第40話 夢桜ジュンナの異変

「ジュンナ、ただいまー」


「リアさん! 大変で……あれ、双葉さん?」


「ジュンナちゃん、いきなりごめんな〜。ちと邪魔するで」


「よ、ようこそ。といっても、私もお邪魔してる身ですが……」


 やけによそよそしい態度のジュンナ。

 別にヨモギを苦手に思っているとかいうことはないはずだが……。


 ジュンナの様子に違和感を覚えつつ、まずはヨモギを和室へと案内した。


「飲み物とか持ってくるから、少し待ってて。あ、喫茶タカサキのコーヒーがあるんだけど、それで良い?」


「高崎さん、コーヒー売っとったん? むしろ飲んで良いなら飲みたいわ」


「オッケー。じゃ、お湯とか準備してくるから、しばらくくつろいでて」


「あ、私も手伝います……!」


「悪いな〜あんがと〜」


 ジュンナとともに、キッチンのあるリビングへと向かう。


 ジュンナにコーヒー粉の準備を頼み、私はお湯を沸かすために電子ポットに水を注いでいく。


「ジュンナ、私に何か言いたいことあるでしょ? もしかして、留守番の間に悪霊でも出た?」


 ポットのスイッチを入れながら、抱いていた違和感を口にした。

 私が帰ってきた時から何か言いたげだったし、さすがに口数が少なすぎる。騒がしい人間ではないものの、いつもなら今日見たテレビ番組の話や、私の学校生活への質問など、会話は生まれる。


 少しの静寂。

 お湯の沸き始めた音がやけに大きく聞こえる。


「悪霊……ではありませんが……」


「ならどうしたの?」


「……精霊協会が接触してきました」


「なっ……!?」


 驚きすぎて、近くにあったコーヒー粉をひっくり返しそうになる。


「大丈夫だったの!?怪我とかは……?」


「いえ、争うことはしませんでしたから、怪我などはありません……。ただ、相手は警告と言って脅しまがいの言葉を並べていました。それから、家に入られました……。すみません……」


「家に入られた!?」


 普通に不法侵入なのだが……。

 精霊協会はその程度の法律なら無視してくるということか……。パッと見た範囲では荒らされた形跡も、何か罠が仕掛けられているということもなさそう。あればジュンナが言ってくれているはずだ。


 そこまでして警告してくるあたり、相手方の本気度が伝わってくる。


「お婆様から助言いただいた通り、『勝手なことをするな』とのことでした……」


「はぁ? 指を咥えて見てろってこと? そんなの納得できるわけないじゃない。戦力は多い方が良いに決まってるでしょ」


「わ、私も全く同じことを言いました!」


「……なんでちょっと嬉しそうなのよ」


「……コホン。失礼しました……」


 ジュンナは続けて、より詳細なことを語ってくれた。


 気になったのは点を挙げるならば、玄関の鍵を開け閉めしていた点、やけに喧嘩腰だった点、私たちが協会に入ることは歓迎されていなさそうな点。


 紫のウサギの人形という情報も、不思議と私の脳裏に引っかかっていた。うまく思い出せないが、私はその存在に聞き覚えがあるような……。


 ポットから湯気が上がり、お湯の沸騰した音が会話の間を埋めた。


「とにかく、大ごとにならなくて良かったわ」


「いえ、私としたことが、リビングまで侵入を許してしまいました……。今後は術師への警戒も怠らないようにします……」


「うん。けど気をつけてね、……って、私が心配することじゃないかもだけど。それより、協会にはもっと詳しい話聞きたいわね……」


「そうですね。目的は同じなのですから、協力できるならその方が良いはずです」


 ジュンナは、お盆にコーヒーカップを寄り添うように並べていった。意識しているのかしていないのか、その様子にジュンナの優しさが表れているようだ。

 

「うーん……なら、引き続き悪霊を探して祓うのが良いわよね。向こうからしても、放って置けなくなるはず……」


「反感を買うのは少し危険かもしれませんが……。どの道、この状況でじっとしているのは無理です。それが最良かもしれませんね」


 結局、私たちに今できることは、そう変わらなそうという結論が出た。

 

 私がポットとコーヒー粉を手にしたのと同時に、ジュンナは続いてお盆を持ち上げる。

 これ以上は、客人であるヨモギを待たせすぎてしまう。


 それに、今日ヨモギから相談があったのは、ある意味タイミングが良かったのかもしれない。

 

「ヨモギのとこに戻りましょうか。ちょうど、夜桜不思議相談所の最初の依頼が来たところなのよ」


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あとがき


お読みいただき、誠にありがとうございます。


精霊協会との接触は、第38話の内容です

https://kakuyomu.jp/works/16818792437158157865/episodes/16818792439578827250


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