Ep.1:#10 空色縞瑪瑙-Blue Lace Agate-
「……雪だるまに似てるだろ?」
「わあ、本当だ!かわいい……!」
思わず声が漏れると、紫水さんが目元を細めながら言った。
「キーホルダーにするといいかもね。学校でも、ポケットに忍ばせておけるよ?」
「あっ、そっか……! うん、私、この子たちを連れて帰りたい!!」
その言葉に、紫水さんは笑みを浮かべながら
「承りました。それじゃ、
晶紫さんは、うなずいてストーンとパーツを専用のトレーに乗せ、何も言わずに静かに部屋を出ていった。
―――その背中には、不思議と安心感があった。
晶紫さんの背中を見送ったあと、私はポツリとたずねた。
「晶紫さんが……作ってくれるの?」
「うん。作業は基本、晶紫が担当してるんだ。昔からね、黙々と細かい作業するのが好きみたい」
「へえ……見た目からは、そんな風には見えないね。」
紫水さんが、おどけたように笑いながら
「でしょ〜? あの見た目なのにねぇ!」
私もつられて笑いながら返した。
「でも、あのツーブロックでトップを結んでるの、似合ってるよ」
「え〜? でもね、あれおろすと……ちょっと落ち武者っぽくなるの」
「ちょっ、紫水さん! 落ち武者は反則〜!」ツボに入った私は、お腹を抱えて大笑いした。
個室には、さっきまでとは違う明るくて軽やかな空気が、ふわっと広がっていた。
「ん。できたぞ」しばらくして、扉が開き、晶紫さんが入ってきた。
手には、透明な小さなトゲトゲの石の上に乗せられたストラップがある。
大きさの違うブルーレースアゲートで作られたそのストラップは、本当に雪だるまみたいで とっても可愛かった。
「キーホルダーより、ストラップの方が使いやすいと思って変えた」
そう言いながらしゃがんで差し出すと、紫水さんがニヤッと笑って
「さっすが晶紫! 気が利くじゃん!」と肩をバシッと叩いた。
晶紫さんは切れ長の目を細めて、無言で睨み返す。
「あ、ごめん」紫水さんは、舌をちょこっと出しておどけてみせた。
ふたりのやりとりを見て笑いながら、私はストラップを受け取った。
「晶紫さん、ありがとう! 大切にするね」
「ん。」
「ただしパワーストーンたちは、あくまで君の力を後押しする存在だ。前に進むのは、自分自身の努力があってこそだ」
声は相変わらず淡々としていたけれど、言葉には確かな芯があった。
その言葉を胸に刻むように、私はストラップをそっと握りしめた。
「うん。頑張る」
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