第16話普通の少女桜子、仲を深める。

「それで、わしのとこに来たわけじゃな。、、、いや、大丈夫か?」

「だ、だい、じょう、ぶ、、、じゃ、ないかも、、、」

バタン

「シオンー!」

アキヒメに紹介をうけ、アポを取ってみると、意外にも、オッケーが出たので、次の日、会いに来てみたのだが、、、

シオンが、前、ベニに運ばれてきた私みたいになってしまった。

走っている側はあんまりわかんないもんなんだな。

いつも通り走ってきたけど、やはり、私もあの三人にどんどん近づいているみたいだ。、、、なんか、やだなぁ。

「で、なんで、学園長は、ぬいぐるみの姿なんですか?」

シオンが復活するまでまっていると、一つの疑問が浮かんできた。

こっそりと学園長、、、ぬいぐるみに耳打ちする。耳ここであってるのか?

「だって、わし、小さいじゃろ?舐められたくないし、学園でも、わしの本当の姿を知ってるのは、ごく一部だしのぅ。」

その、ごく一部に私が入ってるのか。たぶん、あの三人と繋がりがあるからだと思うけど、それにしたって、私は知らない方が良かったなぁ。普通じゃないのは、嫌だし。まぁ、もう、手遅れかもしれないけど、、、

「ふぅ、、、ありがとうございます。落ち着きました。」

数分後、やっと、復活したシオンと一緒に学園長に特訓方法を聞いてみた。

「学園長、魔法祭に向けて、私たちは何をどうすればいいのかわからないのです。特訓とは、どんなことをするのですか?」

学園長(ぬいぐるみ)は、考えるような仕草をして、こう答えた。

「まず、魔法祭は、チーム戦じゃ。それを踏まえて自分たちに何が足りないのか。そこが、わからんと話にならん。」

たしかに、アキヒメも、自分の苦手なことを知ることが必要って言ってたしな。

「サクラコくんなんかは、この前の試験で活躍したが、わしにとってはまだまだ、2人ともおんなじひよっこじゃ。2人に限った話ではない。特別クラスの皆は強いものが多いが、なにか、一つ足りないものがある。それがわかれば、魔法祭なんて、チョチョイのちょいじゃ。」

私に足りないもの?そんなものがあるのか?うーん。自分じゃ全然わからん。

隣のシオンを見ると、真剣に学園長の言葉の意味を考えている。

すごいな。シオンは。私は結構不真面目だから、こういう時あんまり深く考えないもんな。

「とりあえず、2人はこれよりもっと、仲を深めてみたらどうじゃ?それが、成功への近道な気がするぞ。」

「わかりました。学園長、ありがとうございます。」

学園長にお礼を言い、私たちは、学園長室を後にした。

帰り道、私はシオンに、これからどうするかを聞いてみた。

「シオン。これからどうする?」

「学園長は、仲を深めるのがいいと言っていましたからね。仲を深めると言っても、、、僕は友達がいなかったので、なんとも、、、」

「私も同じ感じ。どうすればいいのかさっぱりなんだよね。」

「どうしましょう、、、」


「と、言うわけで戻ってまいりました。」

「なにが、と、言うわけ、かは分かりませんがとりあえず、おかえりなさいませ。」

私たちは仲を深めるためにすることがわからないので、いつも、友達、友達、言っているアキヒメのとこに来たのだ。

「アキヒメ、、、さん。仲を深めるって、、、どう、、、すれば、いいですか?」

「なるほど、おばあさまは、仲を深めることをアドバイスしたのですね。」

さすが、アキヒメ!理解が早い!

「仲を深めるには、互いにいつもしていることとか、したいことを一緒にやってみるといいんじゃありませんこと?」

たしかに、それいいかもね。私たちだけじゃ考えられなかった視点かも。

「ありがと。アキヒメ。」

「サクラコさんが、デレましたわ!嬉しいですわ〜!」

アキヒメが満面の笑顔で喜んでいるのはほっといて、さっさと、移動する。

「放置してよかったんですか?」

「んー。多分大丈夫。あ、よいこのみんなは、こういうことは、しないようにね。」

「誰に言ってるんですか?」

「まぁ、いいんだよ。」

シオンが頭にはてなを浮かべてるがまぁ、それは、気にしない。

「アキヒメのアドバイス通り、やってみようよ。ちょうど明日は休みだし。」

「って、言ってもなにするんですか?」

「ふふ。それは明日のお楽しみ。じゃあ、明日、午前8時に校門前に集合ね!いつも通りの私服できてねー。」

「はい、、、はい?朝、8時?!」


次の日

「さてさて、現在時刻午前8時。テンション限界突破っと。」

ワクワクして昨日は寝た。寝れなかったことはなかったが、楽しみすぎてスキップしながら来てしまった。シオンは、どんな感じで来てるかな。

8時ぴったりに学校について、校門前をこっそり覗いてみると、そこには、ワイルドイケメンが立っていた。ごりごりの、パンクファッションをして。

だれ?、、、いや、まじで、誰?!

「シオン?シオンなんだよね?」

「あ!サクラコさん。よかったー。みつけられて。あ、服かわいいですね。なんていうんですっけ、地球の服で、着物?袴でしたっけ。」

「私の私服も、可愛いけど。それよりも、シオンの私服が意外すぎるよ!いや、私服でこいって言ったの私だけど!」

「え?かっこよくないですか?普段は隠してるんですけど、初のクラスメイトとの、お出かけなんで。本気でおしゃれしてきました。かっこいいでしょ。」

「まじイケメン。ヒールがちょーかっこいい。」

シオンの今日のコーデは長い前髪を真ん中でわけて、セットした髪に、バッチリ化粧して、パンク系のファッションに、ヒールを履いている。

控えめに言って綺麗すぎて失神しそう。

「それで、今日はなにをするんですか?」

「おう、いきなり本題にはいるねぇ。今日は!いつも私がしていることをします!」

そう。今日は、私がいつも休みの日にしているルーティーンをシオンと一緒にしようと思ったのだ。1人でも楽しいことだけど2人でやるともっと楽しい。今度、アキヒメも誘ってみるか。

「いつも、何してるんですか?」

「とりあえず、これにのって!」

「これは?」

「シンクに借りた魔法の自転車!」

魔法の自転車にのって空を飛びながら、私たちが向かったのは、子ども達がたくさんいる、公園だった。

「ここは、、、公園?」

「そう!公園!私、公園だいすきなの!」

「でも、僕、ヒールなので、遊べないんですけど、、、」

「大丈夫。私は、いっつも、遊んでるわけじゃないから。そこのベンチにすわろ。ここだと、公園全体が見える。」

私は、休みの日は、いつも、公園で遊んでいる子ども達を見ている。あ、不審者じゃないから、通報しないでね。

私は、友達がいない。と、いうか、できなかったのだ。だから、いつも、遊んでいる子ども達をみて、一緒に遊んでいる気分を味わっていた。

遊んでみたいと思ったことはない。友達もいらない。ただ、暇なのでみていたのだ。

でも、地球も魔球も、おんなじだね。子ども達がとてもイキイキしてて、たのしそう。

「あのこは、よく一番最初につかまるから、スライムくん。あのこは、鬼ごっこ最強の鬼、鬼神ならぬ、きりんちゃん。泥団子を作るのがうまい、団子専門店。なーんて。」

「やってることが、コンビニのバイトと同じですけど楽しそうですね。」

「あの子達の、会話を考えるのも楽しいよ。」

「いいですね。例えばー、、、」

「あはは!面白い!」

そのあとも、いろんな公園を回りながら、遊びまくった。

親が、こいつらなんだ?みたいな、目で見てきたが、まぁ、そこは、いいとして。とにかく、遊びまくった。

次の休みは、シオンの提案で、ウィンドーショッピングとか。服を見まくった。

その次の休みも、なんなら、放課後も遊びまくって、なんなら、アキヒメとかも巻き込んで、遊んだ。そしたら、なにも、特訓をせずに残り二週間で魔法祭というところまできた。

「あー。今日も遊んだね。」

「そうですね。こんなに楽しいのはいつぶりでしょう。最近毎日、遊んでますもんね。」

「そうだねー。」

私はシオンと過ごしてとてもたのしかった。楽しかったし、シオンと過ごして落ち着くので、つい、ぽろっと口から私の昔のことを言ってしまった。

「私さ、存在感がないじゃん?薄いとかじゃなくて、ないの。だから、友達もいない。遊ぶ相手も、相談する人も、頼れる大人もいない。まぁ、友達はいらないんだけど。そんな中で過ごしてきて、どんどん感情が死んでいった。でも、この魔球にきて、ベニ、シンク、アカネ、アキヒメ、シオン、他にもいろんな、普通じゃない人たちに出会って、私の感情が生き返ったの。普通がいいのは、変わらないけど、普通じゃない仲間っていうのも悪くないなって思ったんだ。」

私でも、わからないうちに話していた。話すつもりはなかった、私の本当の気持ち。その気持ちに応えるように、シオンも自分のことを話し始めた。

「僕は、自分の固有魔法が分かりません。」

固有魔法がわからない?使えないってこと?

「使えないのです。みんなは、当たり前のように自分の魔法をもっている。なのに、僕にはない。それが、僕には恥ずかしくて。悲しくて。ずっと、隠してきました。でも、サクラコさん。あなたが自分のことを認めてくれたので、仲良くしてくれたので、友達になってくれたので!サクラコさんが、友達と思ってなくてもいいのです。僕は、僕は自分の秘密を言えました。それだけで、もういいのです。」

それが、シオンの秘密。シオンの足りないこと。かぁ。でも、、、

「私は、そういうことどうでもいいや。シオンはシオンだし。私と話している時のシオンが全てだし。話していて楽しいし。それでいいんだよね。」

そう。それでいいのだ。シオンは、シオンだから。その言葉がシオンには響いたのか、シオンは涙を流しながら何度も何度もお礼を言った。

「ありがとう。ありがとう。」

「いいえ。」

数分後、、、

「落ち着いた?」

「うん。」

涙は、もうすっかり引っ込んだようだ。

「でも、どうしようか。魔法祭まで、残り二週間。」

そう、大きな問題が残っている。魔法祭で私は優勝しなくちゃいけないんだ。

「そうですね。僕は固有魔法が使えませんし、、、」

「そもそもの話、魔法祭って、なにするの?」

特訓、特訓と、言っていたが、根本のところが分かってなかった。学園長は、チーム戦だから、そこを踏まえて、と言っていた。そこに、鍵があるのか?

「魔法祭は、単純な運動神経を競う、運動対決と、頭の回転や知力を競う、クイズ対決、それに、固有魔法で対決する魔法勝負と、武力で対決する武道勝負があります。」

なぜ、ミソラ先生は、私たちをチームにしたのか。あるはずだ、私には敵わない、シオンの特技!

「シオン!運動神経は、いいほう?」

「普通です。なんなら、サクラコさんの方がいいと思います。」

「なら、頭いい?」

「いいえ、普通です。」

「魔法は、、、だめかぁ。」

「そうですね、、、もう僕が出られるのは、、、」

「そうだ!シオン!なにか、武道は、できる?」

「僕は運動神経が皆無なんです。武道、、、武道、、、あ。いや、でも、、、」

なにか、絶対ある。シオンにしかない、特技が!武道勝負で、活躍できるなにかが!

「じ、実は、僕、、、」

「いける!これなら、勝てるかもしれない!」

私はその言葉を聞いて希望が見えたのだった。

「よーし!それじゃあ、これから、特訓だぁ!!」

「お、おー!」










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