ギャルと俺と妹
翌日。両親は毎週出掛けてしまう為基本的には俺と陽葵だけになる。とは言ってもどちらかが外に出て会わないようにする生活をしているので1人の時間となるのだが。
しかし、今日は違う。あの後陽葵に今日瑠衣が来る事を話せないまま朝となってしまい、俺が家に居る事を知らない陽葵もまた在宅という非常に気まずい状況となった。
「まずいな……」
「何が?て言うかなんで居るの」
「あぁ。今日瑠衣が来るから」
どうするか考え込んでいるといつの間にか陽葵がリビングに降りて来ていた。誰もいないと思って呟きた言葉は陽葵に届いたらしく、綺麗に手入れされた黒髪ロングヘアを整えつつ嫌そうな顔をしながらも聞いてきた。
こうなったら今言おう。決心して瑠衣が来る事を話せば先程までの空気はどこへやら。陽葵はニコニコ笑いながら側に来た。
「瑠衣ちゃん来るの!?やった……!ねぇ、何時に来る?」
「……そろそろ」
そろそろ来る、と言いかけた丁度その時チャイムが鳴った。他に訪ねてくる人もいないので瑠衣であるのは明らかだ。陽葵もそう考えたようで、俺より先に玄関へ向かって行った。
するとすぐに女子2人の楽しそうな声が聞こえてきた。これは俺居る必要あるのか?と思わなくもないが、本当はお家デートだなんて陽葵にバレたら恐ろしい事になるのではないかとも思ってしまい俺は大人しくリビングのソファに腰掛けたまま動けずにいた。
「ちょっと陽介!なんで出迎えてくれないわけ?」
「あ、あぁ。悪い……」
「瑠衣ちゃん、兄貴と約束してたの……?」
陽葵と共にリビングに入ってきた瑠衣は何やら若干お怒りの様子。一方陽葵は瑠衣が俺と約束していた事がショックだったのか睨まれてしまった。その変化を瑠衣は感じ取ったようで、優しく宥めていた。
「今日は陽介との約束もだけど陽葵ちゃんに会いたかったのもあったからね~」
「瑠衣ちゃん……兄貴は放っておいてお話しよう?」
「俺は何処かに……」
「いや、陽介居なくなったらあーしが来た意味無いじゃん!」
どういう意味だ?陽葵は明らかに俺は邪魔だと言いたそうにこちらを伺っているのに対し、瑠衣は俺を引き止める。どうすんだこれ。ある意味地獄だぞ。
「じゃあ、お昼はあーしが作るから3人で仲良く食べよっ?」
俺達兄妹のピリついた空気などものともせずに瑠衣はにこやかにそう発言した。こいつ、もしかして俺と陽葵の関係を修復する為に来たとか言わないよな?
そうだとしたらそれは無理な話だ。何故なら──。
「……」
相変わらず陽葵の俺を見る目は厳しかった。瑠衣はそこに気づいているのかいないのか、陽葵と楽しそうに話始めた。
俺、空気。今日はとんでもない日になりそうだ。
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