桜子ちゃんは普通でいたいのに

猫屋敷めいこ

本編

第1話普通の少女桜子、魔球で起きる。

昔は憧れもあった。

ビームや、パンチで、敵を圧倒し倒す。

そんな魔法戦士に。

けれど、そんなことは所詮は想像上のことで、助けを呼んでも誰も助けてはくれないことがわかった。

私が主人公なら、敵は誰だったのだろう。

両親?同級生?人間?

だが、私は主人公じゃない。

なぜなら、私、伊集院桜子いじゅういんさくらこは、普通だからだ。

「そう。私は普通だ。普通なんだ。」

だから、こんな、こんな、主人公っぽいのはいらないんだ。

「私は普通なんだ!」


両親は私のことを見ていない。

と言うかみんな、私のことが見えていないんだ。

そう思ったのはいつだったか、今は、もう、思い出せない。

両親は私が、生まれてから一度も会いにきていない。

いるのにいない。

それが私だ。

存在感がないとでも言ったらいいのか、、、

とにかく、それが私だ。

だけれど、そんな私のことを見てくれる存在がいた。

それは三匹の猫のシンク、ベニ、アカネ。私が名付けたわけではないが、そう呼んでいる。

なんとなく、そんな気がするからだ。なんとなくって、おかしくない?私もそう思うが実際そうなのだ。しょうがない。

このみんながいるから、私は普通に、生きることができる。

でも、動物が、家族ってちょっとおかしいかもだけど。

いや、そんなでもないか。ペットは家族って言うし。みんなはペットじゃないけど。

まあ、普通だよね。

今日は小学校の卒業式。卒業式、つまんなかった。一緒に泣く友達も先生もいないかった。

どうせ、私のことなんて誰も見てないし。

「無駄な6年だったなぁ。」

私のモットーは眠くなったら寝て、お腹が空いたら食べて、遊びたかったら遊ぶ、普通に生きること。

「普通になりたい、、、」

私は普通に生きるのが一番難しいと思う。

私は今まで生きてきてしみじみとそう感じた。

でも!難しいことだからこそ。私は普通になりたい。そう思う。

私は普通に生きる!と、昨日までは思っていました。

何故、私は今、知らない森にいるのでしょうか。

いや待て、一旦整理しよう。

昨日はまあ、とくに何もなく普通に寝た。

うん。たしかに、家のベットで寝た。

なのに、起きたらここ。

このベットの上で寝てた。

ベット、ふかふかだな。いやいや、違う違う。そう言うこと言ってる場合じゃない。落ち着け〜。私〜。

数分後

ふぅ。よし、落ち着いた。

落ち着いた上で言おう。

「ここどこ?」

えー。

どうしようかな。あ、窓からでられないかな。こう言う時は窓から出るのが漫画の定番つって。

よいしょっと。

窓を開けるとそこは暗黒の森の中でした。

って、冗談じゃない!

本当にやばい。外に出たら一瞬で迷子になってしまう自信がある。

外はやめとこう。

じゃあ、あっちの部屋を見てみるか。

ガタンッ

その時、奥の部屋から不気味な、物音が響いた。

びくっ

思わず、びくっとしちゃったよ。

まさか、幽霊?!

怖いなぁ。いや?うーん。

うん。怖いって言ってみたけど、別に怖くないかも。

幽霊なんているわけないし。

「そういえば、私怖いって思ったことなかった。」

うん。こういうところは勢いが大事だよね。

よーし!

「突撃ぃ〜!!」

バーン!

私が勢いよくドアを開けるとちょうどドアの前にいたであろう人が悲鳴をあげた。

「ぎにゃっ!」

「やべっ!」

見事に私が開けたドアに潰されている。起き上がらないな。

えーっと、これ、私のせいだよな。

とりあえず謝っとくか。

「えーっと、すみませ〜ん。大丈夫ですか?」

よくよく、見ると、そこにはとてもとてもイケメンな男の子がいた。

まあ、でも、また、無視されるんだろうなぁ。

どうせ見えないし。

でも、この人ほんとイケメンだな。よく、目に焼き付けておこ。

私がじーっと、見ていると、、、

「桜子!何するんだ!いてぇじゃねぇか!」

突然、ガバッと起き上がって、叫びながらそう言った。

「え、私のこと知ってるの?」

て、いうか、見えてる?

まさか、まさか、ついに私に存在感がついたのか?

いやっほぅ!

「知ってるも、なにも、いつも一緒にいるじゃねぇか。なにいってんだ?俺だよ俺!」

え?新手のオレオレ詐欺?

そういうのは間に合ってるんですけど。

でも、なんか、見たことあるような、、、?

「あー。この姿では、初めましてだな。わかるわけないか。俺だよ、ベニだよ。」

ベニと、名乗る男が自分を指差して自慢げに言った。

「えぇ!ベニなの?」

ベニという知り合いは、私の家族のベニしか知らない。

でも、この生意気そうな目。で、偉そうな性格は、確かにベニだ。

へぇ、ベニ、こんなに、イケメンなんだ。

猫の時から生意気だとおもってたけど、なんか、実際喋ってみるとイケメンすぎて、胸焼けがしてくるな。

うえぇ、、、

「そうだ!どうだ!イケメンで目が潰れるだろ!」

「そうですねー。」

「何故棒読みなんだ?」

たのしそうなベニとは対照的に落ち込んでしまう。

ベニだったから、私のことがわかったのか。そうか、私に存在感がついたわけじゃないのか。

はぁ、、、ガックリと肩を落とす。

が、ベニは微塵も気にせず自分のかっこよさについて語っている。

まぁ、気にしても仕方がないか。

さっさと、この状況を説明してもらおう。

さっきから、そこで、ふんぞりかえってるベニにやってもらうか?

いやでも、ベニがいるってことは、、、

「ベニ、桜子さんは、起きましたか?」

「さくちゃーん!おっはよー!」

バーンと勢いよく扉が開き二人の人が入ってきた。

うわっ、これまた美人と、可愛い男の子がでてきた!

絶対これ、、、

「お、起きてますね。桜子さん、わかりますか?アカネです。」

「シンクなの!」

ですよねー。

うわー。この部屋のキラキラが増えた。

目がチカチカする。

猫の時から三匹とも美人さんだとは思ってたけど、まさか、ここまでとは。

「三匹、いや、今は三人か。三人ともモテそうですね。」

私が嫌味としてそう言うと

「ま。俺はかっこいいからな!」

「モテても面白くないから、さくちゃんといる方が好きなの〜!」

「僕は二人に比べたらまだまだです。」

三人は嫌味とも思わずあっさり返されてしまった。

くそ!本当にモテるのか。タチ悪いな。

「でも、びっくりしました。あまり、驚かないんですね。」

「私、あまり感情が大きく動かないんだよね。驚くのは疲れるし。」

これでも、結構感情を出してるつもりなんだけどな。

友達いないから、客観的に見たことないし、まぁ、無表情なんだろうなぁ。

「でも、なんで、シンクとベニとアカネが人間になってるの?それと、私なんで、こんな、ザ!不気味の森!みたいなとこにいるの?もしかして、私夢遊病?!」

「落ち着いてって、顔は落ち着いてるね。」

「きゃーん!さくちゃん可愛い♡」

あみあみ

「おー。いいじゃねえか。初めてにしては上出来だ。シンク。」

私が、(自分の中では結構)パニックになっているときに、私の頭はどんどん三つ編みになっていく。

自慢じゃないけど私は髪を切ったことがないからラプンツェルとまではいかないけど、足くらいまで髪がある。

美容師さんに気づいてもらえないんだよね。

「シンク!やめなさい!」

「えー。可愛くない?」

「可愛いですけど、、、」

話がどんどん脱線していく。

結局、話が始まったのは私の髪の三つ編みが全て編み終わる頃だった。

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