第55話:闇に挑む者たち

「……森の奥には多くの遺跡があるな……。すべて調査する価値がある。」

サリウスが地図を広げ、眼鏡を押し上げる。


「あとでな!」

俺は笑い、肩を叩いた。


「まずは――中央都市だ。」



---


魔人の地の中央都市は、森の緑を切り拓いた広大な広場を中心に築かれていた。

その中央にそびえるのは、天空へ届きそうなほど高い塔。

塔の頂には、巨大な虹色の石が祭られている。


「……これが……」

ニールが見上げて息をのむ。


だが、その石は――どこか寂しげに、色を失っていた。


「……光っていない。」

ディルが眉をひそめる。


「……あれが……星晶……?」

俺は呟いた。


「そうだ。数百年前に光を失ったと伝わっている。」

後ろから聞こえた声に、俺たちは振り返った。


そこには老人が一人立っていた。


「我々は見たことがないが、その光はモンスターを人に変えるものと聞いている。」


「キュー!(本当にあったんだ!)」


「でも光っていない……とりあえず行ってみよう。」


---


塔の最上階。

重たい扉を押し開けると、そこに立っていたのは――


黒いスーツに銀縁の眼鏡をかけた、あの男だった。


「……やはり来たか。」

男は塔の窓辺に立ち、遠くを見ていた。


「……あんたは……!」

俺は一歩踏み出す。


「この石は星晶。だが、その輝きは数百年前に失われた。――最後の試練だ。この石の輝きを取り戻したまえ。」


「最後……の試練……?」

サリウスが息をのむ。


男は軽く手をかざした。


ゴォォォォ――――


塔の外、空が黒く染まり始めた。

地平線から押し寄せるように闇が世界を覆い、太陽が沈むように光を奪う。


「な……なんだ……!?」

ディルが剣を握る。


「寒い……!」

ニールが腕を抱え込む。


アルネアとアリアが翼を寄せ合い、震えながら俺にすり寄った。


「キュー……(カノン……寒い……)」

「きゅるっ……(でも、まだ……戦える……!)」


闇の中で、巨大な影が蠢く。

やがてそれは、地を割るような咆哮をあげた。


闇の力を纏ったドラゴン


その鱗は夜そのもののように黒く、瞳は紅く輝いている。

その翼が一度はためいただけで、塔全体が震えた。


「――これが、主神の最後の試練……!」


俺は剣を抜き、仲間たちを見渡す。


「ディル、ニール、サリウス!いけるな!」

「もちろんだ!」

「当たり前です!」

「任せろ!」


「アルネア、アリア、ヴァル、フェリア、リューネリア――!」

「キューッ!(カノン、私が守る!)」

「きゅるっ!(私も、絶対負けない!)」

「ヴォォォォォ!!」


闇が押し寄せ、寒気が骨まで凍らせる。

だが俺たちは一歩も引かなかった。


「行くぞ……これが最後だ!」

俺は虹の星片を高く掲げた。


――世界を覆う闇の中、主神との最後の戦いが始まった。

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