TS転生創造神が世界と一緒にカードゲームを作って広めました
稲光結音
01プロローグからチュートリアルまで
カードゲームは、好きですか?
目の前の女がそう問いかけてきた。すげえ爆乳の女だ。
ここはどこだろうとか疑問はあるが俺は話の早い男。ゆえにこう答える。
「まあそこそこにですかね」
すると女は笑う。
「充分です。あなたは【主人公】に選ばれました。カードゲーム世界であなたは生きていく事になります」
「なるほど」
話の早い男なので疑問などは挟まない。異世界転生ってやつなのも大体分かる。え、俺死んだの? とか思うがあえて口に出したりはしない。それが生きるコツってやつだ。もう死んでたわ、多分。
「それでチートを一つ差し上げる事が出来ますが何か欲しいものがあれば言ってみてください。考慮しますよ。なんなら女の子にしてあげる事も出来ますよ。オススメです」
オススメは貰っておく流儀だけど、ここは流石に慎重に行く。カードゲームの世界に行くならなんかカード関係の能力がいい。
「そういうのよりカード生成とかできません?」
「それは神の御業。好きに作られると困りますね。でも一年に一回、世界に存在するカードという縛りならいいですよ。誕生日プレゼントくらいの気持ちでいてくれれば」
「ありがとうございます。他に何か知っておくべきことは?」
「そうですねえ。あなたの活躍は地球でもアニメとして配信されるので、見られて恥ずかしい行いはしない方がいいです」
アニメ化するのか……俺が。
「分かりました。じゃあそんな感じで」
俺がそう言うと、目の前の女は困惑顔。
「あの、もうちょっと背景とか気にしません? 私女神なんですけど、元々地球にいた一般男性で、転生したら創造神だったので女神として世界を作りつつカードゲームを授けたんですよ」
「すごいですね」
「でしょう? で、世界もだいぶ安定してきたので地球人にちょっと世界を楽しんでもらってみたいなって」
「なるほど」
「それであなたを異世界転生させることにしたんですが、地球の管理者との交渉の結果、それをアニメとして放送するのが転生者をこっちに連れてくる条件だったわけです」
だいたい分かった。なんで俺なんだろうと思うんだが俺は話の早い男。疑問は心の内に秘めておく。
「分かりました女神様」
「じゃあ頑張ってくださいね。主人公は大変かもしれませんが、カードゲームが好きなら悪くない生活だと思いますよ」
女神がそう言うと、視界が暗転した。
◆
目を開くとそこは病院だった。
誰もいない。自分の身体を見る。子供の身体だ。小学生高学年……くらいだろうか。分からん。子供の頃の成長とかよく覚えてない。でもクソガキってほどの身体じゃないと思う。
情報が足りない時に一人でだらだらしてても無駄。二度寝させてもらおう。すやあ。
で、結局。二度寝から目覚めたら看護師さんが検診に来てて慌てて家族を呼びに行った。そんで思った。別に二度寝しなくてもナースコールすればよかったじゃん、と。
それはそれとして今生の家族とご対面。したのはいいがまったく知らん白衣の男女がやってきた。こういうのって身体が覚えてるとかじゃないの?
「エイト、身体は大丈夫か? すまないなパパの実験に付き合わせたばっかりに」
ほう、俺はエイトというのか。流れ的にたぶんそう、おそらくそう、部分的にそう。
「ママもパパをちゃんと見てなかったから……ごめんね」
そう言って心配そうにこちらを見る女性。まあ、恐らく母親。
「ごめんはこっちの台詞だよ。悪いけど、何も覚えてない。その実験ってやつも、二人の事も、なんなら何もかも」
「そんな!」
「なんだって!?」
記憶喪失か……と顔を抑えて溜め息を吐く父。すまない、本当にすまないが実際のところは転生者だから何も知らないだけなんだ。
「まあ別に気にして無いからさ。二人が嫌じゃなければ色々また教えてよ」
「我が息子ながら大物……やはり天才か」
「天才といえば、【人魔天機】の事は覚えてるわよね?」
「なにそれ」
まったく分からん。しかも、なんなら二人の事覚えてないって言った時より驚いてる、なんなら絶句。
「【人魔天機】は創造神の与えしカードの総称。これを六十枚揃えてデッキとし、対戦する。その結果は奉納され、勝者の言葉は何よりも優先される」
「とはいえ、あまりにも理不尽な要求を行うと、神の裁きを受ける事になるのよ。決闘を冒涜した罪でね」
ああ、カードゲームの事だったのか。てか何が起こるんだ神の裁き。というか普通に神の存在が信じられてる感じの世界観なのね。そりゃカードゲーム普及させたのが女神本人っぽいし当然か。
「お前はこの【人魔天機】の天才だ」
「デッキ構築から戦略まで、小学生とは思えない才覚を見せていたの」
「だがそれも、忘れてしまったんだな……パパのせいだ」
違います。一般異世界転生者のせいです。というかそもそも。
「パパは結局、何やったの?」
そう言うと、父は気まずそうに呟いた。
「カードを作ろうとした」
「?」
俺は首を傾げた。開発チームって事? それとも偽造?
「ああ、そうか。記憶が無いから分からないか。カードを作るっていうのは創造神のみに許された行為なんだ。パパはそれに挑んだ。結果は……散々さ。お前を失ってしまうところだった」
「生きていてくれるだけでも本当によかったわ」
「お前が作っていたデッキも初期化されてしまったが、また一からやり直そう」
デッキの初期化? もしかしてそれが神の裁き? カードゲーム世界って言ってたからね女神様。結構重い罰かも。
「あの……」
びくっとした。俺と父と母のいる病室に。
いつの間にかもう一人いた。
前髪が長くて、瞳が完全に隠れている女の子だ。影が薄い。いつからいたんだ?
「エイトくん、私の事も忘れちゃったよね。私は陰。緋色、陰」
「ああ、そうだね忘れてる。ごめんね」
「ううん、いいよ。それよりデュエルのやり方は覚えてる?」
「いや、まったく」
「そっか。じゃあ、デュエルしよう。私が教えてあげる」
彼女がそう言うと、両親はぱぁっと明るくなった。
「それはいい! エイト、教えてもらいなさい!」
「そうね! 陰ちゃんなら安心よ!」
「任せて、ください……」
そう言うと、彼女はスマホを取り出すと、それを左腕につけた機械に装着した。
同じ機械がテーブルの上に置いてある。スマホもある。俺は彼女と同じように左腕にそれを装着した。
「じゃあ私達は邪魔になるからこの辺で」
そういって両親は病室から退室していった。
『デュエルモードセット』
俺と彼女のスマホから機械音声が流れる。
「チュートリアル、たくさんしたから……覚えてる。まずはスマートフォンを操作して、『ビリビリ神』を切札ゾーンってところに置いて」
「ああ、分かった」
「切札ゾーンにはデュエル開始時に五枚までカードを置いておけるの。とある条件を満たした時。そこから好きなカードを引ける、よ……」
へぇ、ってことは切札が引けない試合が無いと考えていいのかな。
「次に、デッキの上から十枚を障壁ゾーンに。これが体力で、破壊されると手札に加わるの。ゼロ枚の時にユニットの攻撃を食らうと負け。その攻撃をフィニッシュっていうの」
「うん」
「スマートフォンを触って、デッキからカードを六枚引いて。それが初期手札の枚数だよ」
スマホ画面をスワイプすると、目の前にカードが展開される。
「これで準備完了。いくよ……」
「「デュエル!」」
「私の、ターン……ドローフェイズ。ターンの開始時、デッキの一番上からカードを引くよ。(手札6→7)上限は十枚だから気を付けてね。それ以上引いても消えちゃうから。
続いてメモリフェイズ。手札一枚をメモリゾーンに置くよ。このメモリには表と裏の二種類があるの。表メモリは裏メモリの代わりにもできる。裏メモリは表メモリの代わりには出来ないけど、代わりに裏向きで置いた時は一枚、山札の上からカードを引ける。追加ドローだね」
俺は目の前に投影された手札六枚を見る。どれも表メモリを必要とするものばかりだ。
種別『名前』 表コスト-裏コスト 攻撃力/防御力 効果
魔『襲い掛かるゴブリン』 1-0 1/1 速攻
魔『襲い掛かるゴブリン』 1-0 1/1 速攻
人『武器商人』 2-0 2/2 遺言=一枚ドローする
人『狙撃兵』 2-0 2/2 出撃=相手の障壁を一枚破壊する。それは反発しない
機『鉄のスナイパー』 3-1 4/3 射撃2
『薬草』 1-0 アイテム 消耗1 効果発動により消耗。自分のユニットが破壊されたとき、破壊されなかったことにする。防御力は1になる
なるほど表メモリで展開していくのが基本だが、それだと手札の消費が激しい。それを裏メモリで補うのか。
「私はメモリを一枚、表向きに置いて(手札7→6)(メモリ1-0)、メインフェイズ。武装する民(1/1)を召喚(手札6→5)。
メインフェイズはこうやって、メモリを消費してユニットを出したりするの。あとは戦闘もできるけど……召喚したターンは基本的には攻撃できないから、私のターンは終了。
エンドフェイズ。ターン終了時に消える効果があったりしたらこのタイミングで消えて、あとは相手のターンになるよ」
「分かった。じゃあ俺のターン、ドロー!(手札6→7)」
『ファイヤボール』 2-0 スペル 相手の障壁を一枚破壊。一枚ドロー
「俺は表メモリを一枚セット(手札7→6)(メモリ1-0)、襲い掛かるゴブリンを召喚!(手札6→5)」
「そのユニットは速攻を持ってるから場に出たターンから攻撃できるよ。速攻は相手プレイヤーも相手ユニットも選べて、突撃って効果は場に出たターンに相手ユニットだけ攻撃できるね」
「ならプレイヤーに攻撃! 障壁を一枚破壊する!(陰・障壁10→9)」
「あぅ。でも障壁が破壊された事で障壁になっていたカードが手札に加わる!(手札5→6)」
「これで俺のターンは終了!」
「私のターン! ドロー!(手札6→7) メモリフェイズが来ると使ったメモリは回復するよ。私はメモリを裏向きに置いて一枚ドロー(メモリ1-1)。寡黙な戦士を召喚!(2/2)(手札7→6)前のターンに召喚していた武装する民で襲い掛かるゴブリンに攻撃!」
「お互いスタッツは1/1! 相打ちか!」
「そうだね! ちなみにユニットのダメージはすべて蓄積されて回復しないよ」
食らったら食らいっぱなしってことか……例えば『襲い掛かるゴブリン』(1/1)で『寡黙な戦士』(2/2)を攻撃したら戦士のスタッツはターンを跨いでも2/1になったまま。もう一体ゴブリンを出して攻撃すれば倒せるわけだ。
「えへへ、それじゃあターン終了。エイトくんの番だよ」
「分かった。ドロー!(手札5→6)」
天『見習い守護天使』1-4 1/5 不殺 遮断2 防衛
「表メモリを置いて(手札6→5)(メモリ2-0)、武器商人を召喚! ターンエンド!」
「武器商人は遺言持ちだね。そのユニットが墓地に置かれた時に発動する効果だよ。その子の場合、一枚ドロー。私のターン。ドロー!(手札6→7) ここは……うん。裏メモリをセット(メモリ1-2)。表メモリを使って『武装する民』を召喚! さらに裏メモリを二点消費して『ライトニング』を発動!(手札7→5)」
『ライトニング』 0-2 スペル 反発 相手ユニット一体に2ダメージ
「ライトニングによって武器商人を破壊! スペルは使い切りのカード! 強力だけど一回使ったら消えちゃうの!」
「それなら俺の武器商人の遺言が発動! 一枚ドローする!(手札5→6)」
「続いて寡黙な戦士の攻撃! エイトくんの障壁を攻撃!(エイト・障壁10→9)」
「くっ……いや、なんだ!? 障壁から出てきたライトニングが勝手に発動した!?」
「反発効果……! 障壁になっているカードに反発という能力がついている場合、その障壁を破壊した時コスト無しで発動する」
「それなら俺はライトニングの反発で相手ユニットに2点ダメージ! 障壁を破壊してきた寡黙な戦士を撃破!」
「うぅ……盤面ががら空きに……ターンエンド」
「俺のターン! ドロー!(手札6→7)」
機『鉄のスナイパー』 3-1 4/3 射撃2
「表メモリを置いて(手札6→5)(メモリ3-0)、まずは襲い掛かるゴブリンを召喚!(手札5→4) 速攻を持つ襲い掛かるゴブリンで攻撃!(陰・障壁9→8)(手札5→6)
更に手札からファイヤボールを発動! 障壁を破壊し、さらにワンドロー!(陰・障壁8→7)(手札6→7)ターンエンド」
「私のターン、ドロー。(手札7→8)これだけ手札があればメモリは表でよさそうだね。
メモリを表向きにセット。(メモリ2-2)狙撃兵を召喚!(手札8→7) 出撃効果でエイトくんの障壁を一枚破壊!(エイト・障壁9→8)(手札4→5)この効果で反発効果を持つ障壁を破壊したとしても、それは発動しないよ。そのまま手札に加わるの。それじゃターンエンド」
「俺のターン、ドロー!(手札5→6)メモリを表向きに置いて(メモリ4-0)(手札6→5)こっちも狙撃兵を召喚! しかも二体だ!(手札5→3) 陰の障壁を二枚破壊!(陰・障壁7→5)(手札7→9) さらに襲い掛かるゴブリンで攻撃! さらに障壁をもう一枚破壊!(陰・障壁5→4)(手札9→10)ターンエンド!」
「くぅっ……やっぱりエイトくん強い、ね。私のターン、ドロー……だけど手札は10枚。ドローは出来ずに墓地に置かれるよ。この時もし墓地に置かれたのが遺言効果を持つカードだったとしても、ドローで溢れた時は効果を無効にされて、発動しないの」
「なるほど、手札が上限を超えていいことはないんだな」
「そうだね。メモリを表向きに置いて、(メモリ3-2)鉄のスナイパーを召喚(手札10→8)。このユニットは射撃2を持つよ。効果はシンプル。射撃の後ろに書かれた数字分だけ、相手ユニット一体にダメージを与えるの。だからこれで……エイトくんの場の狙撃兵の一体に2ダメージを与えて破壊! 私の場の狙撃兵で襲い掛かるゴブリンを攻撃!
狙撃兵のスタッツは2/2! 襲い掛かるゴブリンは1/1! 撃破して、狙撃兵はダメージを受ける! ふう……これでまだなんとかなる、かな? エイトくんの場にはまだあと一体狙撃兵がいるけど……仕方ない。ターンエンド」
鉄のスナイパーのスタッツは4/3。こっちも鉄のスナイパーを出しても射撃2だと狙撃兵を犠牲にしないと倒せない……なにかいいカードはこないか?
「俺のターン、ドロー!(手札3→4)」
駄目だ。このカードじゃ勝てない。
「ここはメモリを裏向きにセット!(4-1)一枚ドローする」
ん? これは……?
魔『機械壊しのゴブリン』 2-1 2/3 突撃 機特攻
目の前で実体化されてる鉄のスナイパーは明らかに機械だ。そこに機械壊しときて能力が【機特攻】これは……やってみるか!
「手札から機械壊しのゴブリンを召喚!(手札4→3) 突撃は召喚したターンでも相手ユニットに攻撃できる、だったよな!」
「うん! そして【機特攻】は【種別:機】のユニットに二倍のダメージを与えられるよ!
ユニットの種別は人・魔・天・機の四種類! それぞれ人がバランス型、魔が様々な特殊能力を持っていて天は遮断XっていうXの数までのサイズの射撃を無効にする能力を持ってたり高スタッツ。機は射撃が得意!」
「説明助かるぜ! さあ、攻撃だ! 機械壊しのゴブリン! 鉄のスナイパーに攻撃!」
魔『機械壊しのゴブリン』2/3
VS
機『鉄のスナイパー』4/3
【機特攻】により
魔『機械壊しのゴブリン』4/3
VS
機『鉄のスナイパー』4/3
両者相打ち!
「撃破! よくやってくれた機械壊しのゴブリン! 続いて場に出ていた狙撃兵で相手プレイヤーを攻撃! 障壁を破壊する!(陰・障壁4→3)(手札8→9)
ターンエンド!」
「私のターン! ドロー!(手札9→10) メモリを表向きに置いて……(メモリ4-2)狼男をプレイ!(手札10→9)」
魔『狼男』3-3 6/4 三重殺 射撃弱点
「まず重殺の説明からするね。三重殺は相手プレイヤーに攻撃した時、障壁を三枚破壊できるよ。二重殺なら二枚。四重殺なら四枚みたいになるの。弱点は指定された条件の相手から受けるダメージが二倍。魔弱点のユニットが受けるダメージは、魔種別のユニットからは二倍になるみたいにね。このカードは射撃弱点だから射撃から受けるダメージが二倍だよ」
「一度に複数の障壁を破壊できるユニットか……代わりにデメリット効果も持っている、と」
「そうだね。じゃあ私のダメージを受けている狙撃兵でエイトくんを攻撃!(エイト・障壁8→7)(手札3→4)ターン終了」
「俺のターン、ドロー!(手札4→5)。メモリを表向きに置いて(メモリ5-1)ちょっとこのカードの効果が分からないから教えてくれないか。見習い守護天使を召喚!」
天『見習い守護天使』1-4 1/5 不殺 遮断2 防衛
「うん、いいよ。まず不殺はデメリット効果。相手プレイヤーに攻撃しても障壁を破壊できないし、フィニッシュもできない。フィニッシュは覚えてる? 障壁をすべて破壊して、勝負を決める時の一撃だよ」
「ああ」
「遮断はさっきちらっと話したけど……この効果だと射撃2までの射撃を無効にするよ。射撃3以降は素通しで、軽減とかはされないから気を付けて?
最後に防衛。これがいる限り相手は防衛持ち以外のユニットやプレイヤーを攻撃できないの。盾になってくれる感じだね」
「なるほど、助かるぜ陰!」
「えへへ、このままもう一個説明したい事があるからターン終了して貰っていい?」
「分かったぜ。ターンエンド」
「私のターンドロー、エンド」
何も……しなかった? 説明は?
「俺のターンドロー! メモリを表向きにセット。そして……」
「ここでプロセッサフェイズを宣言して欲しいの」
「ん? 分かった俺はプロセッサフェイズに入る!」
「表メモリと裏メモリを一枚ずつ破棄して」
コスト重いな……それで一体何を。
「プロセッサフェイズを宣言し、表メモリと裏メモリを一枚ずつ破棄した時。切札ゾーンから好きなカードを一枚、手札に加える事ができる!」
なるほど、最初に切札として設定していたのを使うのに必要なのか!
俺はスマホに表示されている切札ゾーンから『ビリビリ神』を手札に加える。
「そしてそれを私に公開して!」
「分かったぜ!」
天『ビリビリ神』2-2 5/5 速攻 二重殺 英雄=自分の場に不殺ユニットが存在する場合、相手の障壁を三枚破壊する 進化=天
「【英雄】効果は切札ゾーンから手札に加わった時、それを公開する事で発動する! 場には不殺効果を持つ見習い守護天使が存在するため、私の障壁が三枚破壊される! これで私の障壁はゼロ!
――さあ、見習い守護天使の上にビリビリ神を重ねて! そうすると、コストを払って進化が発動する!」
「よっしゃあ! いくぜ! 見習い守護天使、進化! ビリビリ神! ビリビリ神は速攻を持つ! 障壁をすべて破壊した相手プレイヤーに攻撃! これで、フィニッシュだぁぁぁ!」
雲に乗って空に浮かぶ雷オヤジが右手の雷マークのついた杖を一度振り下ろすと、陰の頭上から雷が降り注いだ。
――小栗エイトwin
◆
「いやでも助かったよ陰。なんかすごい熱くなってた気がする」
「私も。やっぱりエイトくんと勝負するの楽しい、よ」
「他になんか知っておいた方がいい事とかってある?」
彼女は顎に手を当てると、少し間を置いて答えてくれた。
「場に出せるカードの枚数とかかな。場には五体までのユニットが出せて、メモリは表裏合わせて十枚まで、アイテムカードは一枚。エリアカードはお互い合わせて一枚まで」
「む、知らないカードが出てきたな」
「ふふ、分からない事があったら私に頼ってね」
「助かるよ。というか一ターン放置して勝ちを譲って貰っちゃったしな。決着がついたとは言い難い」
「せ、説明優先だったから……」
「分かってる。それに、デッキも俺に合わせて初期デッキを使ってくれたんだろう?」
「それは、うん」
「まずはデッキの強化からだな」
なにより、俺には一年に一度、この世界に存在するカードを生み出す事ができるというチートがある。この権利、使わない理由がない。
とりあえず一回分の権利があると俺の脳みそが言っている。
「じゃ、じゃあ……退院したらカードショップ一緒にいこ?」
「助かる」
「ふ、ふふ……で、デートだね」
その時は両親からお小遣いを貰っておこう。
「だが、その前に」
「その前に?」
「復習する。時間に余裕があるならもうちょっとルールを確認したい。付き合ってくれ」
「任せ、て」
狭い病室の中では分からない。世界がどのくらいカードゲームに染まっているのか。まだこの時俺は理解していなかった。
世界中のカードプレイヤー。まだ見ぬライバル達。知らないカード。
それらが俺を待っている。
なぜなら俺は異世界転生者。この世界の主人公なのだから。
創造神の女神様、この世界……結構悪くないかもしれないぜ。
前世の分しか記憶はない。ルールはちょっと複雑。デッキは初期からスタート。
ハンデは多数。だが俺には両親がいて、可愛らしいメカクレ少女の友達がいて、そしてチートがある。
いいぜ、やってやる。俺をこの世界に送った女神様。地球で見てるアニメ好き。存分に見るがいいさ。
俺は小栗エイト。元ただのカードゲーム好き。別に強くもなかった。そんな前世だが……今の俺は希望に満ち溢れている。
今はまだ、初心者プレイヤー。
だけど、こうして対戦を重ねていけば、なれるだろう。この世界に相応しい主人公に。
『デュエルモードセット』
その為に、まずは一戦一戦積み重ねていこう。
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