『L'Appel du Vide(虚空の呼び声)- ある社会心理学者の遺稿』
火之元 ノヒト
序文 - ジャーナリストによる
この記録は、一個人の妄想の産物か、あるいは人類の根幹を揺るがす禁断の真実の断片か。私には、もはや判断がつかない。
全ては、1998年に起きた「音羽研究施設集団自殺事件」から始まった。異端の社会心理学者、
私がこの事件に惹かれたのは、単なる猟奇事件としてではなかった。長谷川教授が学会から追放される原因となった、あまりにも荒唐無稽な論文――「伝播性衝動仮説」の存在を知ったからだ。
以下に記すのは、私が独自に入手した、事件に関する複数の資料である。唯一残された教授の論文の抜粋、研究員の音声日報、匿名の情報提供者からのメール、そして事件当日の監視カメラの解析報告書。これらを時系列に沿って再構成し、読者の前に提示する。
これは、長谷川巳代治という狂気の科学者を告発するための記録となるはずだった。少なくとも、書き始めるまでは。
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