第42話 アークスの再来と最後のドタバタ

『世界調和装置』のゆる設計に取り掛かってから、数週間。

『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。窓から差し込む陽の光が、船内を明るく照らしとる。

ミオの工房は、文字通り「動く世界の中心」や。

(うわぁ、世界平和って、ほんま簡単に実現するんやなぁ!うち、天才かもしれへん!)

ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。

資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。ひんやりと、そして柔らかい感触が、ミオの心を癒す。


あの時、白い空間で出会った「上位存在」と名乗る、どこか暢気な神様。

彼が言うには、世界にはまだ「ちょっとした」課題が残っとるらしいねん。次元の壁の「ほんの少しの」綻びやて。

それを正すために、うちに「ゆるやかな再創造」に近い大規模な生産を要求しとるんや。

『世界調和装置』の設計は、めちゃくちゃ複雑で、膨大な想像力と魔力を使ったけど、寝てる間にサクッと完成したんや。

(寝てる間に仕事できるなんて、最高やん!)

ミオは、夢の中でも、ちゃっかりと生産活動に勤しんでいた。


そんな平和な日常の中に、ごく軽く力を取り戻したアークスはんが、再び姿を現したんや。

フロンティア号の自動検知システムが、外部からの強力な魔力反応を検知したんや。

モニターに映し出されたのは、あの黒崎耀、アークスはんの姿やった。彼の瞳には、以前よりも強い光が宿っている。

彼は、ミオが世界を「支配」するのではなく「維持」しようとしていることに「それじゃあダメだ!」と熱弁する。

「そなたの生産など、所詮は『模倣』に過ぎない!この淀んだ世界を根本から浄化するには、ワタシの『究極の破壊』しかないのだ!」

アークスの声は、どこか冷たく、響き渡る。その声は、フロンティア号の船内にも響き渡る。

やけど、彼の熱弁も、ミオにはどこかコミカルに聞こえる。

(この人、ほんま、熱いなぁ……。そんなに熱中できることあって、羨ましいわぁ)


「そんな生ぬるい生産で、この淀んだ世界を変えようなどと……甘い!甘すぎるぞ、だがそのお菓子は最高に甘い!」

アークスは、ミオの生産技術を「非効率的で生ぬるい」と嘲笑しつつも、ミオが差し出した『魔力たっぷりロールケーキ』をあっという間に平らげた。

(はい、懐柔成功!)

ミオは、心の中でガッツポーズをした。


資材スライムたちが、アークスの周りを嬉しそうに飛び跳ね、彼が破壊しようとしたものをモグモグ片付ける。

アークスは、資材スライムたちに振り回され、どこか生き生きとしているようやった。

彼の周りで、土色のスライムが瓦礫を片付け、銀色のスライムが破壊された金属をモグモグしている。

時には、フルーツ好きのスライムが、アークスに採れたての果物を「ぷる!」と差し出すことも。アークスは一瞬躊躇するが、結局は受け取ってしまう。


アークスは、ミオが生産する『世界調和装置』の設計図を見て、驚きを隠せない様子やった。

「な、なんという完璧な設計……!ワタシの破壊の力をもってしても、これほどのものは……」

アークスの顔には、感嘆と、わずかな焦りの色が浮かぶ。

彼は、ミオが世界を「維持」しようとしていることに「それじゃあダメだ!」と熱弁するが、結局はミオの生産するお菓子に釣られてしまう。

ミオは、深刻な葛藤に陥ることなく、アークスを「ちょっと困った友人」として扱う。

(まあ、破壊の力は面倒やけど、お菓子に釣られるんなら、可愛いもんやん!これで、うちの工房も、もっと賑やかになるかもやし!)


この日、工房には、王族、魔族、ドワーフ、エルフ、そして転生者アークスまで、様々な種族が集まっていた。

ライオスたちは、アークスの破壊の力に警戒しつつも、ミオのお菓子で大人しくなった彼を見て、呆れと安堵の表情を浮かべとる。

「まさか、世界の命運を賭けた転生者が、お菓子に釣られるとはな……」

シエラが、呆れたように呟いた。

フィオナは、ミオとアークスが並んでお菓子を食べている姿を見て、にこやかに微笑んでいた。

ルナリア姫とリリアーナ王女は、新しいお菓子の味に夢中で、アークスのことなど気にも留めていない。

ゴルムはんは、アークスの「究極の破壊」能力に興味津々で、彼に「その破壊の原理をワシに教えてくれぬか!」と詰め寄っている。

エリアスは、アークスから語られる世界の真実の断片に、目を輝かせている。


ミオは、そんな賑やかな工房で、アークスを「ちょっと困った友人」として扱いながら、世界調和装置の生産を本格的に進めていく。

『世界調和装置』の生産には、次元の狭間で手に入れた特殊な素材と、この世界の希少素材が必要やった。

ミオは、資材スライムたちに指示を出し、素材を集めさせる。

資材スライムたちは、嬉しそうに「ぷるるるーっ!」と返事をして、素材を探し始める。

彼らは、王都の資材庫や、フロンティア号の倉庫、さらには次元の狭間から、必要な素材を次々と運んでくる。

ミオの指先が、流れるように動き、魔法陣を刻み、魔力を注入していく。

膨大な魔力と集中力を要する生産や。

代償の眠気が、徐々にミオを襲い始める。


(よし!アークスはんと一緒に、最高の『世界調和装置』作るで!ロマンやん!)

ミオの瞳には、新たな創造への情熱が輝いていた。

その日の夜。

ミオは、工房の隅で、資材スライムたちに囲まれながら、ぐっすり眠りについた。

夢の中で、ミオは、創造主からの「お昼寝の誘い」を感じながら、世界調和装置の最終調整を行っていた。


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次回予告


世界を救う最終兵器、『世界調和装置』が起動するで!

めちゃくちゃ複雑な設計に、うちの頭も眠気も限界突破!?

資材スライムはんたちは、そんなうちを応援してくれるんやろか!?

そして、アークスはんとの最後のドタバタは!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第43話 生産者連合、みんなで楽しく最終作戦!


お楽しみに!

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