けてね……。」


「ここはデザイン室だよ。美術部がメインで利用してるんだけど、やけに広いよね。」



 こんな感じで、月城君は1つ1つの特別な教室を丁寧に説明しながら案内してくれた。非常にユニークな先生と生徒で溢れていそうな学校で、すごく賑やかそう。


 1限目はとっくに始まっていたけど、トイさんはトイレを理由に抜け出してまで同行すると言うよく分からない行動をしていた。



「それじゃあ、案内も終わったことだし、教室に戻ろうか。桜羽さんも急いで戻ってね──。」



 月城君が言い終わる前に、遠くの方で何かの衝突音や崩壊音、悲鳴が響きわたった。私達は一斉に物音がした方を向く。少しするとけたたましい咆哮が私達の耳に届く。



 ──シュレク。



 月城君がすぐさま駆け出すも、次の瞬間背後から天井を突き破ってきたシュレクが迫ってきた。


 私とトイさんは臨戦態勢に入ったけど、月城君は進行方向を変えて背後から来たシュレクと応戦し始めた。



「夕星さんと桜羽さんは急いで先生に知らせて!!」



 そんなことを言われる前に私は一番初めに悲鳴が聞こえた場所へと駆け出していた。

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