第2話  「痛ってー!、痛い痛い!、痛たたー!」

 無遠慮に叩き付ける雨の中を走り続ける…

(´;ω;`)ウゥゥ


 ヘルメットの中で大声上げながら無遠慮に叩き付ける雨の中を走り続ける。

「痛ってー!、痛い痛い!、痛たたー!」

 若しかして転倒したのかコイツ?、そう思われても仕方ないのだが転倒した訳でも怪我した訳でも無く、内海の海岸線をくねくねと曲がる国道に沿って自宅へ向かう帰り道の途中です。


 現在進行中で左半身に一定のリズム襲い掛かって来る外的要因の痛みに耐えながら自宅へ向かってる最中です、スクーターより加速も最高速も悪い小さなYAMAHA製GR50に乗り学校から帰宅の途上の出来事なんです、既に着ている雨合羽はとっくに機能しておらず、制服はおろか下着までずぶ濡れ状態に為ってる、今はいつもの年より少し早く然も此処へ直撃コースに載り此方に向かって来る普・通・の台風の中を走ってるんですよね…。 


 何で台風の中を?、と思われてもしょうが無いんですが学校も終わり自宅に帰るのんだが、未だ大分沖合ですが既に影響が出始めたばかり何で、此方に接近中して来る台風の雨の中を走ってるんです。


 でも何で痛いの?、と思いますよね…。


 まぁ信じられないとは思いますが、凪の時は海水面が此の国道より2メートル程下なんですが、台風本体は沖合で未だ遠くても畝って時化の海だと引いては打ち寄せてる波は此の国道沿いの護岸に打ち上げ、今俺が走ってる車道より3メートルを超えて波が打ち上げる、然も海岸に有る小石を抱き込み石礫の様に波諸共狙った様に襲って来るんですよね…、オマケで車道にも其の小石がバラ撒かれてるんです。


 余談ですが今はその海岸線の旧国道は使われておらず、グー〇ルマップで確認するともっと内陸寄りにトンネルが貫通されて居て、そんな時化た海でも波を被る海岸線を通らずに車両が安全に通り抜けられる様に為ってます。

「安全!、快適!、然も直線的に短時間!」

 ホントに便利に成ったもんですね…。


 あの海岸線の出来事は今では俺の記憶の中にだけ存在する物に為って仕舞った、勿論今も其処で暮らす人々には悪天候の中でも移動や避難が出来る様に成り、切実な問題が解決されて喜ばしい事です、当時は海岸線に沿い曲りくねり乍ら走るしか選択肢は無かった、四半世紀以上の遠い過去の記憶の一部なのだと深く感じますね…。


 その海岸線の国道は2~30m位毎に飛び出た岩肌を貫通させて道が通り、海が大時化の時はその岩礁の陰に退避し波を避け、波のタイミングに合わせてスタート、加速、停止を繰り返し、登校と帰宅をしたものです。


 大時化では大波、中波、小波のパターンで波が車道まで襲って来ます、小波は水飛沫水しぶきだけなので、大波が襲ったタイミングで加速、次の岩陰を目指しフル加速するのですが、如何せん鈍足のGR50では其処まで届かず中波以降の浪の被害を受ける、其れで間に合わずに波と石礫の直撃を受けて…。

「痛ってー!、痛い痛いたたー!」と為って仕舞うんですね。

 さて話を少し戻しましょうかね前回の続きまで…。


 衝撃のRZ50を見た時に感じた事を実際に体感する事に為る、その3日後に中間試験で部活も無くて負けっぱなしのスクーターの主と衝撃を受けたRZ50の主との3人で途中まで帰る事に為る、校門を出て其の先の直線で奴らが全開加速して行く、勿論の俺のGR50じゃ遅くて置いてきぼりを食らってしまうがあんなに速いと思っていたスクーター<リード>が全く追い付けない、嫌、置いて行かれてる、まるでリードと俺のGR50の時の様に…。

「嘘だろ?、どんだけ速ェーんだよあのRZって?」ヘルメットの中で言葉が零れてた。


 其々帰る自宅の方角が違うから各自の自宅への分岐点に遅れて到着、其処に先行した二台が俺の到着を待っていた、漸くそこに追い付き声を掛ける。


「其のバイクってすげー速ェ~んだ!」

 そう伝えたんだが又次の衝撃が俺を襲う。

「お前遅すぎだ!、お前のそのGR50ってカフェレーサーで此のRZの兄貴分なんだぞ!」

 バイクの事を全く知らない俺にカフェレーサーって言われても何の事?、と思っている俺に畳みかける様に続けて言って来る。


「そのシートのサイドにゼッケンプレート付いてるだろ!」

 矢継ぎ早に次々と声を掛けて来る。

「そのゼッケンプレートがレーサーの証だ!」

 何の事何だ、確かに何か車のレースでも出場ナンバーが入ってるけど?、是って其れと同じ物なのか?。

 (・・?

「是のバイクが…?」

 (◎_◎;)?

 そして決定的な一言が投げかけられる。


「そんなに遅いバイクじゃ無い!、絶対何処か壊れているか故障しているはずだ!、必ず修理屋に見てもらえ!」

 此のバイクってコレが当たり前じゃ無いのか?。


 そう言い残してRZの主は走り去る、リードの主も気まずそう俺を見て走り去る、俺は理解出来ずに暫くGR50を見つめていた、気を取り直し自宅へ向け走り出したのだが頭の中はRZの主が俺に向けて言っていた言葉がリフレインする。

「お前遅すぎだ!、お前のそのGR50ってカフェレーサーで此のRZの兄貴分なんだぞ!」


 何度も何度も。

「そんなに遅いバイクじゃ無い!、絶対何処か壊れているか故障しているはずだ!、必ず修理屋に見てもらえ!」

 その言葉が頭の中をリフレインし続け、気が付くと俺は自宅の前に到着していた。


 試験も終わり次の休日に中坊の時の同級生に話が有ると言われ、そいつの家に遊びがてら向かうと其処に居た奴の親父さんが俺に声を掛けてきた。

「その単車走らないだろ、音がおかしいぞ!」

 と言われる、此れで漸く俺が理解出来ずに居た謎が判明するのか?。

(・・?



 まるっきりのシロートのバイク乗りが段々とバイク好きに少しずつ変わっていきます、そして何時の間にか上京を目指す事に為る、その切っ掛けが此処から始ります。


 お頭が足りない、顔も不細工、其の上要領も悪いと来てモテる要素の欠片も無い、然も運も悪いと来てる、如何なる事やら…。

┐(´д`)┌ヤレヤレ

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