夕陽がゆっくりと校舎の窓を染めていく。

放課後の校庭は、静寂に包まれ、遠くでかすかに鳥の鳴き声が響いていた。

私はゆっくりと歩きながら、頭の中でぐるぐると巡る思いに蓋をしようとしていた。

「自分の記憶に自信がない」――慧くんの言葉は胸に重くのしかかり、胸の奥にぽっかりと穴を開けたようだった。

彼は本当に記憶を失っているのだろうか？

それとも何かを隠しているのだろうか？

答えのない問いが私を締め付ける。

だけど、それでも私の中には揺るぎない想いがあった。

“彼”が嘘であっても、本当であっても、私の中に確かな存在としていてほしい。

それだけが私を支えていた。

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学校では、慧くんとの距離が少しずつ戻りつつあった。

けれど、彼の瞳の奥にあるどこか掴みどころのない影は消えることはなかった。

そんな私の気持ちに気づいたのか、桐ヶ谷くんは日に日に私に寄り添い、そっと背中を押してくれた。

彼のまっすぐな言葉と優しさに、私は揺れ動く心を抑えきれずにいた。

ある日の放課後、桐ヶ谷くんは真剣なまなざしで私に尋ねた。

「柚葉、俺のこと、どう思ってる？」

私は答えられず、言葉を飲み込んだ。

まだ答えが出せない。

その時の彼の微笑みは、どこか悲しみを含んでいて、私の胸を締め付けた。

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一方で慧くんもまた、葛藤の中で必死に自分の居場所を探していた。

ある晩、彼は私にこう告げた。

「俺、必ず思い出す。君との時間を全部。」

その言葉の真摯さに、私は思わず涙をこらえきれなかった。

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しかし、そんな平穏も長くは続かなかった。

ある日、天野先輩から届いた謎めいたメール。

> 「真実は、嘘の中にある。

> だけど、その嘘に縛られてはいけない。」

その言葉は、私の胸に不穏な波紋を広げた。

何かが、また動き出している――そんな予感を感じながら、私は次第に嘘と真実の狭間で揺れていった。

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「もう嘘には頼らない。自分の心で、選ぶんだ」

その強い決意を胸に、私はゆっくりと目を閉じた。

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翌朝、私は学校へ向かう足取りも重かった。

まだ決められない、自分の心の行き先。

教室に入ると、慧くんがいつもより少し緊張した様子で私を見つめていた。

彼の手には、何かが握られているのが見えた。

「柚葉、話がある」

そう言って、彼は私を屋上へ誘った。

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屋上に着くと、風が強くて私の髪が乱れた。

慧くんは深呼吸をしてから、口を開いた。

「実は、俺……ノートのこと、全部覚えているわけじゃないんだ」

「え？」

「君が書いた嘘とか、天野先輩が言ったこととか……断片的にしかわからない」

私はその言葉に胸が締め付けられた。

「でも……」

彼は続けた。

「それでも、君と過ごした時間は、俺にとって本当なんだ」

「……」

私はその言葉に目を潤ませた。

「だから、諦めたくない。君と、本当の関係を築きたい」

その決意が伝わってきて、私の心は震えた。

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放課後、私は桐ヶ谷くんと図書室で偶然会った。

彼は優しい笑顔を向けてきて、

「昨日、慧と話した？」

と尋ねた。

「うん、ちょっと」

「そうか……俺も、応援してる」

彼の言葉に私は少し救われた気がした。

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しかし、そんな穏やかな日々も長くは続かなかった。

ある日、学校帰りに見知らぬ男が私に声をかけた。

「君は、“ノート”のことを知りすぎている」

彼の言葉に、私は思わず後ずさった。

「あなたは……？」

「この街の秘密を守る者の一人だ」

その男は、私に“嘘ノート”の本当の危険性を告げ始めた。

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私の心は混乱し、嘘と真実の境界が曖昧になっていった。

でも、私は決めた。

「もう嘘には頼らない」

その覚悟を胸に、私は新しい一歩を踏み出した。