第31話 転生者との遭遇?まさかの再会

世界会議で環境問題がサクッと解決してから、数週間が経ったんや。

『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。

ミオの工房は、文字通り「動く楽園」や。

(うわぁ、世界平和って、こんな簡単に実現するんやなぁ!うち、天才かもしれへん!)

ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。

資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。


最近、世界には新たな「ちょっとした」異変が報告され始めていた。

特定の地域で、地面が勝手に陥没したり、空中に亀裂が入ったりするらしい。

空に、まるでガラスが割れたみたいなヒビが入ることもあるんやて。

「ミオ殿。これは、次元の壁に綻びが生じている可能性があります」

エルフの学者エリアスが、深刻そうな顔で報告してきた。彼の指先が、空中に走る微かな亀裂をなぞる。

「未確認のエネルギー流入による、ごく軽微な世界の変質……これは、放置できぬ問題です。このままでは、世界の調和が乱れかねません」

エリアスの言葉に、ミオは首を傾げる。

(次元の壁の綻び?なんや、またうちの生産能力が原因なんかなぁ?まさかねぇ……だって、うち、平和にしただけやん?)

ミオは、資材スライムが採ってきた、珍しい形状の魔石をモフモフしながら考えた。


ミオは、資材スライムたちに指示を出した。

「スライムはん、この亀裂の周りの素材、モグモグして分析したってや!あと、亀裂から漏れてるエネルギーも!」

資材スライムたちは、嬉しそうに「ぷるぷる~!」と飛び出し、亀裂の周りの地面や空中のエネルギーをモグモグと食べ始めた。

彼らは、次元の壁の綻びから漏れ出す、この世界には存在しない奇妙なエネルギーにも、躊躇なく食らいついていく。

「ぷるっ!」

スライムが、分析結果が詰まった魔石を、ミオの前にポロンと吐き出した。魔石は、奇妙な脈動を帯びている。


ミオは、その魔石を分析する。

魔石に映し出されたのは、前世の地球で見たことのある、見慣れた文字や図形やった。

その中に、一つの名前が浮かび上がる。

「黒崎耀……?」

その瞬間、ミオの脳裏に、前世の記憶がフラッシュバックした。

ブラック企業で、徹夜続きで倒れたあの日。

上司の鬼のような顔。

そして、その上司のデスクに貼ってあった、見覚えのない写真。

そこに写っていたのは、黒崎耀という、無表情な男の顔やった。

(まさか……あの人、うちと同じ、転生者やったん!?しかも、こんな異世界で再会とか、奇遇すぎるやん!)


その時だった。

亀裂の向こうから、一人の男が現れた。

長く伸びた黒い髪に、冷たい瞳。

その男は、ミオが記憶している黒崎耀の顔と、瓜二つやった。

彼の体からは、どこか不穏な、しかし強力な魔力が放たれている。

「ほう、そなたが、この世界のバランスを乱している『生産者』か」

男の声は、どこか冷たく、響き渡る。その声には、ミオの能力に対する、明確な興味と、かすかな敵意が混じっている。

彼こそが、ミオと同じ転生者、アークスやったんや。


「ミオ殿!危険です!」

ライオスが、剣を構えてミオの前に立つ。その表情は、臨戦態勢に入っている。

フィオナも、回復魔法の準備に入る。彼女の手から、微かな光が漏れる。

シエラは、静かにアークスの動きを観察している。彼女の目は、その男の強さを見定めようとする。

資材スライムたちは、アークスの放つ破壊の魔力に警戒したのか、「ぷるるる……」と震えながら、ミオの足元に集まってくる。彼らの体が、僅かに色を変える。


「ワタシは、アークス。この世界を『再構築』するために来た」

アークスは、ミオに冷たい視線を向けた。その瞳には、世界の現状に対する、諦めと、変革への強い意志が宿っている。

「そなたの生産は、この世界の淀んだ均衡を保つに過ぎない。この世界は、一度全てを破壊し、ゼロからやり直さねばならんのだ」

アークスは、手のひらから黒い光を放ち、周囲の木々を、瞬時に灰に変えていく。その光線は、大地を抉り、石を砕く。

その破壊の力は、ミオの『究極の生産』能力とは、まさに真逆やった。


「えぇ~!?破壊!?そんなん、めんどくさいやん!それに、せっかくみんなで平和にしたのに!」

ミオは、アークスの言葉に、思わず叫んだ。

アークスは、ミオの言葉に、鼻で笑う。その笑みには、ミオの考えを愚かだと見下すような感情が込められている。

「愚か者め。そなたの生産など、所詮は『模倣』に過ぎない。ワタシの『究極の破壊』こそが、真の創造を呼ぶのだ」

アークスは、ミオに迫る。彼の体から放たれる破壊の魔力が、ミオの全身を包み込む。


その時、ミオは思った。

(アークスはんの能力って、『破壊』なん?これって、うちの『究極の生産』と対になってるんちゃうの?もしかして、うちが転生してきたんも、この人に関係あるんちゃうん!?)

ミオは、猛烈な眠気に襲われる。思考が、徐々に混濁していく。

(あかん、こんな時に眠くなるなんて……!せっかくイケメンやのに、話、聞かれへんやん!)


しかし、アークスはミオの能力の代償「眠気」を嘲笑う。

「それがお前の弱点か?所詮、その程度の力で、この世界を背負うつもりか?甘い!甘すぎるぞ、眠りの魔女!」

アークスは、ミオに向かって、破壊の光線を放った。その光線は、ミオの胸を貫かんばかりの勢いやった。

ミオは、とっさに目を閉じる。

(ああ、もう……なんでこんな時に眠くなるねん!)

ミオは、そのまま意識を失い、深い眠りへと落ちていった。

資材スライムたちが、ミオの周りに団子になって集まり、彼女を守るように寄り添う。彼らの体が、防御壁のように輝く。

アークスの放った光線は、スライムたちの体をすり抜け、ミオには当たらなかった。

(……え?なんで?)

アークスは、驚きと困惑の表情で、目の前で眠るミオと、彼女を守る資材スライムたちを見つめていた。

ミオの『究極の生産』能力は、眠っている間も、密かに活動を続けていたんやな。

資材スライムたちは、アークスの破壊の魔力をモグモグと吸収し、それを分解しているようだった。

アークスの顔に、焦りの色が浮かぶ。

「ま、まさか……あの粘液が……!?」

彼は、信じられないといった様子で、スライムたちを睨みつけた。


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次回予告


まさかの転生者アークスとの出会いで、うちの能力の秘密が明らかに!?

アークスの破壊の力と、うちの生産の力は、一体どうなるんやろか!?

そして、眠気に襲われても、資材スライムはんたちがうちを守ってくれるんやろか!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第32話 理念の対立?お菓子で和解!


お楽しみに!

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