いつも通りから。
ピピピピッ…
う、ん…もう朝か…。
けたたましくなる目覚ましに手を伸ばし、
二度寝するか否か迷っているうちに寝落ち
してしまったらしい。
母親の急かすような声で目を覚ますと、
時計を見て一気に意識が鮮明になる。
もっと早く起こしてくれよ…
と、起こしてくれたはずの母親に感謝より先に
不満が浮かぶ。
はぁ〜、今⿴⿻⿸ったら永遠に眠り続けられるのになぁ。
と、冗談を考えている間にも刻々と家を出る
時間が迫ってくる。
急いで洗面所まで行き、身支度をしてもう既に食卓に並べられている焼きたてトーストに
かぶりつく。それを牛乳で強引に胃袋へ
流し込んだら、さぁ、そろそろ出発しなければやばい時間だ。
「母さん、いってきます。」
玄関を出たら小走りで学校に向かう。
途中でクラスメイトの『爽真(そうま)』に
出会った。
「爽真おまえ、遅刻常習犯なんだから
もー少し早く家出るようにしたらどうだ?」
「今日は達希も一緒だろ?それに、遅刻でも
二人で怒られるんなら怖くないしな!」
そんなしょーもない会話を続けながら
走る足を早め、生徒指導に
グチグチ言われながら校門をくぐった。
「俺らっ、遅刻ギリギリっだな…」
息が上がっている俺に対し、爽真は
元気そうだ。流石は、遅刻王。なんてことを
考え、今日も1日がスタートする。
教師というものは、実に狭い世界で生きている
ものだ。と、つくづく思ってしまう。
こいつら、何年同じこと教えてんだ?
退屈すぎる授業を右から左へ流し、最小限の
板書をする。
その後の部活はまぁ、楽しく、グラウンドを
部員と喋りながらダラダラ走る。
家に帰ると晩飯だ。テレビを見ながら食べるな
と言われながら食べていると、そこに
丁度父さんが帰ってくる。
反抗期、という訳でもないが、親と喋り
続けるのも疲れるもんで、最低限の会話で
すぐ風呂に入り、ベッドへダイブした。
課題なんか放り投げて、
スマホでYouTubeショートをゴロゴロ見る。
まだ寝るには早い時間だし、このひとときが
唯一の癒しだ。
上に上にスクロールして、もう何本見たかも
分からなくなった時、丁度広告が挟まった。
どうやら、ゲームの広告らしい。
よくゲームはするけれど、この広告のゲームのジャンルはしたことがなかった。
いつも、戦闘系ばかりしているからだ。
武器を手に持ち、相手と殺し合うゲームが1番
スリルがあるし、面白い。
他のゲームにはさほど興味がない。
よって、その広告はすぐスクロール
されるはずだった。
…けど、見てしまう。引き込まれる。
何故だろうか。そんな興味のある感じでは
ないはずなのに。
そのゲームはオンライン上で
他のプレイヤーと協力しながら色んな
ステージのゴールを目指す、というものだった。
たくさんのアイテムを駆使し、頭を使いながら
仕掛けをクリアしていく。
1人では始められなくて、必ず他のプレイヤーと
ペアになってからゲームがスタートする。
2人で協力して高いところにあるメダルを取りに
行ったり、復活アイテムを取りに行ったり、
なかなか楽しそうだ。
早速ダウンロードし、始めてみることにした。
やってみると想像以上に面白かった。
どちらか1人が罠にかかっても、片方が残って
いれば助けることも出来る。
また、2人でなければ開かない扉なんかもある。
この中で何より面白いのは、どちらか一方の
ライフ1つを犠牲にして生きている方に
一本道を1人で行かせ、道を抜けた後に
あるボタンを押せば犠牲になっていた片方が
もう一度生き返り、再び2人になるという
ところだ。
もちろんライフには制限があるので、
そんなポンポン使えない。一見一本道のように見えても、よく見ると上にもう一本、
道があったりする。
まぁ、ライフなんて全部無くなってしまってもゲームオーバー画面が出てきて、その後すぐ
また勝手に復活して再スタートに
なるだけなのだが。
しかし、それだとゲームが終わらない。
最小限の犠牲でゴールを目指さなければ
ならないのだ。
よく考えられていて、実に面白い。
そうして俺はどんどんゲームにハマって
いった。
最初の方はお互いにミスを重ねる。その度に、
俺はチャットで相手に
「頑張りましょう!」だの、「そこ、まだ生き返れますよ!」だの、「やりましたね!」だの、
そんなことを送っていた。
実に無責任な言葉だ。ただ、本当にそう
思った事なので、伝えた。
俺はすっかりそのゲームの虜になっていた。
元々ゲームはする方だったので、
上達は早かった。
ステージだってどんどん進んで、今までは
足を引っ張ってばかりだったのに、
相手に救えるようになったし、攻略法だって
頭に入っている。
オンラインで誰かと話すのは顔を見ないので
気疲れしないし、楽しい。
クリアした時の爽快感を分かち合う時なんかは
最高に気持ちがいい。
上のステージになるにつれ、マッチングする
やつも強い奴らばかりになった。
その中でも、抜群に、強い奴がいた。
週1回月曜に、前の週の成績優秀者が
ランキングで発表される。そいつは、
そのランキングにおいて常に1位だった。
プレイヤーネームは【ちーちゃん】。
女性...だろうか?まだ、この人とはマッチング
したことは無い。でも、いつかこの人と
プレイしてみたいな、なんて考えながらゲームにログインすると、先程まで考えていた
【ちーちゃん】と、マッチングしてしまった。
慌ててマイクを繋ぐ。
「ええっと…、こんにちは、
【ちーちゃん】さん。マッチング
ありがとうございます。【たつ】です。
足引っ張っちゃうと思いますけど、今回は
よろしくお願いします。」
なんて、ぎこちない挨拶をする。そう、
俺のプレイヤーネームは【たつ】だ。
急に変な挨拶をしてしまい、
キモがられたかな…なんて思っていたら、
あちらも挨拶を返してくれた。
透き通るようで、落ち着いた、
可愛らしい声だった。
「こんにちは、【たつ】さん。最近このゲームを始めた方でしょう?
すごく上達が早いんですね。
こちらこそ、今回はよろしくお願いします。」
ギヴ @Y-87
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