Day20 包み紙

 母はコンビニの箸でもレジ袋でもなんでも取っておく人で、それでいて、突然断捨離を始めて全部捨てる人だ。


 その母が、きれいに折りたたまれた包み紙を畳の上に並べ、向き合っていた。そばにはゴミ袋が広げてある。娘の私は、ああ次は包み紙を捨てるんだなと思った。


「あれ、この模様見たことがある」


 オレンジ色と黄色のL字型を組み合わせたようなパターンが並ぶ白い包み紙に触れる。つるつるした感触が、茫洋とした記憶から思い出を連れてくる。


「そう、これ、駅前のデパートの」


「ああ、とっくに閉店した」


「覚えてない? あのデパートで、法事の帰り、家族みんなでソフトクリーム食べたの。懐かしいわあ。あんたがソフトこぼして泣いて」


 うっとりと思い返しながら、母は燃えるゴミの袋に包み紙をざくざくと掻き込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る