第二章:忍び寄る影
森の奥深く、太陽の光さえ届かぬ岩陰で、
一匹のオオカミが目を覚ましました。
「ぐぅ……腹が減ったな。
冬に入る前に、何か食っておかねぇと……」
鋭い鼻をひくひくと動かし、空気の匂いを探ります。
すると、ふと風に乗って、甘い肉の香りが……。
「おやおや、こりゃあ美味そうな予感がするぞ……!」
オオカミは静かに木々の間を抜け、音もなく歩きはじめました。
その頃、川辺のレンは、ようやく壁の半分を積み終えたところでした。
「あと三列……明日には屋根の骨組みに取りかかれるかな?」
と、そのとき――背筋に寒気が走りました。
風の向こうから、何かが……近づいてくる気配。
「まずい……オオカミだ!」
レンは道具を放り出し、一目散に長男・ポルの家へと駆け出しました。
オオカミは造りかけのレンガの家にたどり着き、クンクンと匂いを嗅ぎました。
「やっぱり…ここにブダが居たな…
逃げたか…でも、まだ近くにいるはずだ…」
オオカミは匂いを頼りにレンを探し始めました。
一方その頃、レンはポルの家に飛び込んでいました。
「ポル兄さん、ポル兄さん!」
「ん? レン? どうしたんだ、そんなに慌てて」
レンは息を切らしながら叫びました。
「オオカミが来たんだ!」
ポルは一瞬たじろぎましたが、すぐに笑ってこう言いました。
「だから言ったじゃないか。
レンガの家なんて時間がかかりすぎるんだよ。
家なんてパパッと作らないと」
「でも……」
少しの間、ポルの家で休んでいたレンでしたが、やがて静かに言いました。
「……もう、オオカミはどこかへ行ったかも。
僕、帰るよ。レンガの家を完成させないと……」
「ったく……ほんと、レンは頑固だなぁ……」
レンを見送ったポルは、ふかふかの藁のベッドにゴロンと寝ころびました。
その背後――
木々の間から、鋭い眼差しが、
じっとポルの家を見つめていることにも気づかずに。
続く~第三章へ~
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