「あまがみのみこと」

@amagaminomikoto2

第一章:小さな奇跡の始まり

その夜、部屋には静けさの中に、小さな女の子の苦しげな泣き声だけが響いていた。二歳の小さな体は熱にうなされ、真っ赤な顔で涙を流し続けている。あまがみは、その子の頭を優しく撫でた。普段から子どもと過ごす時間は好きだったが、こんなにも小さな命が苦しんでいるのを見るのは、ただただ胸が締め付けられるようだった。「どうか、この子の痛みが和らぎますように」。そう願いながら、あまがみは優しい子守唄を口ずさみ始めた。


「おやすみなさい~おやすみなさい~嫌な事はお忘れなさい~」。


彼女の歌声が部屋に満ちると、不思議なことに、周りの空気がじんわりと温かくなった。月の光が差し込む窓辺が、柔らかな金色の光に淡く輝き始める。その温かい光は、泣き続ける女の子の小さな体を、ゆっくりと優しく包み込んだ。するとどうだろう、苦痛に歪んでいた口元がほんの少し緩み、きつく閉ざされていた瞼がゆるやかに閉じていく。やがて、すーっと穏やかな寝息が聞こえ始めた。


歌い終えたあまがみは、ほっと息をついた。しかし、同時に全身から力が抜けていくような、不思議な感覚に襲われた。まるで自分の体の一部が、歌声となって子どもの中へ流れ出したかのような、どこか空っぽになったような感覚だった。それでも、安らかに眠る女の子の寝顔を見て、あまがみの心は温かい光で満たされていた。

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