正直に告げるⅠ
翌日、俺は登校しながら考えていた。
どうやって3人を集めるか。場所は文芸部の部室。基本的に染谷先輩と俺しか部室にはいないから、人気の無い場所としては最適だろうと考えた。ちなみに、ほかの部員は幽霊部員と化している。
「おう、陽介おはようさん」
「涼太?おう……」
「どうしたんだよ?何か悩みか?」
涼太への挨拶もそこそこに、俺は再度考え込む。まずは染谷先輩に大事な話があるから2人を呼ぶ事を話さなければ。
「よし。俺ちょっと行ってくるわ」
「お?おう?」
なんの事かわからずに戸惑っている涼太を放って染谷先輩の教室へ向かう。先輩は3年の──。
そこまで考えた所でふと気がついた。俺、3年の教室行った事ない。教室に着いた所で何て言って先輩を呼び出す?もし告白だと思われたら──。
「あれ、陽介くん?」
「そっ……染谷先輩……?」
階段の陰で考えていると声をかけられた。顔を上げれば、まさに用のあった染谷先輩がそこにいる。今がチャンスか。
「あの、昨日の事で話があるので放課後部室に2人を連れて行きたいんですけど……」
「昨日?勿論いいわよ〜」
先輩はほんわかとしていて、そこまで大事には捉えていないようだ。後は瑠衣と篠田さん。先輩に頭を下げて自分の教室へと戻ると、2人も丁度登校してきた。
「っ……よ、陽介……」
「おはよう、柴野くん」
瑠衣はしどろもどろで俺の名前を呼ぶだけで一苦労らしい。それに反して篠田さんはいつも通り挨拶をしてくれる。俺も何も無いようにおはようと言ってすぐに本題に入る。
「あのさ。放課後昨日の事で話があるから2人も一緒に文芸部の部室に来てくれないか?」
「昨日……」
「わかった。とりあえず放課後柴野くんに着いていけばいい感じかな?」
瑠衣は俯いて何やら暗い表情をしているが、篠田さんはニコニコと了承してくれた。俺は「そう。よろしく」と言って席に着いた。
「どこ行ってたんだよ」
「染谷先輩の所とか。昨日の事でな」
座るなり涼太が興味津々とばかりに聞いてきた。それとなく答えると納得したようで話を続ける涼太。呑気でいいなぁと思わなくもない。
「昨日聞いた時は驚いたけど、なんとか解決出来そうか?」
「まぁ……とりあえず3人に昨日の事話す事からだと思って集める事にした」
「なるほどなぁ」
昨晩電話で大体の事は話していたからか、この話はそこで終わった。あとはHRまで何をしようか。考えようとして気がついた。
いつもなら篠田さんの席に真っ先に来るのに、今日は瑠衣の席で篠田さんと話している。その様子に何故だかドキドキと動悸がしてきた。
「珍しい事もあるもんだな。あの2人がこっち来ないとか」
「……そうだな」
涼太もそう思っていたようで、俺は何事もない様を装って返事をした。
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