女郎蜘蛛

張られた絹の縮面。

暗がり光るその八つ目。

流した胃液と溶ろける身体の内の汁。

転がる髑髏に舌ねぶり。


夜露に着飾る黄金糸

漂う酸の香水は

毒も滴るいい女。


みはる程の妖艶に

誘われるがままにいざなわれ

とうとう絡め取らるるも

甘さに痺れる脳髄は

這い出すことも叶わずに

煙に巻かれ糸の繭。

吊られた金の絹衣きぬころも


スラリと長い八つ脚に

着慣れた縞の振袖で。

色は山吹やまぶき紺鉄こんてつ

帯は紅の差し色で

しっとり艷めく絹の肌。


囲め囲めと寄られよや。

気づけどあとの祭りよや。

獲物は皆も吊られよや。


噂に流るる絹罠の

鬼と名高きかの姫は

上臈じょうろうと名付けの女郎蜘蛛。






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月光蝶 @lulibitaki-001

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