第9話
「去年の試合知らない連中は未だに斗真のことただの士郎さんたちのお気に入りって考えてるし、今日ではっきり分からせればいいじゃん」
「んな連中もうほぼいねぇけどなー」
一年腰巾着やってますからねぇ…
「そんな簡単に言うな」
試合すんのは俺だし、そもそも部が悪いんだって。
「何でもありの喧嘩に俺が勝つこと自体一年前まで考えもしなかったわ」
何も知らない一般人に去年はよくもやってくれたなと、今更ながらに士郎たちを呪う。
そして我ながらよくやったと自分を褒めちぎりたい。
「そんなこと言って斗真、結構余裕で勝ってたじゃん」
虎雅相当悔しがってたよ?と言われ、そう言えば試合したなと去年を思い出す。
めちゃくちゃ睨まれたし、めちゃくちゃナメられたのが懐かしい。
「あれはあっちが余裕ぶっこいてたっていうのも大きいよ」
こんな黒髪のチビが出てくるんだから、そりゃ誰だって油断するわな。
ついでに士郎たちがニヤニヤと面白そうに観戦してたのも思い出して腹が立った。
「まあ誰も斗真が勝つなんて思わないよね」
「見るからにモヤシだもんな」
「おいこら」
誰がモヤシだ。
ちょっと筋肉つきにくいだけじゃ。
「俺らは今年も観戦かー」
がんばってね。と笑われ、適当に返事をする。
そして、前で挨拶する一般クラスの生徒会の人間たちに目を向けた。
話し声が聞こえていたのか、バチッと壇上にいる男と目が合って思わずげっと漏らす。
あれ、会長じゃなかったっけ。
やっべぇ、怒られるやつか?
「そこの生徒。私語は慎むように」とかマイク越しに注意受けたらどうしよう。
なんて頭をよぎったが、そんなことにはならなかった。
なぜなら…
『3年F組代表、東郷士郎(とうごうしろう)』
士郎が壇上に上がり、マイクを握ったから。
ざわり、ホール内が揺れる。
挨拶ごときでこの騒がしようとは、やるなぁうちのボスは。
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