かるびの・いたろ

第一話アブナいプールサイド

放課後ほうかご。白い太陽がギラギラりつける。

 山田あさきの足のうらはけつくような熱で力がぬけそうだ。

 「おら、泳げよ。ちっとは涼しいだろ」

 瑞穂みずほたちに授業が終わるなり、とりまかれた。

 プールサイドへ連れこまれる。

 どうしてもさからえなかった。

 あさきはじりじりとプールぎわにおいつめられていく。

「オラ、およげんだろ、オラ」

 瑞穂はまた一歩、あさきに近づく。

 あさきはビクッと電流がはしったようにふるえた。

 まるで磁石じしゃくの同じきょくをちかづけたように彼女はうしろへはじけとんだ。

 瑞穂みずほのまわりのとりまきたち、にやにやしながら横にひろがる。

 あさきがげだせないようおいつめる。

 とうとう一歩もひけないところまできてしまった。

 あさきはおびえた。どうしよう、泳げない。

 一瞬いっしゅんが永遠にも感じられそうな沈黙ちんもくだった。

 なにかがたたきつけられるくぐもった音がした。

 水面すいめんがぱっくりかがみのわれるようにわかれた。

 生き物のようにもりあがる。

 水柱みずばしらがあがる。

 あさきの悲鳴ひめいがひびいた。

 彼女がつきおとされたのだ。

 水面みなもに白いあわがあふれる。大きな銀色の波がうねる。

 彼女はなかなかあがってこない。

 十五分ほどしてもまったくがらない。それどころか、プールのおもてに白い泡がこんもりと盛り上がる。

 そのまま水面すいめんにまるで包帯ほうたいが無数にくようにをひいてはしった。

 さすがに瑞穂みずほたちはただならないものをかんじとった。

 おそるおそるプールの中をうかがう。こんどは瑞穂たちが悲鳴をあげた。

 あさきはそこでさめに変身していた。

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