1億円貯めてFIREしたら、初日に死んで15歳に戻った件 〜タイムリープして人生2周目無双確定だと思ったら魔女からチート禁止令が出て終了〜

@routine_otoko

エピソード1:FIREで金融資産1億円突破して会社辞めたけど、初日に事故って死にかけてる件

俺の名前は輪島未来(みくる)、40歳。


つい先日までドラッグストアの店長として、朝から晩までレジ打ちと棚卸しに追われていた。

だが――今日、ようやくその生活から解放された。


長かった。

15年以上にわたる節約と投資の成果、金融資産1億円を達成して、ついにFIRE(経済的自立&早期退職)を実現したのだ。


退職届を出し、有休を使い切り、今日――2025年8月31日が、俺の「自由初日」になるはずだった。


……だった。


今、俺は道端で血を流している。

店の駐車場から帰ろうとしたそのとき、猛スピードのトラックに撥ねられた。

空がぐるりと回って、地面が近づいた。

おそらく、もうすぐ意識がなくなる。


走馬灯、ってほんとにあるんだな。


県内の中堅公立高校を卒業し、Fラン大学で4年を過ごす。

就活は全滅。大手企業はどこも門前払い。


結果的に、バイトしていたドラッグストアに拾われる形でそのまま就職した。

今でこそチェーン展開している「薬のヤスダ」も、当時は数店舗しかないローカル企業だった。


無職にならずに済んだことで安心していたが、そこからが地獄の始まりだった。


毎月のように、売上未達分を自腹で“補填”。

化粧品やドリンク剤をノルマのために自分で買い、気づけば俺の軽自動車は“営業車”のように商品であふれていた。

冗談抜きで、車のトランクには資◯堂やカネ◯ウが常駐してた。


25歳で店長になったが、上を目指す気も起きなかった。

その頃、本屋で見かけた一冊の投資本がきっかけで人生が変わり始める。


父親から「投資だけはやるな」と口酸っぱく言われて育った。

父は株で失敗していた。

でも調べていくうちにわかったのは――親父がやってたのは個別株だったということ。


なら、俺は“もっと堅実なやり方”を選ぶ。


そうして始めたのが、米国の代表的な株価指数「S&P500」に連動した投資信託の積立だった。

毎月15万円。

収入のほとんどをそこに注ぎ込んだ。


結婚もせず、家賃3万円台のアパートに住み、休日は自炊と読書と筋トレ。

車は必要最低限の移動手段。

遊びは図書館とウォーキング。

趣味は「口座残高を見ること」。


S&P500はその後順調に伸び、2025年、ついに俺の資産は1億円を超えた。


だからこそ、今日という日は特別な“解放日”になるはずだった。


薬のヤスダからの完全離脱。

社畜生活の卒業式。


ところが、だ。


駐車場に向かう途中でトラックに撥ねられた。

意識が遠のく中、俺は思った。


「FIRE生活、1日ももたなかったな……」

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