第2話「聖女堕としと、黒き帝国の構想」

クラリス・ルナエル――。

かつて“神に選ばれた聖女”と呼ばれたその少女は、今やレイジの膝の上で喘いでいた。

その瞳からは、かつての信仰も、高潔も消え失せている。


「れ、れいじ、さま……も、もう……私、壊れちゃいます……」


「もっと壊れろ。お前の“神”がしたことを思い出せ」


レイジの指が、クラリスの肌を這うたびに、彼女の脳裏には教会での“訓練”が蘇る。

少女たちは神に仕える代償として、老いた神官たちに身体を差し出すのが義務とされていた。

それを「祝福」と呼び、喜ぶよう躾けられてきた。

クラリスもまた、その教育を受けてきた一人だった。


だが、レイジが教える快楽は違った。

神への奉仕ではなく、女としての悦びそのもの。

支配と被支配の甘美な力関係。

その中で、彼女の信仰も自我も崩れていく。


「もう、いや……でも、もっと……れいじさまの、ほしいの……わたしの、ぜんぶ……」


レイジは彼女の頭を優しく撫でる。


「よく言えたな。なら、お前の居場所をやる。俺の下で、俺の女として生きろ」


涙を流しながら笑うクラリス。

彼女は今、完全に堕ちた。



---


レイジは彼女を連れ、地下の隠された迷宮へと降りていく。

そこは、かつて旧王朝が極秘に建設した“影の監獄”跡地。

そして今は――レイジが拠点とする《サンクト=ノクス》へと作り変えられていた。


そこでは、すでに数百人を超える女性たちが、彼に忠誠を誓って働いていた。


元スラムの殺し屋、貴族から追放された天才魔術師、軍の実験で逃げ出した少女兵――

共通しているのは、全員が女であり、レイジによって支配され、解放され、快楽によって忠誠を刻まれた存在ということ。


その頂点に、クラリスもまた組み込まれようとしていた。


迎えたのは、ミラ――レイジの最初の従者にして、情報・諜報部門を取り仕切る美少女だ。


「この者が、次の幹部候補か」


「クラリス=ルナエル。元聖女だ」


「ふうん、神に仕えていた子が……男の下で喘ぐなんて、皮肉ね」


挑発的な言葉にも、クラリスはまるで小動物のように微笑んだ。


「神よりも、レイジ様の方が……私には、救いでした」


ミラが微かに目を細める。

レイジの選んだ女たちは、例外なく“支配に快楽を見出す女”になる。それが理解できるだけに――少し嫉妬すら覚える。


儀式の石碑にクラリスが触れ、レイジへの忠誠を誓った瞬間、彼女の身体には黒い紋章が浮かび上がる。

それは肉体と魔力、思考の全てをレイジに結びつける“黒曜印”と呼ばれる魔印。


こうして、クラリスは《黒曜》の医療・回復・魔術部門を統括する裏聖女となった。



---


その夜。

クラリスとミラが眠った後、レイジは地下都市の高台に立っていた。

闇に沈む廃都の景色を前に、彼は静かに呟く。


「……この世界は腐ってる」


上は貴族と教会が支配し、下は暴力と搾取。

そこにあるのは、見せかけの秩序と、剥き出しの欲望だけ。


「だったら、俺がやる。上からじゃなく――裏から世界を乗っ取る」


金ではなく、法でもなく、**“快楽と忠誠”**という唯一の真実を使って。

女だけの、美しき裏帝国。

政治を操り、王を屈服させ、国を丸ごと影で支配する《組織》を作る。


その名は――


「《黒曜(こくよう)》」


漆黒に輝く、影の王国。

それは、快楽と支配の果てに築かれる、裏から支配する帝国の原点となる。


レイジの目には、今や恐れも躊躇もない。


「貴族も、国王も、神も……全部、俺の女どもに跪かせてやる」


彼が静かに笑ったとき、闇の奥から、誰かの喘ぎ声が微かに響いた。

それすらも、彼の世界の一部だった。



---


◉次回予告:第3話「王女降臨と黒曜の初任務」


クラリスを迎え、三人目の幹部候補が舞い降りる。

それは、敵国の“王女”。

表向きは政略の使者、裏では“破滅の火種”。

だが、レイジは彼女すら、自分の支配に組み込むと決めていた――

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