きいろのともだち
小阪ノリタカ
きいろのともだち(ぬいぐるみ)
むかしむかし、といっても、そう遠くない、とあるおうちに――
タクミという、くまのぬいぐるみがすんでいました。
タクミには、大切なともだちがいました。
それは、黄色い犬のぬいぐるみ、ポコ。
ぴょこんとした耳と、くねくねとしたしっぽがじまんです。
ポコは、げんきいっぱい。
飛んだり、はねたり、ころげまわったり。
子どもたちに遊ばれて、笑われて、だっこされて、そして、またあそばれて……
気がつけば、ポコの
中のわたが、ひょっこり顔をのぞかせています。
それでも、ポコはなにも言いません。
「なおして」なんて、ひとことも言わないのです。
だって、ポコは――さみしがりやだから。
ある日、本棚の前にポコがちょこんと座っていました。
だまって、うつむいて。
そこへ、タクミがやってきて、ポコの肩にやさしく手をのせました。
「……ポコ、お前はこの家で、
一番大事な『きいろのともだち』なんだよ。」
そのことばに、ポコはびっくりしました。
そして、ほんのすこしだけ、体がふるえました。
タクミは、小さな裁縫箱を取り出しました。
やわらかい針、やさしい糸、そして、ともだちを思うこころ。
ちくちく、ちくちく――
夜がふけるまで、タクミはポコの背中をなおしました。
さいごに、タクミはそっとささやきました。
「これで、また一緒にあそべるね」
ポコはくるっとふりむき、にっこりと笑いました。
破れていた背中には、やさしいきいろの糸が、ぬくもりをつないでいました。
それからも、ふたりはいつもいっしょ。
本をいっしょによんだり、時にはかたりあったり、ただ、見守ったり。
ぬいぐるみたちの時間は、ゆっくりと、やさしく流れていくのです。
きいろのともだち 小阪ノリタカ @noritaka1103
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