旅芸人一座の軽妙な日常とふとした影

国情緒と寓話が溶け合う、静かに不穏な幕開け
冒頭の「ギィ、ギィ」「お代は見てのお帰り」というリズムのある書き出しから、まるで舞台の幕が上がるような臨場感に包まれます。
民話と怪談の中間を行く物語構成
物語は、善悪の境界が曖昧な寓話としても、権力と欲望の悲劇としても読める巧妙な構成です。
特に、領主一家の傲慢と「トカゲ」の異様な存在感が後半で繋がる展開は、古典怪奇譚のような美しさと恐ろしさを併せ持っています。
街の門番の会話ひとつをとっても世界が広がり、兵士たちのやり取りが後の惨劇を際立たせる伏線として機能しています。
派手な説明を避け、会話と情景だけで読者に「世界の仕組み」を想像させる筆の運びは職人芸的です。
表面は軽妙な旅芸人譚、しかし中身は人間の業と報いを描くダーク・ファンタジーの予感。
明朗な幕開けと、静かに訪れる因果応報の結末の落差が実に鮮烈です。
寓話的ホラーや異世界伝奇が好きな読者には特におすすめ。

スマホで読んでいるので改行ごとに1行空白を入れていただけるとさらに読みやすいかも

その他のおすすめレビュー

佐倉陽介さんの他のおすすめレビュー60