第17話 対立する勢力と技術の応用

『生産型移動要塞『フロンティア号』』の建設は、順調に進んどったわ。

ミオの工房が持つ最高の快適さに、ルナリア姫もリリアーナ王女もすっかり馴染んで、毎日工房に遊びに来てくれる。

二人の姫様は、資材スライムと遊んだり、ミオの作る絶品スイーツを頬張ったり。

「ミオよ!この『魔力アップルパイ』は、私の次元を歪ませる!」

「ミオ殿の工房は、まるで夢のようですわ……」

そんな二人の笑顔を見るたび、ミオは「まあ、ええか」って、引きこもりライフが遠のくことにも納得しつつあったんや。


ドワーフの熟練職人、ゴルムはんも、工房の常連や。

資材スライムが素材を精錬する様子を見ては、「なんじゃと!?このぷるぷるした軟弱な生き物が、儂の鍛冶場より効率的じゃと!?ぐぬぬ……」って、毎日頭を抱えとる。

エルフの学者エリアスも、工房の技術に興味津々で、毎日何かの研究に没頭しとった。資材スライムが運んでくる珍しい古代の素材に目を輝かせとる。


そんな工房の賑やかさに、王都の保守的な勢力が、目をつけ始めたんや。

特に、王都の魔術師ギルド「アークタワー」は、ミオの能力を危険視しとった。

「あのような得体の知れない魔法使いが、王都で自由に生産を行うなど、あってはならん!魔術の秩序が乱れる!」

アークタワーのギルド長、ゾルタンは、ミオの工房を目の敵にしとる。

ゾルタンは、魔法の歴史と伝統を重んじる、堅物でプライドが高い男や。

彼の目には、ミオの生産する魔導具が、魔術師たちが何十年もかけて築き上げてきた秩序を、根底から揺るがすものに見えとった。


ある日の午後。

工房に、アークタワーからの一団が、ぞろぞろとやってきた。

リーダー格は、いかにも高位の魔術師といった風体の男や。

彼らは、ミオの工房が国の魔力資源を過剰に消費しとるとか、既存の生産者を脅かしとるとか、色々な難癖をつけてくる。

「失礼ながら、ミオ殿。そなたの工房は、あまりにも規格外すぎる。このままでは、王都の魔力バランスが崩壊しかねない!」

彼らの声には、明確な敵意が込められている。

「それに、そなたのせいで、多くの職人が職を失うているのだぞ!既存の職人たちが、そなたの魔法のような生産には到底敵わぬと、嘆き悲しんでおるのだ!」

そんな言葉に、ミオは首を傾げた。

(えぇ~?だって、便利やん?誰も困ってへんと思うんやけどなぁ……。それに、職人さんたちも、うちのアイテムで新しい仕事見つけられるんちゃうん?)

ミオは、資材スライムが運び込んできた、輝光石の残骸をモフモフしながら考える。

「ぷるる~?」

スライムが、心配そうにミオを見上げた。


「もし、魔力消費が気になるのやったら、うち、効率のええ魔力炉、作ってみよか?」

ミオがそう言うと、アークタワーの使者たちは、ギョッとした顔をした。

「魔力炉?それが、そなたに作れるとでも!?」

王都では、魔力炉の効率化は長年の課題やったんや。多くの魔術師たちが研究に没頭し、多大な予算を投入しても、ほんのわずかな改善しかできていなかった。それが、彼らのプライドでもあったんや。

ミオは、資材スライムに指示を出す。

「ほな、スライムはん、この輝光石の残骸、モグモグしといてな。最高の純度で頼むでー!」

水色のスライムたちが「ぷるるるーっ!」と嬉しそうに輝光石をモグモグと食べ始めた。

輝光石は、スライムの体内で、みるみるうちに輝きを増しながら、精錬されていく。

そして、ミオの前に、まばゆい光を放つ、完璧な純度の輝光石の塊を吐き出した。

ミオは、その輝光石を手に取り、集中する。

脳内で、高効率魔力炉の設計図が瞬時に組み上がっていく。

魔力を込める。

その場で、小型ながらも高効率な魔力炉をサクッと生産した。

その魔力炉は、アークタワーの主力魔力炉の半分以下の魔力で、同じ出力を出せる優れものやった。

使者たちは、その魔力炉を見て、驚愕した。彼らの顔は、絶望と混乱で真っ青や。

「な、なんという……!これほどの技術、我らがギルドの宝具をもってしても……」


後日、アークタワーのギルド長ゾルタンのもとに、ミオが送った魔力炉の報告書が届いた。

ゾルタンは、報告書を読み終えると、頭を抱える。彼の顔は、怒りと、そして隠しきれないほどの驚きで歪んでいた。

「ば、馬鹿な!これほどの効率……!何十年も研究してきた我がギルドの技術が、一介の娘に……!これは、もはや秩序の破壊だ!」

ゾルタンは、激怒する。ミオの存在が、彼らの築き上げてきた全てを無にするように感じられたんや。

しかし、王都の魔力供給問題は日増しに深刻になっていた。ゾルタンは、苦渋の決断を迫られる。

結局、アークタワーは、ミオの魔力炉の技術を導入せざるを得んかった。

王都の魔力供給問題は、あっさり解決。

「まあ、便利になったんなら、ええか!」

ミオは、そう言って、またふかふかソファで資材スライムをモフモフしていた。


アークタワー以外の旧態依然とした貴族たちも、ミオの工房に難癖をつけてきたんや。

彼らは、ミオの農具が従来の農業を破壊していると主張し、農奴たちの仕事が奪われていると騒ぎ立てた。

「そなたのせいで、多くの農奴が職を失い、飢えているのだぞ!」

だが、ミオはそんな彼らの主張にも、サクッと対応した。

「えぇ~?じゃあ、うちの農具使えば、もっと広い畑を少ない人数で耕せるようになるし、その浮いた労働力で、新しい特産品作ったらええんちゃうの?あ、そうそう、ちょうどいい野菜の種、ありますけど?」

ミオが、アイテムボックスから前世の知識を応用した『超成長野菜の種』をポロンと出すと、貴族たちは目を丸くした。

その種から育つ野菜は、栄養価が高く、保存も効くため、すぐに王都の新たな特産品となった。

慢性的な食料不足の問題も、あっさり解決。

貴族たちは、呆れつつも感謝の言葉を述べた。

ミオは、問題を解決するたびに、報酬として珍しい素材をもらって、資材スライムたちの餌にするんや。

工房は、王都の技術と、異世界の問題をサクッと解決する、中心地となっていったんやな。

王都の職人たちの間では、ミオの作ったアイテムの噂が都市伝説のように語られるようになった。

「聞いたか?眠りの魔女の作ったハンマーは、どんな硬い鉱石も、豆腐みたいに砕けるらしいぞ」

「あそこの工房の娘さん、寝ながらでも国を救えるらしいで?」

そんな噂を、ミオは知る由もなかったんやけどな。


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次回予告


超巨大移動要塞『フロンティア号』の建設が、いよいよ終盤に差し掛かったで!

完成披露パーティーには、王族も魔族も、みんな集まってくるんやろか!?

うちのチート生産の集大成、果たして無事に完成するんやろか!?

そして、完成したフロンティア号で、どんな冒険が待ってるんやろ!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第18話 完成!『ミオの動く工房』


お楽しみに!

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